毎年その年に流行る音楽を予測してみるこの試み。
昨年はシンセポップ・サウンドへの偏りが、80年代末~90年代初頭のユーロハウスのサウンドのリバイバルといよいよ結びつきを深め、まさにハウス・ミュージックの再来を感じさせました。
一方、ロックの世界では、パール・ジャムのアルバムのヒットなどいよいよオルタナ再評価に向けた地殻変動が本格化してきています。
今年も20年前、40年前のヒットを振り返りながら、2010年のトレンドを勝手に予測してみます。
1970年
A:横軸(流行の拡がり)
"I Want You Back"Jackson 5
モータウンより突如現れたジャクソン5。歌って踊れるスター、マイケル・ジャクソンが音楽界に登場。
"Bridge Over Troubled Water"Simon & Garfunkel
60年代を通じて、フォークの精神性を身に纏うに至ったロック音楽。やがてポップ音楽そのものにも影響を与え、流行音楽として、ロックの存在を不可欠のものとしました。そして、1970年はその融合が一度大きな節目を迎えることをだれもが予測しているかのように、1960年代を締めくくるような壮大な曲がヒットしました。
"Let It Be"Beatles
ビートルズはこの曲を含む同タイトルアルバムを最後にロック史から消えてしまいました。1960年代の終焉を象徴する名曲です。
B:縦軸(芸術性の高さ)
"Whole Lotta Love"Led Zeppelin
ブルースに根差したロック・サウンドは、ハード・ロックなる音楽の礎となりました。
"Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine"James Brown
ブーツィー・コリンズやメイシオ・パーカーをバンド・メンバーに迎えていた当時のジェイムズ・ブラウンはもはやブラック・ミュージックの域を超えた、芸術的な域にまでファンク・ミュージックを昇華しました。
この新しい音楽は70年代を通じてソウル・ミュージックの新しいフォーマットとして数多くのブラック・アーティストによって模倣され、やがて白人も巻き込んだディスコ・ミュージックのブームに繋がっていきました。
"Lola"Kinks
この曲の持つ独特の高揚感には聴くたび惹きつけられます。
C:奥行き(流行音楽の深さ)
"Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin) "Sly & the Family Stone
ファンク・ミュージックはこの曲で披露されたチョッパー・ベース奏法によって全く新しい躍動感を曲に吹き込むことで急速に進化してゆきました。
"Woodstock"Crosby, Stills, Nash & Young
まさに時代を切り開く天才4人の集合体によるスリリングなサウンド。
荒削りでありながら美しい。
"Lookin' Out My Back Door"Creedence Clearwater Revival
北部の都会的な洗練された音楽とは全く違う音楽が、一気に再評価の流れに乗りました。埃まみれの泥臭い音楽。荒削りな音楽。変わらない音楽。
1990年
A:横軸(流行の拡がり)
"Vogue"Madonna
ハウスの流行もいよいよ本格的に。ハウスの発祥元であるゲイ・カルチャーにも手を届かせるクールなサウンドをリリース。
"Vision of Love"Mariah Carey
90年代を象徴する歌姫、マライアがこの曲でデビュー。ジャジーで大人びたサウンドに信じられない声域で歌いあげられる本格派のニュー・ディーヴァの登場にシーンが揺れました。
"Justify My Love"Madonna
レニー・クラヴィッツのプロデュースによる前衛的とさえ言える過激な一曲。
ハウスの先を行くエキセントリックなサウンド。
B:縦軸(芸術性の高さ)
"Free Fallin' "Tom Petty
80年代の喧噪から抜け出して、素朴なサウンドが求められつつある時代の要請もあってトム・ペティが評価され始めました。
"Been Caught Stealing"Jane's Addiction
レッチリらと並び称される、90年代ロックのパイオニア。いわゆるオルタナ・ロックの誕生は彼らの存在無しには語れません。
"Enjoy the Silence"Depeche Mode
シンセ・ポップが退潮してゆく中、そのサウンドを研ぎ澄ませ続けた彼ら。
結果としてデジタル・ロックの進化に大きな役割を果たしました。
C:奥行き(流行音楽の深さ)
"Nothing Compares 2 U"Sinead O'Conner
英国のクラブ・シーンから登場し、話題をさらったネリー・フーパーの助力もあり、プリンスの曲がすっかり生まれ変わっています。
"U Can't Touch This"MC Hammer
ヒップホップが本来持っていたダンス・ミュージックとしての性質を引き出し切った楽曲。
ハマーのダンスにも世界中が注目。ビデオも空前のヒットを記録。
"Groove is in the Heart"Deee-Lite
ハウス・ミュージックが様々な方法でポップ・ミュージックと接点を持ち始めた90年、こういったごった煮のクラブ志向のサウンドも大きなヒットを記録。
このように、70年、90年は音楽史を語る上で、非常に重要な転機を迎えた年でした。
総まとめと新しい試み、これが混在する時代の交差点。
2010年はこれまた時代の転換を象徴する年になることは宿命といえるでしょう。
いまのエレクトロ・ブームはハウス・ミュージックへと舵を切っていることから、ついにブームに終焉がくることは間違いないでしょう。人懐っこいサウンドであることから、一定の人気は保つものの、もはやポップ・ミュージックの最先端のトレンドとしての役割は終わるものと思われます。
さて実際はどうなることやら・・・
70年代はファンク、サザン・ロック、90年代はハウス・ヒップホップ、オルタナ・ロックという新しい”風”が吹いたわけですが、10年代は、どういう”風”が吹くのか?