カミーノ7日目〜Los Arcos~Viana~
夜明け前に宿を出ると、サンタマリア教会がうっすらと明るくなり始めた空を背景に立っているのが見えた。
いったい、どれだけの人々がこの景色を見ながらその日の巡礼の道を歩き始めたことだろう。
明け始めた空には沢山の飛行機雲。とても透明感のある美しい夜明けだった。
太陽が出る前から、あちこちで鶏が元気な声をあげ、小鳥たちが賑やかに囀り始める。
頭上からシャワーのように降ってくる、小鳥たちの声を聞きながら歩く朝の時間。
前日にアリスが、この日のプランを話していた。
ロスアルコスからはログローニョという大きな町へ歩く人が多いのだけれど、距離が28キロと少し長いので、その手前の18キロ地点のViana という町に泊まるという。
私は、どうするか決めていなかったけれど、足の疲れ具合で決めることにした。
大体、17キロを超えた辺りからいつもキツくなってくるから28キロは厳しいかもしれない。
のどかな風景の中を1人で歩く。途中から風が少し強くなってきた。
バックパックの中には、パンとチーズ、オレンジ、そして水が入っていたので
途中、風を避けることの出来る廃墟を見つけたので、そこで休憩をすることにした。
風が強いと、体力の消耗が早い。
結局、この日はVianaにとどまることにした。
Vianaは良いサイズの街でアウトドアの店があったり、ツーリストオフィスも大きくて一泊するには便利そうなところだったし、雰囲気のいい街だった。
これまでずっと一緒だったイタリア人の夫婦は、ログローニョまで行くという。
2人とハグを交わした。
ミューリッヒに来たら、連絡してくれよ。オクトーバーフェストで一緒にビールを飲もう!と言ってくれた。初日の雪の大変な道のりを一緒に歩いた仲だったので別れはとても寂しくて、涙が出そうだった。
通りにあるアウトドアの店ではハイキングシューズを探している人が何人もいた。
きっと、今履いている靴が合わずに、靴づれができているのだろう。
そこで同じように新しい靴を探しているアリスを見つけた。
彼女は、足首を保護する丈のハイキングシューズを履いていたのだけれど踝が擦れて
痛いようだった。
そのアリスと、一緒にアルベルゲを探した。
すごく素敵な入り口。ここが公営のアルベルゲの入り口だった。
宿泊費は8€だったと思う。
広々した建物はもと修道院で、隣にはRuina De San Pedro という宮殿の廃墟があるのが窓から見下ろせるのだった。
いつものように、シャワーを浴び、洗濯をし、街のBarで軽食をとることにした。
ビールにトルティーヤパタタス(ポテト入りオムレツ)そして、豚の頬肉を注文。
豚の頬肉、これ、ビールにとても合う!
そのあとは、宿で休み、5時にスーパーが開くのを待って買い物に出かけた。
この日はアルベルゲの食堂で食べることにしたからだ。
ワインとチーズ、パン、それから苺を買った。
同じく食堂で食事をしている、アジア人の年配のカップルがいたので
声をかけて、食事とワインをすすめた。
75歳と66歳の夫婦は、韓国からドイツに移り住んだというカップルでもう40年以上もドイツに住んでいるのだそう。沢山の孫もいて、国籍はドイツなのだそうだ。
フレッシュキムチを分けてくれた。
とても、美味しい!この野菜は何?と聞くと、いたずらっぽく笑って、これは店では買えない野菜なんだよという。
途中歩いている間に菜の花が道端に咲いていたのだけれど、その菜を摘んでキムチにしたのだそう!
粉末の唐辛子を携帯していて、旅先で野菜を買っては塩揉みしてフレッシュキムチを作っているのだそうだ。
とても朗らかで仲のいい2人といると、言葉はあまり通じなくても、とても温かい気持ちになった。
これ、最初の雪の日の写真。と見せてくれた写真には雪の降りしきる中で頬を寄せて微笑む2人が写っていた。
この2人は、晴れの日も、嵐の日も、こうして頬を寄せて手を繋いで歩いてきたのだろうなと思い、こうして年をとって仲良く旅をしている2人はとても素敵だなと思った。