『アメリカン・フィクション』 | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

監督 コード・ジェファーソン

ジャンル ドラマ コメディ

出演 ジェフリー・ライト トレイシー・エリス・ロス ジョン・オーティス エリカ・アレクサンダー レスリー・アガムズ アダム・ブロディ キース・デヴィッド イッサ・レイ スターリング・K・ブラウン


鑑賞方法  自宅にて動画配信を視聴

日本では劇場公開は見送られて配信スルーでのリリース。アマゾン傘下のMGM社作品なので、アマゾンプライム独占配信です。

コメディ作品はどうにも劇場未公開となることが多いので慣れっこといえばそうなのですが、観客に「ここ笑ってしまったらあなたも劇中のバカなヤツと同類ですよ」という踏み絵をバンバン仕掛けてくるタイプの米国産コメディは日本では受けないんですよね。

観る側は常に演者の対岸にいて、いじる側に「ひどいヤツだ」と断罪しながらも、いじられる側も”おいしい”なんて免罪符でどんどん道化となり貶められるのが現在の日本の「お笑い」。

こんなお笑いは社会風刺でも何でもないコロッセオの闘技場での見世物の決闘のような晒しもの暴力みたいなものだからやめて欲しいんだけどなぁ。

まあ、そんな日本ではこういう作品は映画館では観られないのでやむなく動画配信にて鑑賞。

個人的にはウディ・アレン監督作がすごく好きなので、本作もメチャクチャ楽しめました。

ウディ・アレンは徹底的にユダヤ人をネタに観客にガンガン”笑ってはいけないけど笑ってしまう”毒矢を放ってきますが、この作品ではコード・ジェファーソン監督が黒人ネタでそれを仕掛けてきます。それに加えて恋愛あり、家族人情あり、と丁寧にストーリーが編み上げてあって最後までエモーショナルな演出も見事で本当に楽しい映画でした。

それにしても売れない黒人作家が、ヤケクソになっていかにも”黒人らしい”、スタッグ・R・リーという逃走犯になりすまして小説を書いたらベストセラーになり映画化までされるというのは面白い筋書き。日本でも”現役女子高生が難病に苦しむシングルマザーのケアをしながら書き上げた実体験に基づく小説”とか”出稼ぎで国から出てきたベトナム青年がヤクの売人として逮捕され服役しながら書いた小説”とかいう感じで売りこめば需要ありそうですからね。

 

近年コメディ映画は米国外での数字が見込めないこともあってか、かなり作品数が少なくなってしまっています。そんな中、こんなにステキな皮肉たっぷりのコメディを作ってくれたコード・ジェファーソン監督とその機会を作ってくれたアマゾンに感謝です。

配信各社による囲い込みは好ましくないのですが、その一方でこうした作品を作ることが出来るのは映画事業が本業ではないアマゾンやアップルがお金を出してくれる今の状況のおかげ。

豊かな芸術とはパトロンあってのものというのは中世から変わらない事実で、今は映画芸術ではGAFAが最大のパトロンとなりつつあります。