カミーノ3日目〜Pamplona〜
パンプローナは、ナバラ州の州都ということでカミーノを歩き始めてから初めて見る大きな街だった。アルガ川にかかる橋を渡ると、ほどなくして大きな城塞が見えてきた。城塞の向こう側は旧市街地だ。
一緒に歩いている皆は、興奮した様子。さっきからGame of Thrones のテーマソングが頭の中を流れてる!などと話している。
坂道を上がっていくと、古い4階建くらいの建物が両脇にずらりと並んでいる道がいろんな方向に伸びていた。
じっくりと街の様子を見たかった私は、グループに、また後でね!と別れを告げた。
観光客に混ざって大きなバックパックを背負って街を歩く巡礼者たちの表情には軽い驚きと興奮が見てとれた。きっと私も同じような顔をしているに違いなかった。
その後、歩いていたら適当な宿が見つかるかと思っていたのだけれど見当たらず、交差する道のどれへ進むべきか迷って立ち止まってしまった。
そこに、顔見知りの二人組が通りかかったので「宿見つかった?」と声をかけてみた。
「ああ、今からチェックインするから一緒に行こう!ついておいで」と彼らは泊まる予定のアルベルゲに連れて行ってくれた。
聖ヤコブの印、巡礼者の印でもある帆立貝がある入り口が Jesus y Maria Hostelの入り口だった。
なんと先ほど別れたグループも、前の宿で一緒だった何人かも、リーもアリスも韓国人団体旅行客もここにチェックインしていた。
この建物は大きな教会だったところで、1階と2階、そして右と左に区分されていてその両側は吹き抜けになっていた。
少し薄暗い大きな講堂のような建物に、ずらりと二段ベッドが並ぶ様子は不思議な光景だった。
シャワーを浴びて洗濯をした後、アリスと私は街を見ようと外に出ることにした。
日曜日だったのと、時間が遅かったのとで、あまり開いている店はなかった。
でも土産物屋で、手袋を買うことが出来たのはラッキーだった。この手袋はその後毎日とても役に立ってくれた。
闘牛場のある街だからか、素敵な携帯ナイフがショーウィンドウに飾ってあり、私はチーズを切ったりパンを切ったりするのに欲しいなあと見ていたのだけれど、店は開いていなかったのが残念だった。この後も、ああ、パンプローナであのナイフが買いたかったと何度も思ったくらいだ。
この街は、ヘミングウェイにゆかりのある場所だ。
「日はまた昇る」という小説の舞台になった所として知られている。
闘牛場には、ヘミングウェイの胸像があり、いろんなところでヘミングウェイのイメージを見かけた。
7月に行われる牛追い祭りでは白い服に赤いスカーフの男たちが牛を追って街を走り回り
その様子は興奮を誘う迫力に満ちたものだそうだ。
それにしても、中世の雰囲気の残るパンプローナの街は洗練されていながら、粗野な男っぽさがあるような魅力的な街だった。
パンプローナ市庁舎。
カスティーヨ広場
Farmaciaは、薬局。
スペインの薬局は古くて素敵な装飾がされているところが多かった。
街を歩いていると、アイアンワークや、扉の美しさについ目がいく。
さて、お腹も空いてきた。
アリスはしっかりした夕ご飯を食べたいという。
大体どこの街や村のレストランでも、ピルグリムメニュー(巡礼者のためのメニュー)というのがあった。それはサラダ、メイン、デザートなどでセットになって10€ くらいだった。ワインがついてくることもあった。スパゲティや、豚肉のローストなどをメインでは選べて、しっかりと栄養補給をしたい巡礼者でそれを注文する人は多かった。
私は、それほど量が食べられないことと、せっかくなら食べたことのないものをいろいろつまみたいという理由からピルグラムメニューはあまり気が進まなかった。
レストランはディナーを夜の7時とか8時にならないとサーブしない。ディナーの時間にはまだある。
何か食べられそうなところがないかなあとウロウロしていると、タパスの並んだBarがあった!
私、タパスを食べてみたいから、ここに寄るね。と言うとアリスも付き合うという。
カウンターに並んだ料理をいくつか注文し、赤ワインを頼んだ。
ナバラ州の地元ワイン、葡萄ジュースみたいで飲みやすい。そして、安い!
そして、このタパスもすごく美味しかった!
まず、手前から、、、ハム入りのコロケッタ。
バゲットの上に生ハムと薄切りのマッシュルームが載ったもの。
その向こうはバゲットの上にズッキーニとマッシュルーム。
もう一つは生ハム、チョリソなどが串刺しにされていて、塩加減とオリーブオイルの風味が絶妙だった。
クロケッタ。クリーミーで、薄い衣がサクッとして美味しい!
私の背後のテレビスクリーンを指差して、アリスが、あの川はどこの川だろう?と言った。
振り返ると、なんと地元ケンブリッジとオクスフォードのローイングのレースがテムズ川で行われているところだった。
あのボートを漕いでいる男の子たちは、うちの目の前のケム川で毎日練習している人たちに違いなかった。
スペインのパンプローナのバルのテレビで、ケンブリッジの家の庭の前を毎日ボートで行ったり来たりしていた学生たちがレースをしているのを見るのはなんだか変な気分だった。
パンプローナは魅力的な街なので、私はもう一日パンプローナに滞在して観光をしようかなを思い始めていた。
教会を訪れたり、マーケットを覗いたり、お土産物屋さんで買い物をしたり、ジェラートを食べたりしたら楽しいだろうなと思った。
足にはいくつも水膨れが出来ていて、針で突いて処置したものの、翌日歩いて悪化させないか不安だったというのもある。
アリスは、歴史的な大きな街はこれから先もいくつもあるよ。と言った。
私は、明日の朝の気分や足の調子で決めることにして眠りについた。