私は、大学の専門が電子工学で、根っからの電気系技術者と言えます。勤め先は機械会社で、機械の電気・電子的制御の制御部の設計開発でした。製品の開発は、機械部分の設計者と、電気関係の設計者がチームを組んで進めるのですが、機械関係の技術者はよく、電気屋さんは目に見えないものがよくわかるものだ、なんて言っていました。
確かに機械的な部分の不具合というのは、目に見えるもので、可動部が別の部分にぶつかって、動かないとか、もっと単純には寸法間違いで組付けれないといったことなのです。まさに不具合は目で見えるものなのです。
それに対して電気的づ具合というのは、目で見えない時間的信号のずれとか、電圧の違いといったもので、その結果が動作不良として現れます。それを調べるには電圧を測ったり、オシロスコープなどという計測器を使って、測ったものから不具合・動作不良の原因を推測するしかないのです。そして計測結果が、予想外の時にそのおおもとの原因を改めて初めて不具合が修正されます。
電気系というのは不具合の見た目の現象があって、その原因がどこかにあるとき、別の個所を計測することによって、原因個所を特定し、その問題を改善することによって、はじめて外部に現れる不具合を修正することができるのです。そして計測結果と、問題点を結びつけるのは電気的理論上の因果関係の推測に寄るわけです。
つまり理屈の上での不具合の現象と、原因個所の特定、原因の修復を行うものです。
9年前のちょうど今頃、私はアルコール病棟に入院しました。確かに自分がアルコール依存症であることは認めてはいたのですが、だから断酒をしなければいけない、そして断酒は生きていく限り続けなければいけないということはよくわかっていませんでした。
病院では、アルコール依存症についてのレクチャーをしてくれて、この病気の本質を大脳生理学などに基づいて説明してくれました。
習ったことには「アルコール依存症は、用途自分では酒を飲む量をコントロールできなくなる」というのがあって、なるほど確かに自分がアルコール依存症そのものだと納得できたものです。
アルコール依存症がどういうものであり、それが大脳のどの部位の問題であり、そういう病変が起こっていてそれがどのような症状として現れるかが説明されると、電気技術者としての現象と、原因個所の問題の関連として理解につながりました。
現象:症状があって、問題個所がある、その関連は理屈の上でつながる。それを素直に認めることができたのは電気技術者としての問題は握力だったと思います。
アルコール依存症の症状があって、その原因が脳内の異変であり、それによる問題点を回避するには、断酒を宇づけるしかない、ということが私の頭の中で理屈として完全につながりました。しかる後は、ただ現実の問題として、どのように日々の飲酒欲求を乗り越えて、断酒を継続するかという技術・手法上の問題にまで落とし込むことができたのでした。
自分が断酒を続けるしか道はないと理屈の上で納得すればこそあとは、断酒の継続に邁進すればよかったのです。
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