ヒースロー空港には、夫が迎えにきてくれていた。
空港から出ると、まるで蛍光色のような眩しさの新緑が青空の下でみずみずしく輝いていて
新鮮な空気の中、ああ、この季節のイギリスは最高なんだよなあと思い出した。
二月の終わりに離れた時には、スノードロップや水仙が咲き始めて春の気配があったケンブリッジは
もうすっかり初夏の様子で、藤の花や薔薇が家の壁を飾り、マロニエの木には花が咲き、ケム川沿いの公園では人々がピクニックをしていて、メドウには牛が放牧されているのだった。
2ヶ月半ぶりの家は、とても居心地が良くて、居間から眺める庭とその向こうの川の景色がとても懐かしく思われた。こんな美しいところに住まわせてもらえたことに心から感謝したい。
川の向こうには牛と馬が見える。
なんとも長閑な風景。
空の色、緑の色、花の色、どれもがとてもソフトで優しくて心が和む。
荷物を下ろして落ち着いたので、散歩がてら近所のパブに行くことにした。
古くからあるグリーンドラゴンというパブ。
川沿いの原っぱにパラソルが出されて、外で食べたり飲んだり出来る夏仕様になっていた。
隣の家の玄関のバラが素敵だった。いかにもイギリスという感じの風景。
やっぱり、このパイントグラスに入った生ビールは最高!
つまみにはチップス(フライドポテト)。イギリスのジャガイモはネットリしていて甘味があって本当に美味しい。
ビール一杯分、爽やかな風景を楽しみながらお喋りをして、また川沿いに歩きながら家に帰った。
こちらではホースチェストナッツと呼ばれるマロニエの木に花が咲いていて、ああ、もうこの木を見ることもなくなるのだなあと思った。
アメリカに数ヶ月住んで戻ってきたので、ここでの生活感は薄れている。さらにもう戻ってこないとわかっているので妙に客観的に見える風景や日常。
イギリスもケンブリッジも、あらためて、とても素敵なところだったなと思うし、本当にいろんなことを学ばせてくれた。溢れるような感謝しかない。お世話になったこの家と庭をきれいにして、ちゃんと家にも土地にも挨拶をして立ち去ることにしよう。