$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-book

今日はお休みなので、
のんびりと思ったのですが、
続きを書きたいと思います。

ということで「英国産ワイン」の続きです…

前回は13世紀まででしたね。。。

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2011年暮…
世界のに70億人を超えたそうですが、
13世紀はまだ、
世界人口が約4億人だったそうです。

それでも人は増え続け、交易はますます発達、
後に英国の強大なライバル国となるオランダ/ネーデルランドも
基礎となる土地が出来始めていきます…

英国ではケンブリッジ大学(1231-)や
オックスフォード大学(1249-)が設立され、
知に対する意識に大きな変化が起きていきます…

現在のパブの様な居酒屋では
国が決めたワインの価格統制を守る義務が生じ、
破った者は営業停止になるとされたそうです。

世界遺産の大聖堂で御馴染な
カンタベリーには大きな時計が設置され、
太陽や鶏だけではない
時間という感覚が少しづつ生じて行きました…

国内産のワインはというと…
カンタベリーの城壁の外では多くの葡萄畑が開墾され、
ウィンチェスターは産地として名を馳せるまでに発展…

一部、王の狩り場として消えた葡萄畑もあったものの、
以後も南向きの丘などにその栽培地は少しづつ増え、
料理に好まれた酸味葡萄果汁という新たな需要もあって、
多くの葡萄が収穫され、ワインに姿を変えて行きました…

そしてこの頃、引き続き輸入されていたボルドーのワインは
英語でクラレット*と呼ばれるようになります。。。
*今で言うロゼ的な薄い赤ワイン。

冷蔵庫など、当然ない時代…
人は塩蔵された塩辛い食材を用いた料理を食べ、
その塩とのバランスを摂る為に
ますます穀物(&酒)やワインを求めました…

必要にかられて交易は発達、
その造船技術や航海技術もまさに日進月歩…

フランス語が標準語だったはずの王侯貴族も英語を喋り始め、
英語を流暢に話すエドワード三世が即位した頃には、
教皇に対する税の搾取や
外国人高僧に対する不満も溜まり始めます…

一方のフランスでも、
重要な貿易港でありワインの産地であるボルドー周辺は
手中に収めたい場所であり、その奪取の機会を伺い始めます…

そして14世紀…
かの「百年戦争」が始まるのです!

イングランドでは贅沢を禁止し、
可能な限りボルドーからワインを輸入し続けるも、
それでは賄い切れず、ワインの輸入先を
スペインやポルトガル*などに拡大…
*注:この時代にまだポート・ワインはありません。

国内の需要もますます増え、
カンタベリー近郊のケント周辺では葡萄畑の開墾が進み、
ワインの消費量も増えていったことで様々な風俗や習慣も誕生…
チョーサーが物語を描くのにはネタに困らない生活が
そこにはありました…

$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-カンタベリー
(カンタベリー物語に用いられた挿絵 By Wiki)

国の英語化を象徴するものともなったカンタベリー物語には、
既に輸入ワインとして知られ始めた
スペインのヘレス/シェリー近郊(ウエルバ)のワインが登場します。

そしてここでまた大きな転機が…
ペストの流行です・・・

ペストの恐怖は人々に大いに知恵を与え、
各地で検疫を習慣化、義務化させ、
一方で砂糖や甘口ワインが薬として流行します。

ところが、当のイングランドでは
日持ちのする酸味のあるワインは造れても、
その気候の短所から、
甘いワインを造るのは不可能だったのです…

国はフランスとの戦争をしつつも、
国をあげてペストを避けながら糖を求めて
貿易の基礎固めに勢力的になります。。。

こうして15世紀には…
こうして甘口ワインが流行、料理やお菓子、ワインなどにも
アンダルシア産など地中海産の砂糖黍糖を入れるのが流行り…
これ以降、イングランドではすっかり砂糖中毒に…w

ところが…
イングランドが、自国のプールのように使っていた大西洋に、
それまでいた商売上手なイタリア人とは別に、
スペインとポルトガル、ついでオランダが進出し始めます…

占星術者達が騒ぎ立てる中、太陽の黒点が増加…
地中海の喉では、ビザンチン帝国の崩壊によって
リナシタ/ルネサンスという世界を動かす卵が割られ、
まだどう化けるか解らない雛が第一声を上げました…

さらに英国では記録的な寒波が国を遅い、
それまでの多くの葡萄畑は壊滅…

百年戦争が終結し、ワイン供給源も失ったイングランドでは、
さらに続いた国内の紛争で対外政策にブレーキがかかってしまい、
その間、ハンザ(同盟)に鱈の魚場まで奪われてしまいます…

次第に交易、戦争、宗教という欲の三位一体が世界を支配し始め、
その手は新大陸という名の未知の大陸や島々に向けられたのです…

さて…

まだまだ書きたい気もしますが、
今日はこの辺で…w

読まなければならない本が溜まっているので、
コーヒーで一服しながらそれを読むことにしますw

それでは、歴史好きな皆様、また!

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©KOHYA NAKASE 2012

シェリーに関してはセミナーも行っています。
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