
『Thriller』Michael Jackson (Epic)1982
『スリラー』はR&Bの世界はもちろん、ポップ・ミュージック全体を見渡してもその功績が長い歴史の頂点にあるアルバムです。
偉大すぎてその価値がわからなくなるくらいですが、音楽を聴くだれもが一度は耳にするべき音楽であり、そして誰もが興奮と感動を得られる不思議な作品です。
1890年に商業化された録音音楽というものが、初めて大衆に”ヒット曲”として認知されたのは"The Laughing Song"という1891年の作品。これは、蓄音器を発明したエジソンがスタッテン島のフェリーで見出した元奴隷だった黒人、George Washington Johnsonに吹き込ませた曲とのこと。
それから100年近く経ったとき、米国は再び黒い肌の音楽の天使を迎え、私たちは音楽の持つ力の偉大さを目の当たりにしました。
"Wanna Be Startin' Somethin' "
アルバムの冒頭はいかにもマイケルの作品らしいパーカッシヴな楽曲。当時ニューウェーヴの興隆とともに盛り上がりつつあったワールド・ミュージックの流行を先取りするようなアフリカンな味付けが見事。そしてこの曲をきちんとブラコン作品としてつなぎとめるクインシー・ジョーンズや豪華すぎる演奏部隊の超人的な仕事。
"Baby Be Mine"
前作『Off the Wall』でも相性の良かったロッド・テンパートンのペンによる作品。このアルバム中で私が一番好きな曲です。
"Thriller"
これもロッド・テンパートンのペンによるナンバー。
一糸乱れぬ演奏部隊の活躍もあって、まるで機械が演奏しているかのようなタイトなサウンド。
分類上ポップ・ミュージックのカテゴリーに入っていますが、内容としては完全にジャズやクラシックの名盤と変わりありません。
"Beat It"
マイケルの作曲家としての成長を感じ取れる曲。かなりのロック志向は彼のこの分野での成功をも目指す熱い志を感じます。間奏でのエディ・ヴァン・ヘイレンのギターソロももはや世界一有名なフレーズの一つ。
近年Fall Out Boyも非常によく出来たカバーを披露して大ヒットしました。
"Billie Jean"
"Beat It"と同じくマイケルの成長を感じ取れる彼のペンによるナンバー。歌詞の内容も非常に面白く、一流どころとのコラボによって彼の才能がみるみる膨らんでいく様がわかります。
あり得ない才能と、あり得ない人脈と、あり得ない大金がつぎ込まれた、ハリウッド黄金期の映画並みの規模の大作です。