バスクの旅〜サン・ジャン・ピエ・ド・ポー〜 | ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

2019年からのイギリス・ケンブリッジ生活を機にブログを始めました。2023年春からは、アメリカのサンディエゴに暮らしています。

サン・ジャンを訪れるのは2回目だ。

初めて訪れた時は到着したのが夜でレストランが数軒開いているだけだった。

そして翌朝出発したので、この町をじっくりと楽しむ時間がなかった。

ただ、忘れられない光景があって、もう一度この街を訪れたいと思っていたのだ。

 

前回訪れた時、食事をしに行こうと宿を出ると、狭い石畳の通りを暗いオレンジ色の外燈に照らされて、羊たちが占領していた。

カランコロンと、羊たちの鈴が音を立てていた。

夜の中をぼんやりとした光に照らされて移動する羊たちの前後には、長い杖を持った羊飼いが歩いていた。

その、中世に迷い込んだような景色が忘れられなかった。

 

サン・ジャンはとても小さな町だ。

旧市街を取り囲む13世紀の城壁の内側には目抜き通りが一本伸びていて、両側に家や店が並んでいる。ニーブ川から坂道になっていて、高台の城壁からは遠くまで見渡すことが出来る。ゆっくり散策しても30分あれば歩けてしまう距離だ。

 

↑ニーブ川

 

川の橋を渡ると、門があり、その隣には古い教会が立っている。

 

 

このすぐ近くには、フランシスコ・ザビエルの祖先の住んでいたところという表記のある建物があった。

 

 

通りには、お土産物屋さん、食べ物屋さんなどが軒を連ねていて、とても楽しい。

あっちへふらふら、こっちへふらふらと引き寄せられる。

 

↑フランスらしいエスパドリーユのお店。色がカラフルでとっても可愛い。

買えば良かったと今、後悔中、、、。

 

↑甘い香りに惹かれて入ったお店で買ったバスク地方のお菓子。

もちっとして、黒糖のような甘味のある、素朴なお菓子だった。

 

 

カミーノ・デ・サンティアゴのフランス人の道と呼ばれる巡礼路の出発点なので、それを示す帆立貝のマークがそこここにある。そして、観光客に混じり、沢山のバックパッカーがいた。

私がそうだったように、フランス人の道は、この町から歩き始める人が多いのだけれど、他にもいくつものルートがあり、出発点がある。

そして、いくつか前の村から歩いてきたらしき人々を見かけた。

なぜ、わかるのかというと、サンダルばきで靴づれに絆創膏を貼り、筋肉痛でガニ股になりながら歩いているからだ。歩き始めて2、3日目の感じかなあと自分のカミーノを思い出す。

 

 

川から坂道をゆっくり歩いてきて、振り向くと結構高くなってきているのがわかった。

 

 

 

宿のチェックインの時間までは少し時間があったので、食事をすることにした。

私はカルボナーラを、夫は揚げ物を注文した。

 

 

このカルボナーラは、生パスタで表面のチーズが少しパリッとしていて、ここに生卵を落として混ぜて食べるようになっている。卵の絡んだソースもパスタも絶妙だった。

夫の揚げ物も、ヨーロッパのフリットという感じのフワッと軽い食感でビールによく合っていた。

 

宿にチェックインすると、宿泊客のほとんどが巡礼者らしかった。

とてもシンプルな宿で、門限は11時。

 

↑マーティン・シーン主演のカミーノの映画のポスターが貼ってあった。

この映画でも、主人公はここサン・ジャンからカミーノを歩き始める。

 

雪が降った前回と比べて、サン・ジャンの町は少し蒸し暑いくらいで人々は夏服でアイスクリームを食べていて、夏の花が家々の窓を飾っていた。

そして白い壁に赤や緑色の扉や窓枠のバスク的な古い建物の並ぶ町は、雪景色でも雰囲気があったけれど、夏も美しかった。

 

 

宿に荷物を下ろして、シャワーを浴びてから近くのカフェに行った。

テラス席に腰を下ろして、町を景色を楽しむのは気持ちよかった。

頼んだのは、バスク産のシードル。

とても爽やかで、軽い炭酸が効いていて気に入った。少し暑い日にはピッタリの飲み物。

 

 

夜は、パンプローナで見つけた小瓶のリキュールを寝酒にした。

これは、カミーノを歩いていた時に知り合いになったフランス人に教えてもらったもので

彼はこれを持ち歩いて、たまに少量を舐めるようにしていた。

いろんな種類のものがあって、私も楽しんでいたのだけれど、旅の後、あのハーブで出来た薬用養命酒のような小瓶を恋しく思っていたのだった。

 

 

夫は、風邪薬みたいな味がすると言った。

 

この夜、聞いたことのない言葉の音楽と、男女の歌声と、踊りに興じているような騒ぎと手拍子が夜遅くまで響いていた。

あれは、バスクの言葉。バスクの音楽。バスクの踊りなのだろうかと好奇心が湧いたけれど

宿の門限は11時だし、もう疲れていた。開け放った窓から喧騒に満ちた外の空気が入ってくるのをベッドに横になり感じた。