13日間でポルトからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで歩いた後は、1日、ゆっくり休むことにした。
サンティアゴ・デ・コンポステーラから電車で北へ30分ほど行くとコルーニャという美しい海辺の街がある。
この街で有名なのは、ヘラクレスの塔という巨大な灯台だ。
この塔は2世紀にはもう存在していたという、ローマ時代の建築物で、ギリシャ神話に出てくるヘラクレスが怪物を倒して、その首をここに埋めたという言い伝えがある。
それから、アパレルのZARAもこの街で生まれた。
オーシャンビューの、バスタブのある部屋を予約した。
ところが、ホテルに行ってみると、年配の夫婦がラウンジでお茶をしており、カウンターには人がいない。
カウンターの前で、困っていたら、その老夫婦の男性の方がやってきた。
どうやら、ホテルの人らしい。
予約をしてあると伝えると、鍵をとって、テレビのリモをくれて部屋への行き方を教えてくれた。
全部スペイン語。
ところが、部屋へ行くと、小さな部屋で海も見えない。
すぐにカウンターに戻って、お茶に戻っていたおじさんを呼んで、違う違う。オーシャンビューの部屋。ミラ・マーの部屋!と説明すると、また違う鍵をくれた。
なんとなく予感はあったものの、その部屋はオーシャンビューだけれど、バスタブがなくて、シャワーだけ。
すぐさまカウンターに戻る。
今度は、おばさんに、違う違うというと、何が違うんだという。
私は、バスタブのある部屋を予約したんだ、お風呂に入りたいんだと説明するも、なんとなく通じていない。
おばさんと一緒に部屋に行き、シャワーを指差して、また説明すると、部屋もシャワーも綺麗だし、何が問題?という。
だから、バスタブ、、、と説明すると、ああ、バスタブのある部屋は高いのよ。100ユーロはするのよ。という。
いや、そんなはずはない。とにかく、カウンターに戻ろうということになった。
すると、そこに英語のわかる若い従業員がいて、すんなり、問題解決。
オーシャンビューの、バスタブのある部屋に入ることが出来た。
大きなバックパックを背負って、貧乏旅行をしている人に見えたのかもしれない。
落ち着いたら、お腹が空いてきた。
街へ出て、タイ料理屋さんへ入ってパッタイを注文した。
ポルトガルやスペインの田舎町ばかりを旅してきたから、急に、レストランの金額が高くなって戸惑う。
久しぶりに食べた美味しいパッタイだった。
この日は、まだ雨が降ったり止んだりしていた。
傘を持って、海辺を歩く。
ヘラクレスの塔は遠くに見えているけれど、そこまで歩いて行こうとも、タクシーで行こうとも思わず、海越しにみるだけで満足した。
とにかく、久しぶりにプライベートで、のんびりとした時間を楽しむことにした。
海は、やっぱりいい。潮風も、広い水平線も。
しばらく海辺を散歩して、部屋に帰ってバスタブにお湯をはって、ゆったりと浸かった。
バスルームのドアを開けて、外の海を眺めた。
部屋で、くつろいで夕方になって、すぐ近くのイタリアンの店に食事に行った。
トロンした赤ワイン。ツヤツヤのオリーブ。
イカ墨のスパゲティを注文した。
ついてきたパンも香ばしくて美味しい。
だんだん暮れてゆく窓の外の西の空を見ながら、しみじみと美味しい食事を楽しんだ。
食事を終えて外へ出ると、もう夜のしっとりとした空気。
対岸の旧市街の灯りが綺麗。
ヘラクレスの塔は、現存する最古の灯台で、今もなお、光で四方を照らしていた。
波の音を聞きながら、潮風を感じながら、窓を開いて広いベッドでのびのびと気持ちよく眠った。
そして、翌日、ゆっくりとこの街を出て、イギリスの我が家への帰途へついた。