紫陽花は、切り花で買ってくるような花ではなかった。
6月の梅雨の頃になると、日本ではあちこちにこんもりと青いシロップのかかったシャーベットのような花が咲いた。
花が咲くまで、そこにあると気がつかないそんな植物。
まるまると大きな葉にはデンデン虫がついて、とても綺麗なのだけれど、それは外で雨に降られている花でしかなかった。
屋内に飾るよりも、屋外に咲いているのを見る花。
アメリカでは紫陽花のことをハイドレンジアとよぶ。そして切り花として売られているのを見てまるで違う花を見ているような気がした。
人工的な美しさというか、あの雨に濡れてデンデン虫をつけている植物とは違うものみたいだ。
クリスタルの花器にこんもりと生けたら豪華な雰囲気になるだろう。
ピンク色のとブルーのと、紫陽花の花の色が違うのは土壌が酸性かアルカリ性かで決まると聞いたことがある。
イギリスのケンブリッジでは濃いピンクの紫陽花を見かけた。そして、ポルトガルでは9月に同じ苗にピンクとブルーと両方の色をつけたのが咲いていた。それはやっぱり水をたっぷり含んだシャーベットのような色で、ピンクとブルーが一緒にあるのが雨に濡れてキャンディーのようだった。
6月の鎌倉にも紫陽花はたっぷりと咲いていた。友人と訪れた紫陽花で有名なお寺の庭にある仏像は結跏趺坐の姿勢で紫陽花を抱えていた。ターコイズの首飾りと耳飾りをしているのが、紫陽花の花によく似合っていた。
紫陽花の飾り方で、今まで見た中で一番印象に残っているのがこの仏像だ。
京都では、抹茶色をした池に紫陽花がぽんぽんと浮かべてあったりした。
また、手水鉢に紫陽花が浮かんでいたのも、はっとするような色だった。
今年の6月は5年ぶりに日本を訪れる予定を立てている。
日本の紫陽花を久しぶりに見るのが今から楽しみだ。