都内病院勤務の内科医による病気解説ブログ -7ページ目

かかりつけ医の意味役割

同じ症状でも、専門の科が違うことがあります。例えば、「めまい」はいろいろの原因で起こり各科と関係があります。耳鼻科(メニエール病など)、脳外科(脳腫瘍など)、整形外科(頚椎からくるもの)、循環器内科(不整脈)、血液内科(貧血、白血病など)にまたがります。どの専門医を受診したらいいかわかりませんね?これを交通整理するのを、「プライマリーケア」といい、町のお医者さんの仕事です。日本では「内科」という看板が出ていますが、北米では、family doctorといい、とりあえず診てもらいにいくところです。日本では「かかりつけ医」といったところでしょうか?


風邪は万病のもとといいますが、いろいろな病気のはじめの症状が普通の風邪と区別つかない場合があります。急性肝炎や感染性心内膜炎といった恐ろしい病気も、はじめは風邪と区別をつけるのは難しいのです。

<普通の風邪>
薬屋さんで売っているかぜ薬を飲んで、4,5日様子を見ていてOKです。

1.くしゃみ、サラサラの鼻水、鼻づまり。
2.喉がちょっと痛い、イガイガする。
3.ときどき咳、痰はそれほど多くなく汚くない。
4.熱はあるが38℃以下。

<受診しないといけない場合>
原因の検査や抗生物質の内服などのちゃんとした治療が必要となります。

1.39℃以上の、「突然」の高熱。
2.鼻水が汚くなり、青っ洟になった。頬が痛い、頭痛が取れない。
3.咳がコンコンと止まらず夜も眠れない。深呼吸するだけで咳が出る。
4.喉がすごく痛い。黄色い汚い痰がでる。声がかすれる。息苦しい。
5.咳はないが、熱が続く。扁桃腺が腫れて白いものがついている。頸にぐりぐりしたものがあり痛い。
6.微熱がとれない。からだがだるい。
7.1週間たっても、症状がよくならない。。

<医療機関をかえる場合>
2から4週たっても治らないと不安になります。別の医療機関に行こうと決心した場合は、それまで自分が飲んでいた薬のリスト(処方箋薬局でくれます)を必ずもっていってください。これまで、どんな治療だったのかが最も重要な情報なのです。この薬で効かなかった場合、次はこれというステップがあるのです。そうしないと、同じ治療がまた繰り返される可能性があり、危険です。
人間は例外なく、公平に年をとります。しかし、誰でも成人病になるわけではありません。成人病になった人が、誰でも早死にするわけではありません。しかし、確かなことは、いつか人間は死にます。これは避けられませんが、「寝たきり」は、避けたいものです。死ぬ前の日まで、ボケもせず元気だった、というのが理想です。「寝たきり」になるのが、成人病です。がんはほうっておけば死にますが、成人病をほうっておけば、「寝たきり」になる確率が高くなります。

成人病とは、
高血圧、高脂血症、糖尿病の3つです。成人病は治りませんが、しっかりコントロールすれば、ほとんど、そうでない人と同じような生活ができます。職場の健康診断で指摘されることが多いのです。最も、問題なのは、成人病は早期がんと同じように「まったく症状がない」ということです。自分が治らない病気になってしまったことにショックを受けるかもしれませんが「コントロール」さえすればいいのです。薬を飲みましょう。視力が落ちたらメガネをかけるのと同じです。薬を嫌がってはいけません。薬は、人類の手にした医学の成果です。簡単に血圧や、コレステロール、血糖をコントロールできます。
確かに怖いです。しかし、癌になった人がみんな死んでしまうわけではありません。交通事故で死ぬ人は毎年一万人前後ですが、がんで死ぬ人は、毎年約30万人います。胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんは、早く発見できれば8割の人は手術を受けて助かります。肺がんは4割、膵臓がんはなかなか早期発見が難しく助かる人はわずかです。がんになって助かった人の多くは、健康診断を受けた人です。つまり症状が出てからでは遅いのです。1年に1回の健康診断を受けてください。
会社や自治体の健康診断は、必ず受けましょう。つまり、がんや成人病(高血圧、コレステロール、糖尿病)は症状がないのです。また、健康診断を受けても、AとかBとか書いた通知書をもらうだけで、何の説明もしてくれないことがあります。「このまま放っていていい」のか「すぐ医者に行かなければならない」のか言ってくれません。検査自体は問題ないのですが、そのあとのフォローが若干不親切なことがあり、本人がことの重要性に気づかないことがあります。当院に、その書類をお持ちください。再チェックしましょう。
人前にでたり緊張すると、汗をかいたり、顔が赤くなったり、どきどきしたことがありますね?これもひとつのストレス反応ですが、正常です。しかし、ときには、いろいろな症状が現れます。

1.胃が痛い、下痢、便秘などの胃腸症状、食欲がない、食事がおいしくない。
2.ドキドキ、めまい、胸がキューと締め付けられる。
3. 頭痛、肩こり、手足のしびれ、疲れやすい。
4. 不眠。なかなか寝付けない、夜中に目が覚める、眠りが浅い。
5.集中力が欠ける、やる気が出ない、いろいろなことが面倒くさい。
6.気分が落ち込む。

こういった症状の場合、本当にストレスからだけなのか専門的な検査が必要なのかわからないことが多いのです。必要な場合は循環器内科、神経内科、脳外科、整形外科、心療内科などの専門家に紹介します。

小青竜湯と防風通聖散、花粉症とダイエットの漢方

防風通聖散

漢方を飲むことによって、無理なく痩せることができます。
現在肥満でお困りの方、痩せたい方は、気軽にご相談ください。

・受付では「62番の処方を希望します」とだけ、おっしゃってください。
 簡単な問診表の記入後、院長の診察を受けていただきます。
・診察後、ツムラあるいはカネボウの62番「防風通聖散」を最初、2週間分から処方します。
・漢方処方は保険診療が適応されますので、薬は自費扱いではありません。
・現在、便秘、あるいは便秘気味の方には特に効果的です。
・食事、飲酒は今までどおりでかまいません。特に食事制限は致しません。
・膝の痛い方には、防風通聖散ではなく、別の漢方を処方することもあります。

小青竜湯
花粉の季節がやってきました。鼻づまり、鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、本当にいやなものです。
こういうアレルギー症状には、従来、「抗アレルギー剤」と言われる薬剤が使われてきました。
こうした薬剤は、確かに効果はあるのですが、どうしても長期投与になるので、「眠くなる」「胃が痛くなる」「口が乾く」等の副作用が起きてきます。
漢方の「小青竜湯」というのは、こういった副作用がほとんど見られません。
小青竜湯は、厚生省の医薬品再評価試験を通過して、科学的にも有効性が確認されています。
子供や、ご高齢の方にも使用可能です。高血圧や糖尿病の薬を飲んでいる方でも併用可能です。
是非、一度、「小青竜湯」による漢方治療をお試しください。
もちろん保険適応になっておりますので、診察を受けて頂ければ、保険診療内で処方できます。

生活習慣病と癌胃がん肺がん

主な内科疾患一覧

生活習慣病
ストレスの多い昨今、日々の生活の中で知らず知らずのうちにあなたのからだの中はどのように変化しているのでしょうか?生活習慣病には高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風などがあります。いずれも、つながりがあり、総合的に診療することが必要です。環境による、加齢による、個々の素因によるものなど原因はさまざまです。一人ひとりの病態、ライフスタイルにあった治療や生活のアドバイスをご提案いたします。
高血圧
高血圧には原因が明らかでない本態性高血圧と原因疾患のある2次性高血圧があります。80~90%の人は本態性高血圧で、中高年以降に発症します。心臓、全身の血管の動脈硬化が進行します。
糖尿病
糖尿病とはグルコース代謝異常で、全身の動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳卒中などの障害が起こります。糖尿病にはインスリンの絶対的不足によるもの(1型)インスリンの相対的不足やインスリン抵抗性によるもの(2型)があります。遺伝的要素もありますが、飽食、運動不足、肥満が増悪の原因となっていることが多く、生活習慣の改善、個々にあった治療でコントロールが可能です。
高脂血圧
高脂血症も患者さん自身、痛くもかゆくもありませんが、心筋虚血(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害の代表的危険因子です。さまざまな治療法がありますが、食事、運動療法のみで検査値を正常化するよりも薬物療法を組みあわせたほうが心筋虚血、脳血管障害をより予防することが証明されています。一人ひとりの患者様に合致する治療法をご提案したいと思います。
呼吸器疾患
昨今、肺がんは胃癌を抜いて、死亡率第1位の癌です。
肺がんは、症状が出にくく、発見されたときは既に進行している場合が多い癌です
また、他の臓器や骨に転移しやすく、幸い手術できたとしても、再発率の高い癌です。
症状がでなくとも、定期的にレントゲンやCTによる検査が重要です。

呼吸器系の代表は今では「肺癌」が胃癌を抜いてトップになりつつあります。肺ガンの診断は大変難しいのと、胸部レントゲンの検査で発見された場合はの生存率は低くなっています。
昔とは違い内視鏡による手術が可能になりましたので、その後の生存率も高くなってきています。
消化器疾患
長い間、日本人のがんによる死亡原因の第1位は胃癌でしたが、最近では肺がんについで第2位となっております。
これは人間ドックや胃癌検診の普及により、早期に発見される例が増えたことと、治療方法が進歩したことによるものです。
早期に発見することで、開腹せずに内視鏡や腹腔鏡手術で、病巣を取り除くことができます。

消化器系の病気は、皆さんもご存知と思いますが、人間は食べなければ生きていけないことは誰でも知っています。消化器系の病気で一番怖いのが癌です。食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、大腸癌と人間の癌の8割近くが消化器系の癌です。

病院から渡される血液採血検査結果の説明

測定 BMI (体格指数) = 体重 (㎏) ÷ 身長2 (m)
肥満度 (%) = (実測体重―標準体重) ÷ 標準体重 × 100
標準体重 (㎏) = 身長 (m) × 身長 (m) × 22
標準体重 (㎏) = (身長cm―100) × 0.9 Broca 指数の桂氏変法
視力検査 5m離れた所の視力 (遠方視力) を測定します。
聴力検査 日常会話による方法とオージオメーターという機械を使う方法があり音の高さ(Hz)と大きさ(dB)を変えて測定します。
血圧測定 心臓が収縮して血液を動脈に送り出すときの圧力を 「最高血圧」 といいます。
逆に心臓が元に戻って血液をためる間の圧力を 「最低血圧」 といいます。
血圧が高いと血管に負担が多くかかり、脳・心臓・腎臓・眼底などに障害が起こる可能性が高くなります。
血管はいろいろな条件 (測定時の緊張・疲労・季節など) により変動しますので定期的に測定する事が大切です。
胸部レントゲン 肺結核・肺がん・じん肺症・肺炎などの診断に欠かせない検査です。 肋骨・心臓・動脈などの異常を発見する手がかりにもなります。
心電図検査 心臓の動きによって生じる、ごくわずかな電気を増幅させ記録し、波形にする検査です。
心肥大・心筋梗塞・心筋障害・不整脈などを波形のパターンやリズムで判定します。
胃部レントゲン 造影剤であるバリウムと発泡剤を飲み、発泡剤の空気とバリウムとの白黒の濃淡差を利用しX線モニターに写し撮影します。
上部消化管の潰瘍や癌などを発見する事ができます。
貧血検査 赤血球数(RBC) 主に体の細胞に酸素を運搬する働きをしています。 貧血を見つける手がかりになります。
血色素量(Hb) 赤血球の中に含まれており、酸素を運搬する働きをしています。
ヘマトクリット値(Ht) 血液中に含まれる赤血球の割合を調べる検査です。
血小板数 出血をした時に血を止める働きをします。肝機能障害の目安にもなります。
血清鉄(Fe) 血清中に含まれる鉄分を測定して鉄欠乏性貧血などを調べる検査です。
炎症検査 白血球数(WBC) 体内に炎症がおこると、血液中の白血球が増加します。
CRP 炎症や組織の損傷があるかどうか調べるのに役立つ検査です。
肝機能検査 総ビリルビン 直接ビリルビンと間接ビリルビンを合わせて総ビリルビンといいます。黄疸等の指標となります。
直接ビリルビン 肝機能障害の代表的な症状である。黄疸等の主な指標となります。
総蛋白(TP) あらゆる組織の病変が蛋白の変動として反映してきます。
アルブミン 肝臓で生成され、栄養不良の鋭敏な指標となります。
A/G比 血清中の蛋白は、主にアルブミンとグロブリンから構成されています。その比率を測れば、肝臓などの障害を見つけることができます。
TTT(チモール) 急性肝炎、慢性肝炎、膠原病などで高値を示します。
ZTT(クンケル) 急性肝炎や他の慢性疾患等で高値を示します。
AST(GOT) 体蛋白質の構成に関係する酵素で、肝臓・心臓・骨格筋の病気の手がかりになります。
ALT(GPT) ASTと同じ体蛋白質のアミノ酸造成促進酵素で、肝疾患の早期発見に役立ちます。
γ-GTP 肝臓・腎臓・脾臓に多い酵素で特にアルコールの影響を受けやすいので飲酒による肝障害のチェックに役立ちます。
ALP 肝臓・胆管・骨・腎臓・腸粘膜にある酵素で、これらの器官の異常のときに、血液中に多くでてきます。
LDH 糖がエネルギーに変わるときに働く酵素で肝臓病、悪性腫瘍、心臓病などで高値になることが多くこれらの病気のスクリーニング検査です。
コリンエステラーゼ 肝臓で生成される酵素で、肝実質障害により活性が低下します。
肝炎検査 HBS抗原 B型肝炎ウィルスに感染しているか調べる検査です。陽性でも肝炎が発症するとは限りません。
HBS抗体 B型肝炎ウィルスに以前感染があったか調べる検査です。
HCV抗体 C型肝炎ウィルスに感染しているか調べる検査です。陽性の場合C型肝炎の疑いがあります。
脂質検査 総コレステロール いろいろな臓器の細胞の中に存在し、ホルモンや細胞の中の膜を作る重要な構成物になります。
中性脂肪(TG) 皮下脂肪の主成分で、増加すると動脈硬化、高血圧、心臓病、糖尿病などの成人病の原因となります。
HDLコレステロール 動脈硬化を予防する善玉のコレステロールの量を調べる検査です。
LDLコレステロール 動脈硬化の危険因子で悪玉のコレステロールの量を調べる検査です。
糖尿病検査 血糖(FBS) 血液中のブドウ糖(血糖)が高くなると、糖尿病になります。
HbA1c 糖尿病にかかった場合1~3ケ月前の長期血糖コントロールの目安として用いられます。
フルクトサミン 血液中の糖と蛋白が結合してできる物質で過去2週間の血糖の平均値を反映しているとされる検査です。
腎機能検査 尿素窒素(BUN) 腎機能を調べる検査のひとつ、腎機能が低下すると血液中に尿素窒素が増えます。
クレアチニン 体内の老廃物の一種で、腎臓の働きが低下すると排泄が減り、血液中にクレアチニンが増えます。
痛風検査 尿酸(UA) 尿酸の生成と排泄のバランスがくずれると血液中の尿酸が増え、痛風、腎障害、高血圧、心臓障害などを引き起こします。
膵機能検査 アミラーゼ(Amy) 膵臓・唾液腺に多く存在し、これらの器官の疾患で高値になります。
尿検査 尿蛋白 腎臓や尿管などに障害があると多量の蛋白が蛋白尿になります。
尿糖 体に異常があって血糖値が一定限度をこえると、腎臓から多量の糖が尿に出てきます。
ウロビリノーゲン 肝臓の障害や赤血球が壊れて溶血がおこると、尿中のウロビリノーゲンが多くなります。
尿潜血 腎臓や尿管、膀胱など尿の通り道となる臓器に異常があると赤血球が尿に混じります。
便潜血検査 消化管の出血の有無を調べる検査です。大腸癌などの早期発見に役立ちます。
喀痰検査 喀痰を採取して異常の有無を診る細胞診などを行います。

うつについて、詳しい治療方法薬情報

【抗うつ薬の飲み方について】

 今日処方された薬は、抗うつ薬です。多くの抗うつ剤は、飲んでぱっと効くといった薬ではありません。1週間から10日あるいは2週間効果が出るまで、毎日コンスタントに飲む必要があります。従って、副作用が出ない限り決められた量をのんでください。のんでも効かないからといってすぐに中止しないでください。


【抗うつ薬の副作用について】

 副作用で、多いものはのどの渇きや便秘、眠気、吐き気などです。頭痛を起こす薬もあります。しかし、副作用はのむにつれだんだんなれて、軽くなることが多いようです。ですから、我慢できる程度のものでしたら、少し辛抱して飲み続けてください。
 もし、副作用かなと思ったら、遠慮せずに電話で問い合わせてください。診察中で、即答できないこともありますが、折り返しお返事いたします。

【カウンセリングについて】

 薬を使用しないでカウンセリングで治療したいと希望する患者さんもいます。カウンセリングは、薬物療法に比べ副作用が少ないなどの利点はありますが、効果が出るまでに時間がかかることや、一回の治療に時間がかかるため本格的なカウンセリングには費用がかかる事、重症のうつ病には効果が限られることなどの欠点もあります。また、うつ病のなかには、心理的原因が全く無いのに、落ち込んでしまううつ病のタイプもあります。
 こうしたうつ病にはあまりカウンセリングは効果がありません。このため、うつ病・うつ状態の初期治療には、カウンセリングだけで治療することは少なく、抗うつ剤による薬物療法を併用することが、一般的です。従って、当院では必要な患者さんに限ってカウンセリングをお勧めしています。
 薬物療法とカウンセリングを併用することがベストですが、薬物療法だけで改善する方も少なくないのです。

【薬の習慣性と服用する期間について】

 一部の薬(リタリンなど)を除けば、一般の抗うつ薬には習慣性はありません。また、くすりを一生のみ続ける必要もありません。治療が進んで、症状が良くなれば場徐々にくすりが減り、薬をやめられるようになるのが普通です。
 症状がよくなってもすぐに薬はやめず、しばらくはのみ続けてください。いきなりやめると、反動で症状が元に戻ってしまったりすることがあります。このため、2週間から3週間あるいはそれ以上かけて、徐々に薬を減らしていくのが原則です。具体的な減量のペースは主治医にお尋ねください。

【治療に要する期間について】

 治療期間は一般的には、3ヶ月から6ヶ月くらいかかると考えてください。もちろん、軽症であれば、これより短期間ですむ場合もありますが、重症の場合や過度のストレスがかかり続けた場合はこれ以上かかることもあります。従って、あらかじめ全治何ヶ月と予測することは困難です。

【日常のすごしかたについて】

 うつ病にかかったときの生活のすごし方の基本は、どの病気でも一緒ですが休息することです。十分な睡眠をとり、無理な活動を避けて休息をとることが必要です。うつ病の患者さんは、何もしないでごろごろしてはいけないと思いがちですか、体がだるければ、昼間でも横になっても構いません。
 うつ病は心の風邪であるとよく言いますが、風邪でも治療の基本は休息と十分な栄養補給であるのと同じです。あとは、生活のリズムを崩さないことです。規則正しい生活もうつ病の治療には必要です。睡眠と食事のリズムを整え休息を十分に取ることです。
 うつ病の時には何もしてはいけないとゆうことはありません。やりたくないことを、無理にすることは勧められませんが、やりたい趣味や旅行などはしてもかまわないと思います。
 しかし、ストレスになっている仕事などを、休めないからといって無理にすることはしないほうがいいと思います。休職が必要なときもあります。診断書などが必要なときには、担当医にご相談ください。

【家族の接し方について】

 励ましたり、気のせいなどといって発破をかけることは一番避けるべきです。病気であることを認めてあげることがまずは必要です。その上で、そっと見守ることがいいでしょう。
 多くの場合本人は、何も説明したくない、話をするのも面倒と思っていることが多いのです。本人が話を聞いてほしいといったときに初めて、話し相手になってあげるくらいでいいと思います。あまり心配しすぎも良くないかもしれません。本人は、周りの人に申し訳ないなどと思って、自分を責めてしまいかえって病気が悪くなることもあります。

【入院について】

 入院の効果は、まず現在の環境からはなれてストレスから開放されることにあります。入院するだけでよくなる患者さんも居るくらいです。あとの利点は、副作用などに対してすぐに対応できるために、薬の調整を外来治療に比較すれば、より大胆に行えることにあります。
 また、診察の頻度も外来よりは多くまた1回の時間も多めに取ってもらえます。従って、重症のうつ病の場合は、入院治療のほうが早く直るケースもあります。また、自殺念慮が強く実際に実行してしまいそうな場合は、入院が必要です。このほか、治療が長引いてしまい、慢性化してしまったケースや、欝が強く日常生活にも支障が出てしまっている場合などは、入院を検討したほうが良いでしょう。入院を考えている場合は、気軽に担当医に相談してください。

【主な抗うつ剤とその特徴】

 抗うつ剤とは、うつ病を改善する薬です。
 気分の落ち込みや、やる気のなさをよくする薬です。うつ病以外でも、パニック障害や強迫神経症などの治療にも使われます。最近はSSRIやSNRIといった、比較的新しいタイプの副作用の少ない抗うつ薬が発売され、内科でも処方される比較的身近な薬になりました。
 以下に、当院でよく使用される薬について解説します。この解説は、一般論ですので、すべての場合に当てはまるわけではありません。詳しくは、担当医にご相談ください。

*パキシル(スミスクライン)*

 日本で最も新しい抗うつ剤です。SSRIといわれる選択的セロトニン再吸収阻害剤のひとつです。簡単にいうと、脳の中のセロトニンとゆう物質を増やす薬です。脳内のセロトニンが、減少すると気分が落ち込む原因になるといわれ、このセロトニンを増やすことで、気分を持ち上げるくすりです。SSRIは、従来の抗うつ剤に比べて眠気の副作用が少ないといわれますが、パキシルは眠気がやや強い印象があります。このほかの、副作用は吐き気です。そわそわ感を感じる人も居ます。不眠がちになることもあります。
 しかし、作用は強力で、かつ効果が高いのが特徴です。一日1回の服用で効果がでますが、効果が出てくるまでは、1週間から10日続けて飲む必要があります。服用量は、1日10mgから40mgまでです。パニック障害や強迫神経症に使われることもあります。

*ルボックス(藤沢薬品)*

 これもSSRIのひとつです。抗うつ効果は、ややパキシルにわずかに劣る気はしますが、決して作用が弱い薬ではありません。眠気が少ないのが特徴です。副作用で多いのが、吐き気です。このために、ガスモチンといった吐き気止めと一緒に出すこともあります。これも、パニック障害や強迫神経症にも使われます。やはり、効果が出るまでは7日から10日のみ続けることが必要です。1日の量は、50mgから200mgで、一日2回以上に分けて飲みます。摂食障害の過食嘔吐の症状に良く効くことがあります。

*トレドミン*

 これは、SNRIといわれる薬のひとつです。この薬は、セロトニンとノルアドレナリンという脳内物質を増やす薬です。気分を明るくするよりは、意欲を高めるのに効果的であるといわれています。副作用は、吐き気と頭痛です。やはり、強力な抗うつ効果をもっています。用量は、一日50mgから150mgくらいで、一日に2回以上に分けて服用します。
 このくすりも、効果が出るまで7日以上は飲み続ける必要があります。副作用として、多いのは頭痛や吐き気です。ときには、尿が出にくくなることがあります。

*ドグマチ-ル*

 本来は、抗うつ剤というよりは、安定剤に分類される薬ですが、当院ではうつ病の方に飲んでいただくことが多いために、ここで説明します。SSRIが登場するまでは、うつ病の第一選択薬だった薬です。副作用が少なく、作用は強力です。眠気も強くはありません。しかし、ホルモンに影響を与えてしまい、女性では乳汁分泌や生理不順を起こすことがあります。こうした副作用は、飲むことを中止すれば元に戻るので、乳汁分泌があってもあわてなくても大丈夫です。胃潰瘍の薬としても使われるため、胃にやさしい薬ともいえます。
 うつ病だけではなく、不安神経症やパニック障害や統合失調症など、幅広く使われる薬です。うつ病には150mgから300mgの量で使います。作用が現れるのが比較的早く1週間以内です。この薬も、飲み続けることが必要です。

*アモキサン*

 従来型の抗うつ剤です。いわゆる3環系抗うつ剤といわれる薬です。3環系抗うつ剤の中では、新しい薬で、比較的副作用が少ないタイプの薬です。作用は強力で、SSRIが登場したあとでも、その有用性は色あせることのない薬です。やはり、うつ病以外でも使われ、パニック障害や強迫神経症でも有用です。一日30mgから150mg最大300mgまで使うことが出来ます。パキシルと併用すると、より効果が増強されます。
 副作用は、眠気、便秘、手の振るえ、口の渇きなどです。尿の出が悪くなることもまれにあります。作用は、強力ですがSSRIに比べるとやや副作用が出やすいのが欠点です。やはり、飲んですぐに効くことはなく、10日前後飲み続けることが必要です。

*ルジオミール*

 SSRIが登場するまでは、うつ病の治療薬の中核を担っていた薬です。4環形の抗うつ剤といわれる薬です。抗うつ効果は、強力ですが、口の渇きや眠気などの副作用があります。

*トリプタノール*

 トフラニールと並んで、従来型の3環形抗うつ薬の代表的存在です。古くから使われ、作用も強力です。作用だけでは、SSRIよりも強力かもしれません。しかし、副作用が強く、眠気、口の渇き、尿閉、便秘などが出現することがあります。
 このほかにも、テトラミド、レスリン(デジレル)、テシプール、トフラニール、アナフラニールなどの薬が抗うつ薬です。