Midsummer commonという公園の近くに住んでいる。
そこにはケム川が流れていて、公園の対岸にはケンブリッジ大学の各カレッジの歴史あるボートハウスが並び、学生たちのローイングの練習で賑わう。
川のこちら側の広い草原には、夏になると牛が放牧され、地元の人々が街の中心地に行くのに自転車を走らせたり、散歩をしたりする。
ケンブリッジハーフマラソンの、スタート、ゴール地点でもあり、11月5日のガイフォークスナイトには、巨大な焚き火と花火を見に人々が集まる。ケンブリッジの大きなイベントの舞台になる公園なのだ。
Midsummer fairという大きなお祭りがここで夏にあるというのは、聞いたことがあった。でも、コロナのために去年も今年も中止だったので、例年のお祭りの様子がどんなものなのか知らない、、、。
この間の土曜日のこと。
用事があって、出かけたら、近所のビジネスホテルから、バービー人形のような、カクテルドレスを着てハイヒールを履いて、バッチリお化粧をした若い女の子たちがぞろぞろ出てきた。
なんだろう、、、。と思いながら、グラフトンという地元の人が買い物するエリアに行くと、原宿?というくらいの人出。
少女からおばさんまで、派手な服を着て、化粧の濃い人たちが沢山。
男の人は、体にピタピタのポロシャツに、バミューダパンツといういでたち。
女の人は、とにかく、すごく派手でドラッグクイーンかと見まごうような、付け睫に厚化粧。
ケンブリッジの学生やアカデミックな人たちが、そんな格好をするとは思えないので
大学関連のイベントではなさそうだ。
夕方、出かけていた娘が帰ってきて、ミッドサマーコモンに人が溢れていて、道が塞がれていて歩いて帰ってくるのが大変だったという。
聞いてみると、あの、ド派手に着飾った人たちが集まっていたという。多分、それは何百人という人出だったのだろう。
実は、今年はミッドサマーフェアは公式にキャンセルされたのにも関わらず、人々が集まったらしい。
例年ならば、出店が出て、カーニバルのように遊園地も設置されるようだ。
今年は、もちろん、出店も遊園地もなし。
でも、人々は恒例のフェアの集まりにやってきているのだ。
なぜ、、、???これは、毎年行われる、ある共通の人々のリユニオンなのだった。
調べてみると、このイベントは今年で810年目を迎えるとある。ジョン王によって1211年に開催されたのが初めてのフェアだそうだ。
そして、ここに毎年イギリス中から集まってくる人たちは、ジプシー。ロマ。トラベラー。と呼ばれる人たち。
GRTコミュニティ。と総称されることもある。
この人たちが、毎年、夏にミッドサマーフェアで集まるらしい。
この人たちは、定住している人もいるようなのだけれど、キャンパーで移動して生活し、元々は季節労働者として、畑で収穫をしたり、サーカスやカーニバルと一緒に移動したりして生活していた人達らしい。今は、生活も多様になっているのだろうけれど。
ケム川に係留された舟に暮らす、ボヘミアンのような人たちもそんな仲間のようだ。
ブラックライブスマターが一世を風靡していた頃、公園で若い女の子たちが「ジプシーライブスマター!!!」と叫んでいたのをみたことがある。
あの子たちは、ジプシーだったのだろう。
私たちが目にするのは、トラベラーというアイリッシュ系の人が多いので、白人で、色の浅黒いジプシーというイメージとは少し違う。
先週、日焼けサロンに若い子たちが溢れていて、不思議に思ったのだけれど、ミッドサマーフェアに集まる若い子達がみんな、すごく日焼けしていたので、あの子達もそのためにせっせと肌を焼いていたんだなと分かった。
ケンブリッジに、どれだけそんなGRTの人たちが住んでいるのか知らないけれど、結構多いのかもしれない。
日曜日には、ミッドサマーコモンは放置されたゴミで溢れていたらしい。
アカデミックな街。IT最先端の街。中世の面影の残る街。いろんな表情がケンブリッジにはあるけれど、ジプシーの一大イベントが行われる街でもあることに驚いた。
これを機会に、今まで知らなかったGRTという人たちのこと、ジプシー。ロマ。トラベラー。そんな人たちの存在を知った。
これは、あまり表面化しないけれど、ヨーロッパ中で、長い間のわだかまり、問題などが色々ありそうだ。
どこでもそうなのだろうけれど暮らしてみないと、知り得ないようなことってあるんだなあとつくづく思った。