カッサフォルテ犬猫コラム -192ページ目

僧帽弁閉鎖不全の治療2

肺水腫がある場合はACE阻害剤に加えて利尿剤を投与することがあります。
おしっこをどんどん出させることによって、体内の余分な水を出し、肺に貯まっている水分を減らします。
呼吸が苦しい時には気管支拡張剤なども併用することがあります。

この他にも状態に応じて強心剤などを併用することもあります。

食事療法も症状を和らげるのに有効です。
塩分が多いと体内に水を保持してしまうので、心臓に対する負担が大きくなります。
そのため、塩分を制限した食事にします。
ただ、塩分が少ないフードは嗜好性も落ちるので、なかなか食べてくれないのが難点です。
食事療法はすぐに目に見える効果があるわけではありませんが、長い目で見ると有効だというデータがあります。

激しい運動はできるだけ避け、暑い時期には室温を下げてあげることも大事です。
温度が高いと呼吸が速くなり、心臓に対する負担が重くなるのです。
ワンちゃんは汗をかけないので呼吸で体温を調節します。
ですから、扇風機だけでは人間に対するほどの効果はありません。
エアコンで室温を下げてあげる必要があります。

慢性心不全と診断されたら、手術以外には根治させる方法はありませんが、このような治療や管理でQOLの改善が期待できます。
様子を見ていても、悪くなることはあってもよくなることはありません。
早期発見、早期治療が一番なのです。

僧帽弁閉鎖不全の治療1

今回は僧帽弁閉鎖不全症の治療についてお話ししたいと思います。

僧帽弁閉鎖不全症と診断されて最初に使われるのがACE阻害剤と呼ばれる薬で、血管を拡張させることによって血圧を下げ、心臓の負担を軽くすお薬です。
健康な子が飲んでもほとんど副作用がないと言われているとても安全なお薬です。

心臓の機能が落ちると1回の収縮で送り出せる血液の量が少なくなるため、血圧が下がります。
血圧が低い状態が続くのはいろいろな臓器にとって都合が悪いので、そうすると体の正常な反応として血圧を上げるようにとの指令が出ます。
血圧を上げるために、レニンという物質が出されます。
このレニンがアンギオテンシンⅠという物質に変換され、さらにそのアンギオテンシンⅠがアンギオテンシンⅡに変換されて心臓や血管に作用するのです。
健康な状態であれば、心臓がより多くの血液を送り出すことで血圧を上げるのですが、心臓の機能が落ちているとそれが十分にはできません。
流れている血液の量が変わらないのに血圧を上げるには血管を細くするしかありません。
血管が細くなると血圧は上がるのですが、血液を送り出すのに抵抗が大きくなり、心臓の負担が大きくなり、そしてまた血圧が上がり・・・と悪循環を起こします。

ACE阻害剤はアンギオテンシンⅠがアンギオテンシンⅡに変わるのを邪魔します。
レニンはアンギオテンシンⅡにならなければ作用しないので、ACE阻害剤を使うことによってこの悪循環を断ち切ることができます。
健康な子の場合は、そもそもこの悪循環が起こらないので、ACE阻害剤を投与しても無害なのです。
症状が軽い場合はACE阻害剤だけで維持していくことができます。
ただし、この薬は負担を軽くして心臓を助けているだけです。
心臓自体をを治すわけではありませんので、突然投薬をやめてしまうと元通りか、あるいは前より悪化してしまうこともあります。
ですから、投薬を始めたら一生続ける必要があります。

副作用はほとんどありませんが、脱水がある場合は腎臓に悪影響を及ぼすことがあるため、食欲がなく、水もあまり飲まないという場合などには一時休薬することがあります。

慢性心不全の症状

今回は僧帽弁閉鎖不全症の症状について書いてみます。

初期には目立った症状はなくわかりづらいのですが、次のような症状で気付く場合があります。

以前に比べて疲れやすくなった。
あまり長時間運動しなくなった。


この時点では聴診すると小さな心雑音が聞こえたり、レントゲンを撮ると心臓が正常よりも少し大きくなっていたりという程度です。
否定的なデータもありますが、できればこの時点から治療を始めた方が何年後かの生存率が高いというデータがあります。

進行してくると、次のような症状が出始めます。

明らかに運動を嫌がる。
運動したり興奮したりすると呼吸が荒くなったり、咳が出る。


この時点では聴診すると明らかな心雑音が認められ、レントゲンを撮ると心臓が大きくなっているのがわかります。
肺水腫になっていることもあります。
前回お話ししたように、全身から戻ってきた血液は心臓からまず肺に送られます。
そこで酸素を取り込み、再び心臓に戻ってきてから全身に送り出されるのです。
心臓に問題があると、肺のところで滞った血液から液体成分がしみ出して肺に貯まるのです。
この状態を肺水腫と言います。
この段階で気付いたなら、すぐに治療を始める必要があります。

さらに進行すると、次のような症状が出ます。

安静にしていても呼吸がつらそうで咳が出る。
動きたがらない。


もっと進行すると、

お腹の中に水が貯まってお腹がふくれる。

などの症状が出てきます。

この時点では聴診器を当てなくても、胸を触っただけで心雑音がわかる場合もあります。
レントゲンを撮ると心臓がかなり大きくなっているのがわかり、肺水腫も起こしているのがほとんどです。
ここまで来ると、直ちに治療を始めなければ生命に関わります
状態が悪い場合は入院が必要になることもあります。

上に書いたような症状が見られる場合は早めに診察を受けてください。