Estella
エステーラ。星という名前のついた街はなんだかロマンチックで素敵なところじゃないかと思っていた。サンティアゴも、コンポステーラ、星の野原という名前がついている。
星に導かれた羊飼いがサンティアゴの墓を見つけたからだ。
そういえば、イエスの誕生を知らせたのもベツレヘムの星だった。
この街に着いたのは、午後3時過ぎだった。
この日も8時間近く歩いたことになる。この日の歩数は41,385歩だった。
宿でシャワーを浴びて、靴下と下着とTシャツを手洗いして中庭に干した。
街を見に行こうと外に出ると、道でアリスに会った。彼女は散策から戻ってくる途中で、さんざん道に迷って疲れていた。
一緒にご飯を食べようというのだけれど、もうあまり歩きたくないという。そしてタパスじゃない料理が食べたいというので、すぐ近くのピルグリムメニュー(巡礼者のためのメニュー)のある店に入った。
私は、とりあえずクロケッタを注文してビールを飲んだ。
カミーノの旅の間、しっかりと栄養を摂りたい人はピルグリムメニューを頼む。
大体10€くらいで、サラダ、メイン、パン、デザートなどのセットになっていて経済的だし、お腹もいっぱいになる。
私も、ピルグリムメニューなるものを一度は食べておこうと思って、注文してみた。
ロモという、豚肉(脂が少なく、硬め)を注文した。
でも、そんなに美味しいとは思わず、こういうセットメニューを頼むのはこれ以降はやめることにした。
食事のあと、アリスと別れて私は街を歩いてみることにした。
橋を渡った。澄んだ綺麗な水が流れていて、川岸では子供たちが水遊びをしていた。
まだ、水は冷たそうだった。
街には生活感があって、賑わいがあった。
でも、同時に落ち着いたノスタルジックな雰囲気も漂っていた。
洗濯物が外に干してあるのは、イタリアでもそうだったけれど、スペインでも日常的な光景だ。
大きな、宿の近くの高台にある教会に行ってみた。
扉は閉まっていたけれど、ここからは川の向こう側の街を見下ろすことが出来た。
ゆっくり歩いて宿に戻ると、中庭のテーブルで人々がワインを飲んでいた。
ワインの瓶が何本も並んでいて、一本提供したアリスも座っていたので、私も参加させてもらった。セバスチャンもいて、静かにレモン風味のビールを飲んでいた。
メキシカンの若い綺麗な女の子が2人いて、かなり酔っ払ったイタリア人がしつこく話しかけていた。
もう20回もカミーノを歩いているというアイルランド人が、ずっと冗談を言い続けていて写真を撮るときにお尻を出したりして、かなり羽目を外していた。
なんとなく、あまり好きな雰囲気ではなかったので1杯で退場した。
ダイニングルームには、初日に助け合ってから何度も会っているイタリア人のカップルがいて、ワインを勧めてくれた。こうして、数日同じ顔を見ていると、その人たちに、とても親近感が湧いてくる。
これは、テレビドラマを見ていて、回を重ねるとだんだんキャラクターに親近感を覚えてくる感覚に似ているなと思った。
そのカップルの旦那さんの方は、数年前に1人でこの道を歩いたそうだ。それからずっと奥さんと来たかったようで、今年、やっとそれが実現したのだそうだ。数年前のイースターの前の聖週間にとったビデオを見せてくれた。私は自分が旅している間にイースターがくることはわかっていたけれど、その前の1週間に行われるカソリックの行事のことは知らなかったので、そのビデオはとても興味深かった。
庭での酒盛りは夜遅くまで続いていたようで、ヘベレケで大声の人たちが部屋に入ってきたのを
半分、夢の中で聞いた。