カミーノ4日目〜プエンタ・ラ・レイナ〜 | ケンブリッジ生活・サンディエゴ生活

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2019年からのイギリス・ケンブリッジ生活を機にブログを始めました。2023年春からは、アメリカのサンディエゴに暮らしています。

カミーノ4日目。Puenta la Reina

 

Puenta La Reina というのは、スペイン語で王妃の橋。という意味。

そんな名前の美しいロマネスクの橋がこの村にはある。中世に、とある王妃が巡礼者の安全のためにその橋を作るように命じたからついた名前だそうだ。

 

 

一緒に歩いてきたトビアスと私は、街の入り口にあるアルベルゲに宿を決めた。

すぐ隣には Igresia del Crucifijo という古い教会が建っていた。

この教会には、中世の巡礼者がドイツから運んできたという、Yの字の形の十字架にかかっている珍しいキリスト像があるので有名だ。

この教会の管理するアルベルゲのためか、なんと宿代は7€という安さだった。

 

 

チェックインを済ませると、何人もの知った顔に出会った。

200人ほどの人が同じ日に出発して、同じような距離を歩くとしても、宿泊所は幾つもあるので、なんで同じ顔とこんなに何度も会うのかと不思議になってきた。

 

6人部屋には、アリス、トニー、トビアスという知り合いがいて、他の部屋にもリーや知った顔がいっぱいいた。

とりあえず、シャワーを浴びて、手洗いの洗濯をして、庭の洗濯物干し場に干しにいった。

中庭にはもうすでに、沢山の洗濯物が風にたなびいていた。

 

 

庭は静かで、太陽の光が暖かく降り注いでいて 7時間歩いた後の体も心もすっかりリラックスした。優しい風がふいてきて、とても静かで、サンダルの素足に地面の緑が柔らかくふれた。

 

この街にはスーパーマーケットがあるというので、人々はソワソワしていた😀

でも、夕方の5時にならないと開かないという(大体1時や2時から夕方までシエスタで店は閉まることが多い)

夕方の4時半だったので、私はスーパーマーケットが開くまで、それほど大きくはない街を散策する事にした。

 

中世の街並み。

でも、今人々が生活している庶民的な生活感もある。

 

 

 

扉や窓、バルコニーなどの木やアイアンのディテールが、中世のまま、、、。

 

 

ある教会の扉が開いていた。

Iglesia De Santiago というとても古そうなロマネスク建築の建物だった。

 

 

この教会が私のカミーノにおける、最初に入った教会だった。

 

木の扉は分厚く、中は薄暗かった。

その暗さと石から伝わってくるような冷たい空気は、外とは全く違う世界を作り出していて

自然と敬虔な気持ちになった。

 

 

その暗さの中に金の、高い天井までの像の数々があり、そのディテイルと荘厳さに圧倒された。

この暗い中に金色というのは、少し日本のお寺に通じるものがあるとも思う。

 

 

この教会の中にいるのは、私1人だけだった。

私は、少し夢の中にいるような、ぼんやりとした気持ちで教会の中を見てまわり

椅子に座って、この場所にいられることを感謝して祈った。

 

教会を出て少し歩くと、街路樹のある開けた感じのところに出た。

あ、この場所。知っている。と思った。

何度か夢で見たことのある場所だった

 

 

リーと、そこで偶然会ったので、一緒にスーパーマーケットに行った。

靴づれで、踵の皮膚が剥けてピンク色になっているのが、とても痛そうだった。

 

リーは教会の礼拝に出るというので別れ、私はどこか開いているバルにビールでも飲みに行くことにした。

ビールが飲めて軽食が食べられるところを探して細い通路を行ったり来たりしていると、同じように食事のできる場所を探しているトビアスに出会ったので、一緒にご飯を食べる事にした。

先ほど行った教会には、トビアスは行っていないというので、閉まってしまう前に2人でもう一度訪れた。とても静かで、私は再び感嘆しながら教会の中を歩いた。

 

そのあと幸い、店を見つけることが出来て、とりあえず、ビールをゴクゴクと飲んで、私は豚肉料理をトビアスはブラックビーンズのスープを注文した。

近くのテーブルで1人で食事をしていた若い男性がこちらを見てニコニコしてきて

そちらに参加してもいいかと聞いてきたので、もちろん。と3人で食事をする事にした。

 

彼はスフェンという名でドイツ人。でもカリフォルニアのギャルみたいな英語を話した。

前日泊まったアルベルゲでは宿泊客が彼1人だったのだそうだ。

最初は嬉しかったけれど、だんだん寂しくなってきたところ、宿の隣人のホームパーティーに誘われたという。

ビール一杯のつもりが結局朝の3時まで飲みまくって、すごく楽しかったけれど、この日は二日酔いで歩き始めたと言っていた。

 

トビアスは、スフェンに対して、なんとなく冷静に距離を保つ感じだったので、席に招いて悪かったかなと思いかけていたのだけれど、食後のデザートを選ぶ彼の目が熱意に満ちているのを見てホッとした。お米でできた甘いデザートを幸せそうに食べていた。

私が選んだアップルシャーベットは、リンゴのシードルをシャーベットにしてストローで飲めるようにしたようなものでとても美味しかった。

 

3人で店を出てアルベルゲに戻る道は、夜8時半を過ぎていたけれどまだ明るかった。

途中、テンプル騎士団に関係のある教会の前を通り過ぎた。

遥か昔の巡礼者たちもここを通り、そして騎士たちも、この道を使っていたのに違いなく

そして、私たちの見る街並みはその時と、それほど変わっていないだろうということが不思議だった。

そんなところで、私は遠いところから来た人種も年齢も違う人たちと食事を共にし、話をし、同じ部屋で眠りにつくのだということが不思議だった。そして、なぜかそのことをとても大切なことと感じた。

 

宿に戻って洗濯物を畳みながら、アリスが、スーパーで冷凍ピザを買ってきて電子レンジで温めて食べた話を聞いた。ピザが大きかったので、他の人にも分けて、他の人の食事も分けてもらって、みんなで仲良く食べたよ。と言っていた。

 

この街、プエンタ・ラ・レイナは、この旅の中で私が好きになった街のベスト3に入る。

この街は小さいけれど、歴史の大波に何度もさらされてきたことを感じられる街だった。

暗闇の中での囁き。策略。人々の祈り。興奮。旅人たちの運んでくる、そして残してゆく熱のようなものがまだ通りにこもっているような場所だった。私は街角に中世の息遣いを聞いたような気がした。

スペインの、特にこの巡礼の道の歴史を知りたい。と強く思った場所だった。