カミーノ3日目。Zubiri~Pamplona
朝7時過ぎ。朝食をとるために食堂の前に並んでいる人たちを通り過ぎて宿を出た。
普段から朝食は食べないことが多いし、人が少ないうちに歩き始めたかった。
外はまだ日の出前で、気温は1℃だった。
道が凍っていたので、気をつけながら歩いた。道端の黄色い矢印(カミーノの道標)を探して歩いてゆくと古い石造りの橋に出た。
歩き始めた1日目は、川沿いに歩く道が多くてせせらぎを聞きながら時々清流に目をやって歩いた。この日も川沿いに歩けるのが嬉しかった。
まだ灯のついている外灯。アイアンワークが美しい。
通り過ぎる村の家は、どこも素敵だった。
サン・ジャンでもよく見かけた、不思議な形の木がここにもある。
なんという名前の木なのか知らないのだけれど、木の枝が他の木の枝と手を繋ぐように繋がっているのだ。 この後も、街路樹などでよく見るようになった不思議な木。
太陽が昇った直後が一番寒いというのは、知っていたけれど、これから毎朝それを実感するようになった。
ここ数日の寒さと雪で、唇はひび割れて、肌はガサガサ。そして手の指はささくれだらけだった。手袋が欲しいなあと思いながらポケットに手を入れて歩いた。
さて、歩くのが遅い私を、この日も人々は追い越していった。
朝食をとって、私より後から宿を出てきたリーさん(これからはリー)とアリスも追いついた。
少し話をしたけれど、歩くスピードが違うので「気にしないで、先に行って。次の町で会おう!」と別れた。
カミーノを歩いたことがある知り合いが失敗談として、友達が出来たりして自分のスピードではない歩調で歩いて足を痛めたと話していたので、私は基本的に1人で歩くことにしていた。
好きな時に立ち止まって景色を眺めたり、写真を撮ったり、鳥の囀りに耳をすませたり、考え事をしたり、1人で歩く時間はとても豊かで、寂しいとは全然思わなかった。
明るい青空を背景に白い壁とオレンジ色の屋根の建物のある村を通り過ぎた時は
イメージしていたスペインの村の景色に出会った気がした。
カミーノには、道の途中に水飲み場がいくつもあって、水筒に水を補充できるようになっていた。それはフォンタナ。というのだった。
夏の暑い時は、巡礼者にとって本当にオアシスのような場所だろうなと想像が出来た。
↑ここの水は飲み水としては適しませんと書いてあるけれど、途中一緒になったスペイン人の女性は大丈夫だよ。と言って水を飲んでいた。
途中でバルがあったら立ち寄って何か食べようと思っていたのだけれど、タイミングを失い
すでに昼近くになっていた。
ピクニックエリアを見つけたので、そこでパックパックに入れてあった2日前の残りのパンとチーズを出して食べることにした。お腹が空いていたので、そんなシンプルな食事もとても美味しく感じられた。チーズは白い羊のチーズだ。
朝、ボトルに入れてきた水道水は、外の気温でひんやりと冷たくなっていて、少し汗ばんだ体に染みてゆくようだった。
4時間、休まずに歩いてきたので足がかなり痛くなってきていた。
靴を脱いで足をマッサージし、ストレッチをした。
そこからしばらく山道を歩いた。
青空の下を歩くって、なんて気持ちがいいのだろう!
雪の道では途中で荷物を下ろすことも、休むこともむずかしかったので、天気がいいことがありがたかった。
緑豊かで青空が広がる風景は、とても穏やかで平和だった。
ここ数日テレビもニュースも目にしていない。
ウクライナの戦争のことが、まるで現実ではないようにこの風景を見ていると感じた。
そんな穏やかな景色の中を1時間半ほど歩くと、現代的な街に入った。
ここにもあの不思議な木が街路樹になっている!
葉が茂ったら、きっと夏の日差しの下で気持ちのいい木陰を作ってくれるのだろう。
街に入って、とても背の高い若い男性と道を探していて知り合いになった。彼は髪を後ろで結んでロックパンドのTシャツを着ていた。セバスチャンという名のドイツ人だった。
その後、宿で一緒だった人たちなどに会い、どんどん合流して7、8人のグループになった。
私たちは賑やかにパンプローナの城壁の中へと行進して行った。