ヘレンオクセンバリーという絵本作家が好きだ。
私の子供がまだ、赤ちゃんだった頃、ヘレンオクセンバリーの描く子供の仕草や服の可愛らしさに惹かれて絵本を何冊か買った。
でも、そのことをずっと忘れていて、私の子供が、もう大人になるという時に、英国で
再び、ヘレンオクセンバリーの絵本に出会った。
優しく繊細な色合い。ユーモラスともいえる、自然な子供の表情や仕草。
そして、今回は、私が日々、目にしている英国の自然の風景が絵本の中にあることに気付いて、再び、とても惹かれた。
手に取ったのは We're Going on a Bear Hunt. 日本版では 「今日はみんなでクマがりだ」という題名らしい。
登場人物のお父さんも、子供たちも、本当にそこらへんにいそうな服装で、仕草で、顔つき、体つきだ。
胸の高さまで草の茂る丘には、赤いポピーが風に揺れていて、今の季節見る風景だ。
赤ちゃんが、お父さんのおでこをギュッと掴んでいて、眉間にシワが寄っているところとかが、妙にリアルだったり、子供たちが丘を走り下りる楽しさみたいなのとか、すごく伝わってくる。
森の中を通り過ぎ、川もジャブジャブ渡って、泥だらけの海辺の湿地帯を通り抜け、お父さんと4人の子供たち、そして犬の家族は熊を探しに冒険するのだ。
洞穴に到着する。大きな身体。濡れた鼻面。そこには、クマが!!!
そして、熊に追いかけられて、やって来たところを転がるように走って逃げて帰る。
とにかく、シーンの一つ一つが、躍動感があって、ディテイルが面白くて、眺めているだけで、本当に愉快な気持ちになっていく。
まるで、テレビや映画を見ているように、自分がその場所にいるような気がしてくる。
家に逃げ帰って、二階に駆け上がって。
おおっと!!!玄関を閉め忘れた!と大急ぎで階段を駆け下りる。
なんともスリリングじゃないか。
ドアを閉めて、鍵をかけて、みんなで、ベッドのふわふわの布団の下に潜り込む!
一安心。もう、クマがりには懲り懲り、、、。
だって。
人間たちのの顔が普通なところがいい。犬がいい役割をしている。
ありえない想定なのに、景色が、犬が、人間が、あまりにリアルなので、入り込んでしまう。
草原の丘をかけ降りるときの風を感じたり、シンとした森のちょっと怖い感じとか、匂いとか、想像できて、臨場感がある。
英国で生活をし始めて、二つのことが私には、とても新鮮に映った。
一つは、子供が、とても生き生きとしていて個性的で、お行儀が良くて、ユーモラスなこと。
二つ目は、犬が家族の一員として、幸せそうで、ノビノビとしていて、そして行儀が良いこと。だった。どちらも、安心して穏やかに暮らしていられることが前提だと思う。
そんなことが、この絵本の中でも見てとれる。
一番好きなところは、最後にクマが寂しそうに帰っていく後ろ姿。
自分自身が子供の時に、絵本を読み、自分の子供たちと絵本を読んで、またその世界をとても楽しみ、しばらく忘れていて、また最近絵本の世界を楽しんでいる。
とても、英国らしい絵本。
ヘレンオクセンバリーさんの世界は、私をワクワクさせ、夢中にさせ、愉快にさせてくれる。ヘレンさん。あなたの描く世界はとても素敵です。ありがとう。