果てしない世界 (ミャンマー旅行記3日目) | It's a Beautiful World!

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夜が明けたら/CastingAroundドラムヒロヤユウコの日々のお話です

9月13日月曜日。


早朝5時、大音量の音楽で目が覚めました。

音楽、いや、これはどうやらお経のようです。

さすが仏教国、でも朝早すぎです。


と思いきや、街はもうクラクションが鳴り響きすっかり動き出しています。

確かに電力状況の悪いこの国では明るいうちに動くのがイチバン効率的ですよね。


軽く二度寝してから屋上に朝食を食べにいきました。

ここでもごく普通のパン+タマゴ料理+フルーツの朝食でした。

朝食を食べているとひとりの男性のかたがやってきました。

「日本人ですか?」

あぁ、日本人のひといたんだ!

奈良からこられた日本人のかたで長い旅行をされてるようで話がはずみました。


しばらくするとまたひとり、今度は若い女性のかたがやってきました。

あ、このひとも日本人みたい、と思ったら彼女ミャンマー語で宿のスタッフと会話し始めました。

「どこのかたですか?」

「日本人です。」

えーっ!ミャンマー語がしゃべれる日本人なんているんだ!

どうやら彼女は外大の4年生でミャンマー語を専攻しているとのこと。

ここバガンにはインターンシップで8ヶ月も滞在したことがあるという非常にレアな経歴の持ち主でした。

それでもミャンマー語を生かした仕事ってないんですよ、と言われてましたが、すごいスキルだと思います。


3人でいろいろ話ましたが、男性のかたは今日はわたしと同じ馬車でバガンめぐり、女性のかたはポッパ山という山に登山されるとのことでした。


みなさんにさよならを告げて、いよいよ馬車でのバガンめぐりの始まりです。

宿の外にはもう馬車がわたしを待っていました。

ここでの馬車は観光用という用途もありますが、日常的にも乗り物として機能しているようで村のなかをたくさん走っています。

本日のわたしのガイドさんはナイナイという名前で、馬の名前はマドンナだそうです。


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田舎ながらもにぎやかなニャンウーの村を抜けて、いざバガンへ。


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バガンとは広い、とてつもなく広い平原に数千のパゴダ(仏塔)や僧院が散らばっている仏教遺跡です。

道は次第に砂利道に変わり、建物も見えなくなり、バガンにやってきました。


バガンには数千のパゴダがありますが、ガイドブックには見所として有名なパゴダや僧院がピックアップして載っています。

ナイナイいわく、主にそこを周りながら他にもいろいろオススメに連れていってくれる、ということでした。


まず最初にきたのは、ガイドブックにも載っていない名もなきパゴダでした。

このような名もなきパゴダではキーマンがいて、訪れるとカギを開けてくれるそうです。

なんだかRPGの世界みたいでステキです。


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さらに有名どころのパゴダでは中を見てまわることしかできないけど、名もなきパゴダでは上まで上ることができるそうで、キーマンが案内してくれました。

宿で一緒だった男性のかたもちょうど到着されたので、ふたり一緒に案内してもらうことにしました。

誰もいない静かなパゴダの中に必ずある仏像を見て、壁画を見て、内部のおくのほう、電気もない暗い階段を上るとパゴダの上にでました。


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あぁ、なんて素晴らしい!

この古く茶色いパゴダの美しさ、広がる草原にはそのパゴダが数千も点在し、圧巻です。

裸足でパゴダのうえに立ち、風に吹かれ眺める景色はまるで異世界で、なんとも言えないワクワクするような、ドキドキするような不思議な気持ちでした。

これからどんな物語が始まるんだろう!


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キーマンがいろいろと説明してくれました。

7000以上あったパゴダはいまは地震で4000程度になったこと、近くの村からここのパゴダに通ってきていること、小さい頃からパゴダや裏の川で遊んでいたこと。

そして最後に、自分はアーティストなんだ、と言って川の砂に着色して描いた絵を見せてくれました。


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つまり、この絵を売って暮らしているんだ、と。

とてもステキな絵でしたが、もうすでにお金がピンチなのでムリですと断らざるを得ませんでした。

昨日に引き続き、やはり彼らにとってはパゴダは重要な商売の場所なんだなと思いました。

昨日のようにムチャな手段でぼられたわけではないし、彼はとても好青年だったのでなんとなく申しわけない気持ちにもなりましたが、なんだか寂しくもありました。

今日も1日、物売りたちかは逃げれないのかな。


次に行ったパゴダではまた物売りに説明されるのが嫌で、話もそこそこに逃げるようにでてきてしまいました。


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お次は有名なティーローミィンロー寺院。

バガンの象徴的な建物で、仏像も建物もとても大きく美しく均整のとれた素晴らしい寺院でした。

先ほどの日本人のかたがいらして、思いっきり物売りに囲まれてました。

物売りのなかのひとりの男の子がわたしにもすごい勢いで声をかけてきましたが、わたしは足早に通り過ぎました。


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その後、またちいさなパゴダ(名前は忘れてしまいました。)に立ち寄ると、今度は遠慮も前フリもないままに、若い女の子の物売りたちが馬車から降りたわたしをいっせいに囲みました。

すぐに、日本人男性のかたも到着し、同じように囲まれました。

彼女たちは流暢な英語とカタコトの日本語で、とにかく自分たちの売っているおみやげを買ってもらおうと総攻撃をしかけてきました。

「おねえさん、かわいいね、安いよ、買って。」

「10枚1000チャット、安いよ。」

「負けるから、買って。」

まともにパゴダを見ることもできません。

最初は対応していたけど疲れてきて、わたしは馬車に乗って、もうだしてください、とナイナイに告げました。


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彼女たちはしばらくわーわー言ってましたが、やがて遠ざかりその声も聞こえなくなりました。

と、思ったと同時に今度は誰かがわたしの馬車の後ろをすごい勢いでバイクで追いかけてきます。


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さっきティーローミィンローであった少年です。

どうやら彼も物売りらしく、自分の絵を頼むから見てくれとずっと叫んでいます。

僕は大学に行ってたけどお金が厳しいからいまこうして働いて大学に戻るお金をためているというのです。

いや、どう見ても中学生やろ、と言うともう19歳だと言うのです。

そんな会話をしてしまったのが運の尽き、彼はどこまでも話続けて着いてきます。

なんというしつこさ!

いや、でもこれが英語が上手だしよくしゃべるし、人懐こくてなかなかかわいくて何気に楽しんでしまいました。

でも買わないからね!


そして次はアーナンダ寺院へ。

少年はまだ着いてきて、挙句わたしの隣に並んで歩きながら一緒に寺院に入ってきました。

まだくるかっ!


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さすがに寺院のなかで買ってー買ってーは言いませんでしたが、なんだか気になって全然集中して見て周れませんでした。

外にでると、今度はちょっとこっちにきて、とわたしの手を引いて寺院の裏に連れていきます。

ここに座ってといって自分もわたしの横に座るではありませんか。


そしてまた彼の話が始まりました。

彼の名前はココ。ここからは少し離れた村に住んでいるそうです。

なにを言い出すかと思えば、青少年の悩みをふつふつ語りだしました。

自分にはずっと彼女がいないとか女の子が周りにいないとか、なんだかんだかわいいなぁと思って聞いていたら、だから1日でいいからデートして、だそうです!


いやはや、わたしもこんな遠い国で未成年にデートしてとお願いされるとは(笑)

せめて今日夜飲みに行こう、と何度も言ってました。


そんな話を延々と聞かされ、はいはい、と外にでると今度は即効絵を広げて、「僕の描いた絵、安くするから買って!」

なんとたくましい少年よ!


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結局根負けしてココの描いた絵を一枚と便乗してきたひとの絵を一枚買ってしまいました。

ホントにもういよいよお金なくなったら大使館に行くしかない、かも。

あぁ、もうどうしよう!

最後にはココはわたしのカバンについてるバッジをこれ欲しい欲しい、としつこくねだるのでこれも根負けして1個あげました。

やれやれすごいパワーです。


続いてはゴドーパリィン寺院。

空も晴れてきて美しく堂々とした姿です。

他の物売りたちに混ざってココもまだ着いてきて、しつこく誘ってきます。

わかったわかった、じゃあ夕飯一緒に食べてあげよ、と言うと喜んで、じゃあ今日はこれ以降ここで絵を売って稼ぐから、と一旦お別れすることで納得してくれました。


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そのあとはまたキーマンのいる名もなきパゴダ。

ここでひとり旅の韓国人女性のかたと遭遇しました。

少しだけ会話をしてまたね、と手を振りました。


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そしてタビィニュ寺院に向かい、見て周っているとまた韓国女性のかたと会ったので話ながら周って外にでると、すごい笑顔で手を振っている少年がいるではありませんか!

ココ!Why are you here?

またわたしの隣に座ってしゃべり続けてます。

ミャンマーの子供たちはみんな驚くほど英語が上手でびっくりしていたのですが、そりゃこれだけ人生かかってれば必死になって上手になりますよね。

ある意味すごく感心しました。

しかもみんなめげないし、しつこいけどなんか楽しそうで憎めなくて、ホントたくましい少年少女たちです。

でもその中でもとりわけキミはタフすぎるよ、ココ!


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約束はちゃんと守るから、とこちらも強気で押し切って馬車に乗って立ち去りました。


ブーパヤーパゴダで、また韓国女性と会ったので、あと1箇所周ったら一緒にお昼食べようと約束しました。

こちらの約束はすんなりでした(笑)


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午前中ラストはマハーボディーパゴダ。

ここではミャンマー女性のかたに声をかけられて顔にタナカというミャンマーのお化粧をされました。

木の皮を擦ったものでできていて、ミャンマー女性と子供が顔に塗っています。

フリーだって言うからお願いしたのにちゃっかりお金取られました。

同い年の女の子、いい人だったから楽しいかったんだけど、あぁ、もう、わたしのバカ!


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お昼ごはんは定番ミャンマーカレー。

テーブルいっぱいのカレー、ごはんは食べ放題、さらに副菜、生野菜、スープ、フルーツ、食べるお茶、いろいろついて3000チャット(約300円)、安い!

韓国女性のかたはKDと言って、旅好きの少し年上のお姉さんでした。

いろんな話を聞かせてもらって楽しいランチでした。


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午後からはたくさんパゴダを見て周ったのですが、正直どれがどれだか写真を見てもわからなくなってしまいました。

あまりにもたくさん見たのと、どこに行っても物売りだらけで話しかけてはどこまでもついて周るので、なんだかゆっくり見れずとにかくたくさんパゴダを周ったという感じになってしまいました。

物売りの子たちはみんなかわいくていい子で話をするのは楽しいのですが、買え買えとしつこすぎてうるさすぎて最後のほうには正直疲れてしまっていました。

こんなにちいさな子たちが働かないと生きていけない、ちいさな子達だけではなくおとなもそうやって働かないと生きていけない、そんな国の人々を少しかわいそうに思う複雑な気持ちもありました。

それでもわたしにはどうすることもできないという苛立ちでもう逃げたい、そんな風にも思いました。

このことについてはこの後の旅の中でも何度も考えることになりましたが、このときはただただ困惑し、対処に疲れきっていました。


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そんな中でただ一ヶ所、ホントに唯一物売りのいなかったパゴダの頂上でKDと一緒に並んでただこの広いバガンを眺めたのはホントに最高でした。

暗いひっそりとしたパゴダにたたずむブッダの横を抜け、暗い階段を上り、広がる世界を眺めました。


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吹き抜ける風、流れる雲。

目の前にはどこまでも広がる平原とパゴダたち。

物売りの声も届かず、どこまでも静かな世界。

遠くでは畑を耕すひとと牛馬が歩き、古来から変わらない営みと祈りの聞こえる大地。


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わたしたちは言葉もなくして、ただ眺めていました。

ここはどこなんだろう。

わたしはこの広い世界で、

わたしはわたしで、

わたしがいま生きているなんて、


なんて。


そのあともたくさんのパゴダを見て、たくさんの物売りと会話しましたが、なによりその名もなきパゴダの頂上から眺めた景色がわたしにとって忘れられないバガンの景色になりました。


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バガンのパゴダの上から沈む夕陽を眺めるのも夢だったのですが、結局最後は曇ってしまい見えませんでしたが、もうお腹いっぱいの1日だったんでそれは次回にとっておきます。


あたりも暗くなり始め、わたしたちも帰路につきました。

KDにパペットショーを一緒に見に行かないか、と誘われたのですが、わたしは一応ココとの約束もあるしな、と断って宿に帰りました。

どこに行って何時間見て周ってもなにも気にせず、のんびり馬車のうえで待っていてくれたナイナイとおとなしいマドンナに別れを告げて、部屋に戻りました。


さて、ホントにココは来るのかな。


約束は19時。

予定時間少し前から時間過ぎてしばらくまで様子を伺ってましたが、ココは来ませんでした。


雨も降り出したし、もう村に帰ったのかな。

わたしはひとりで近くのお店でスープヌードル(かなりおいしかったです)を食べて簡単な晩ごはんにしました。


あんなに約束って連呼してたのに、調子いいなぁ(笑)

仏教徒は約束破らないんじゃなかったのかい?


でも、もうこれできっとわたしたちって二度と会うことないんだろうな。


そう思うと、なんとも不思議な気持ちになりました。

わたしは旅が終われば日本に帰ります。

ココはきっと明日もあさってもたくましく絵を売り、笑顔で旅行者に話しかけタフに生きていくんだと思います。


もうきっと、この人生では会うことはおろか、すれ違うこともないんだね。

そう思うと、人の人生はどうしようもなく短くて、わたしたちはこの広い地球のほんのちいさな場所でほんの一瞬を生きてるだけなんだ、そんな感覚に襲われました。

あぁ、この世界は、この宇宙は、なんて広く、わたしはなんてちいさくはかないんだろう。

何をしても、何をあがいても、何にも届かないようで、途方に暮れてしまいたくなります。


わたしを想えば、わたしの存在はこんなにも重くわたしにのしかかってくるのに、世界を想えば、わたしなどちいさすぎてはかなすぎて、消えてしまいそうだよ。


降り始めた雨はすっかり土砂降りに変わり、灯りの消えた通りからはあっという間にひとがいなくなり、村は今にも眠りに落ちそうでした。


ココ、キミと会うことはもう二度とないけど、どうか明日も笑って生きていて欲しいよ。

キミの未来が幸せに満ちたものでありますように。

ステキな女の子に出会えますように。

そしていつかあのバッジを見て思い出して欲しいよ。

たくましく過ごした日々、わたしに出会ったこと、若きその悩み。

わたしもココの絵を見て思い出すよ。

美しいバガンの景色、そこで出会ったココのこと、ちいさくはかないわたしの大きな果てしない心を。