夜の山は晴れわたり
澄んだ月の光はくっきりと影を落とす

桜は夜を深くし
気配を濃密にする

神隠しにあった瞬間の孤独は堪え難く
早く自分も消えたいと願う

自ずから然るべく
消えるときには消えるのだ

さざ波の水面に月が映り
ゆっくりと
こちらへやってくる

風が吹き
桜は咲く

月の光はそのまま足元から
当たり前のように通り抜けて
静か

夜中に始まった一日は
再びの月を空において
蒼い

自ずから然るべく
始まるものは始まるし
消えるものは消えて
失うものは失われる

日暮れ前の海は深い色をたたえ
打ち寄せては引き返す

風はまだ強く
私の中身は吹き飛ばされたまま

届くものは届くし
諦めるものは諦められる
笑いたければ笑っているし
泣きそうなときは早めに帰る

私は自分を見失ったのか
新たな自分と出会っているのか
自ずから然るべく
空っぽになって
自ずから然るべく
歩き出すなら歩き出す
桜散らしの暴風が
桜の咲く前にやってきて
大きな音を立てて雨を降らせた

バスの中に鳴り響く

窓から眺める風の様相は
大胆に樹々を指揮しているみたいで
聴いたことのない音楽が聴こえる

こんな日は早く家に帰ったほうがいいよって
テレビのニュースがおせっかいなこと繰り返して
それも東京に近づいてくるときだけ繰り返して
私は風のように聞き流す

吹きちぎられた声が
聴こえる
私は
耳を清ましてる
外からくる声と
内側に響く声
ぶつかりあって
反響してる

バスは私を届けた

私はソワソワする
強い風の吹いている場所で
私はなんだか
ソワソワしている
風に吹き飛ばされて
私の中身は実はごっそり持っていかれて
畳の部屋に座ってる私は
私であって
私でないようで

私は自分が誰なのか不思議に感じながら
ソワソワしている



海が好きで
海とともにある月が好きで
満ちて
引いて
映して
常に変化して
だけどいつもそばにいる

ずっと
同じこと繰り返して
だけどいつも違っていて
私は呼吸するみたいに
いつもいっしょにいる

たくさんの夢を見た
心にとけ込んだ言葉や響きが
いろんな色や像を結んで
私の知らないこと
見せてくれる

切なくて
本当にその場にいられたら
右手で大事なものに触れる。。

繰り返し打ち寄せて
目で追えないうちに広がって
私は時間を引き寄せたくなる
できないってわかっていても
お願いだから時間を・・・

ループを描くように
誰かの時間を生きるように
何度も何度も
繰り返す
おさらいするみたいに
なぞっている
同じじゃないことわかっていて
本当にはわからないことわかっていて
だから海は何度でもやってくるし
月は何度でも夜空を巡る

澄んでいる

風はまた吹くし
雲は流れる

ため息ばかり
ついている