ポップ・ミュージックのトリコ -6ページ目

ポップ・ミュージックのトリコ

流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

監督 ジョシュ・サフディ
脚本 ロナルド・ブロンスタイン

   ジョシュ・サフディ
ジャンル ドラマ/コメディ/スポーツ
出演 ティモシー・シャラメ as マーティ・マウザー
   グウィネス・パルトロウ
   オデッサ・アザイオン
   ケビン・オレアリー
撮影 ダリウス・コンジ 

編集 ロナルド・ブロンスタイン

   ジョシュ・サフディ

上映アスペクト比 2.39 : 1

 

鑑賞方法
なんばパークスシネマ

 

ティモシーシャラメ×ジョシュ・サフディ監督となれば観に行かない理由はない!

ということで映画館に。毎年の事ですがこの時期は観るべき重要な映画が次々に公開されます。

 

ということで本作をなんばパークスシネマで鑑賞。

ここのシートはひじ掛けがどの席にも両側があって、隣の人と取り合うことがありません。

ほんのちょっとの違いなのですがこれがもたらす心理的なゆとりは鑑賞にものすごい違いがあります。

それに加えて、おなじなんばの繁華街にあるのに微妙に中心地からそれているので雰囲気が落ち着いてるんですよね。居心地という意味ではこの映画館が一番いいので上映方式が同じなら断然ここを選びます。

 

ということで封切り日の初回に鑑賞!

お客さんは封切り日の金曜日の初回ということで、6割くらい席が埋まっている感じでした。お客さんはまさに老若男女。おい仕事しろよ!っといいたくなるような社会人現役世代も多数。そんな映画ファンたちと一緒にいざ開演。

劇が始まったらいきなり面白くてそこからは無責任で自分勝手な主人公が自分の欲望をむき出しにハチャメチャな行動を次々に起こすのがとにかく面白い。ここ数年ポリコレ映画をたくさん見せられて来たからこそ、こうしたモラルゼロの映画は背徳感さえ興奮に変えてゆきます。このシーンで笑うってことはあんたも劇中の人物とおんなじレベルなんだよ!っていうウィットの利かせ方が大好きなので、本作は最高の作品でしたね。『ワン・バトル・アフター・アナザー』といい本作といい、コメディ映画の復権を感じます。SNSの浸透により、切り取られて貶められるリスクが多くなっている世の中で、嫌悪感と笑いの境界線ギリギリを攻める監督や演者の巧さに唸らされます。

 

ほとんど卓球なんかせずにあれやこれやと日本人選手とのリベンジマッチをするためになりふりかまわず奔走する主人公。それはいまや斜陽産業となり、大手メジャーが合併を繰り返さないといけなくなるほどシュリンクが進みつつある映画産業を、音楽産業でいうジャズやクラシック、演劇で言うオペラやバレエのように、権威はあるけどポップではなくなってしまったニッチで”高尚”なカルチャーにしないために悪あがきをしている本作そのものだと感じました。

 

映画がもっとギラギラしたものだったころの輝きを取り戻したいと、時代の流れから遅れてやってきた最後のスターであるティモシー・シャラメが奔走している姿は映画好きならしかと目に焼き付けておくべきでしょう。トムもブラピもなりふり構わず恥も外聞もかなぐり捨ててポップ・カルチャーとしての映画の復権に乗り出している現在。

AIだなんだと太刀打ちできない大きなうねりに飲み込まれてもがき続ける世界の人々に、もう一度なりふり構わず全力で立ち向かう勇気をくれる作品が多くなっています。

 

ホラー映画からはじまった映画復興ですが、昨年から今年の流れではいよいよそれ以外のジャンルの映画も巻き込んで復権を果たすべく様々なやり方で観客に新しい映画体験を味わわせてくれそうです。

1位 "Choosin' Texas" Ella Langley

produce: E.Langley, B.West, M.Lambert

 

2位 "Man I Need" Olivia Dean
produce: Z.Nahome

 

3位 "I Just Might" Bruno Mars
produce: Bruno Mars, D'Mile

 

4位 "American Girls" Harry Styles
produce: Kid Harpoon, S.T.Johnson

 

5位 "Ordinary" Alex Warren
produce: A.Yaron

 

1位はエラ・ラングレーが返り咲きです。

4位にアルバム『Kiss All the Time. Disco, Occasionally.』をリリースしたハリー・スタイルズの曲がランクインしています。

 

 

今週のピックアップ

 


"Babydoll" Dominic Fike

さて今週もこの曲を取り上げます。

シンプルな音の構成だからこその力強さがあります。

 

"Paint by Numbers" Harry Styles

ハリー・スタイルズの新譜からもシンプルなアレンジのナンバーを。

春の陽気にピッタリのコーヒーが飲みたくなる音楽です。

 

"Say Why" Zach Bryan

シンプルといえばザック・ブライアンです。

いやぁ、沁みる音楽です。

 

"Plastic Cigarette" Zach Bryan

今週もザック・ブライアンのこの曲もセットで取り上げておきます。

 

"In My Room" Julia Wolf

最後にニューヨーク州ロングアイランド出身のジュリア・ウルフの曲を。

ズバリ好きなタイプの作品です。音像が狭くてこもった感じの雰囲気がいかにもニューヨークっぽい感じです。

 

 

今週はシンプルなアレンジのものを中心に取り上げました。

なんだか春って料理にしても音楽にしてもシンプルで素材を活かした感じのものを所望してしまう傾向があります。

時代の気分としてもややこしい時世の時はシンプルなものが流行りがちで20年代の大きなトレンドのひとつですね。

 

 

今週はこのあたりで。

監督 エメラルド・フェネル
原作 エミリー・ブロンテ
脚本 エメラルド・フェネル
ジャンル 恋愛
出演 マーゴット・ロビー as キャサリン
   ジェイコブ・エロルディ as ヒースクリフ
   ホン・チャウ

   シャザド・ラティフ
撮影 リヌス・サンドグレン 

編集 ビクトリア・ボイデル

上映アスペクト比 1.85 : 1

 

鑑賞方法
TOHOシネマズ なんば(IMAX)

 

なんとなく読んだことは覚えているけど内容は覚えてないなぁ、ってほどの原作の知識ながら、倒錯した愛と復讐劇が得意なエメラルド・フェネルが、復讐劇作品の古典ともいえるエミリー・ブロンテの作品を撮るというのだから観に行くしかない、ということで鑑賞。

せっかくIMAX上映があるというからにはIMAXで鑑賞。まあ、いわゆるなんちゃってIMAXなので一番身近なTOHOシネマズなんばで鑑賞。この劇場も大好きなんですよね。なんと20周年記念とのこと。そうか今年で20年か・・・。

ずっと新しい劇場だと思ってましたがすでに20年。IMAXの方式も12CH方式とやや古い設備。でもねぇ、ここのIMAXはなんだかいいんですよ。そりゃ最新のGTレーザー方式ではないのですが、スクリーンのデカさはなかなかのもの。今年20年ということはIMAXの映写機のリース期限が来るのとちゃうかな?新しい機材をリースし直すのかIMAX方式をやめちゃうのか?ここが万が一IMAXやめると最寄りのIMAX劇場はイオンシネマ四条畷かTOHOシネマズ西宮OSということになるんですよね。両方ちょっと遠いのよねぇ。それはなんとか避けてもらいたい。

まあ、そんな節目な年だけにここのIMAX劇場もちゃんと使っておかなかきゃね。

ってことで大好きな映画館のひとつ、TOHOシネマズなんばにいざ出陣。

さすがに恋愛物をIMAXで観る需要が無いためか劇場は封切り週なのにお客さんの入りは5割以下でした・・・。

もっと女性に偏っているのかと思ったら男4女6ぐらい。これもIMAXだからなのかな?

 

さあ、いざ本編が始まったらキコキコという音とともに喘ぎ声が!?

おやおやと思ったらなんと絞首刑になった男の死の間際の息遣いというオチ。どうやらその最後の瞬間に彼の股間は勃起してしまっている。取り囲んだ観衆はそれを嫌悪しながらも彼の死を楽しみながら観ていて、なんなら絞首刑の人形までグッズとして売られている始末。

理性的にふるまおうとする人間の奥底にある誰にも共通する粗暴な本能を描く彼女の映画そのものをこのシーンで自ら暴き出しているように見えます。

いざ物語が始まるとうっすら覚えていたあらすじとは全く違う人物相関図で話は進展。主要なキャラクターであるキャサリンとヒースクリフが愛憎劇を展開するという筋以外はほとんど違う人物相関になっているという思いきりの良さ。そういえば日本の源氏物語もこういう感じの作品あったよな。えげつないドロドロの宮廷愛憎劇になってたやつ。でもね、これでいいんだと思います。古典的作品はいまほど商業主義で作られてない上に金持ちの暇つぶしエンタメの需要で作られたものなので、無駄に長いんですよね。

エメラルド・フェネルは自分の作風の源流的存在である『嵐が丘』を今の感性で紡いで、作品のもつパッションを現代人に伝えようとしているのだと思います。

だから原作にあったような子供の世代に引き継ぐような絵巻物のような時間の過ぎ方をやめています。これも源氏物語で光源氏の世代で描くのをやめるやり方に似ています。

あと確か原作には当然のように出てきた幽霊も出てきません。

かわりに描かれるのは荒涼とした岩場と草原が続く大地と岩がむき出しの大きな崖での二人のやりとり。

そしてヒース・クリフを演じるジェイコブ・エロルディの魅力が画面から噴き出してくるような見事なショットの数々。

更にはマーゴット・ロビー演じるキャサリンの印象的なドレスが画面に異様なまでの鮮烈さを与えます。

ギレルモ・デル・トロが『フランケンシュタイン』を撮って自らの”怪物”への偏愛の原点を描いたように、本作ではエメラルド・フェネルが”欲望と復讐が渦巻く物語”の原点である『嵐が丘』を撮ったのは必然的なことだと思います。

『政治的正しさ』とか『誰しもに有効な意匠』によって正しい芸術を通して世の中を変えようとするあまり、いつの間にか中世の絵画のように平面的で凡庸になりつつあったハリウッド。そんな中、「欲望」や「劣情」をありのままに活写する方向の作品を世に送り出した20年代のハリウッドのルネッサンスの旗手である彼女の新作は、人々が目をそむけたくなるほどの露骨な表現を通じて表現の自由を映画に取り戻す道をさらに突き進む”宣言”のような作品でした。

 

映画館ではコメディと同じくらいラブストーリーもいまやマイナーなジャンルになってしまいました。

その死にかけた恋愛映画の前途に立ち憚る大きな壁をぶちこわそうとする彼女の挑戦は私は見事に成功していると思います。