ジャケ借り!!! その③-2 | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

ポップ・ミュージックのトリコ-Viva la Vida or Death and All His Friends

2009年5-6月選
『Viva la Vida or Death and All His Friends』Coldplay

6月17日レンタル解禁作。
美術の授業で多くの人が目にしたことのある、ドラクロワの有名な絵画を使用したアートワーク。この絵画に負けない魅力が詰まった一枚です。

コールドプレイは、前回の”ジャケ借り!!!”で取り上げたレオナ・ルイスと同じく英国出身。印税を集計する組織 PRS for Music によると、英国アーティストは2008年に海外で1億3960万ポンド(約209億円)の収益を上げ、2007年より2000ポンド(約30億円)も多いとのこと。海外での印税は1999年以来、6800万ポンドから1億3960万ポンドと2倍にも増えたそうです。10年で2倍・・・。まさにクール・ブリティッシュを象徴する数字です。英国音楽は、2007年にはゲーム市場に売上金額で抜かれるという事態になり、もはや日本・米国同様、エンターテインメントの王座にはないのですが、こうして世界規模での展開を武器に力を蓄えようとしています。

さてそんな英国の誇る現在のトップアーティストといえばこのコールドプレイも外すことはできない存在になっています。クリス・マーティンのファルセットを活かした繊細な表現を得意とするヴォーカルを中心に、ロックと言えど、非常に内省的な表現も可能にしているし、曲想もアレンジもさまざまな過去~現在のアーティストの影響を受けながらも、うまくバンドの中に取り込む、いわばDJ的センスを持った、全く新しいアーティストのタイプ。それだけにヒップホップ系のアーティストからの礼賛も多く、ティンバランドもその信者のひとり。
今回は英国の誇る重鎮のプロデューサー、ブライアン・イーノを迎えての制作。

"Life in Technicolor"
アルバム冒頭はこのインスト・ナンバーからスタート。まさにコールドプレイらしい繊細さとブライアン・イーノの幻想的な音色が融合した、このアルバムのオープニングにふさわしいナンバー。前作『X&Y』をU2の米国進出作『ヨシュア・トゥリー』になぞらえ、かれらはかつてU2の歩んだ道を突き進んで、まさに新しいロックスターの座に向かっていると書いたことがあります。そしてそこで感じたことは、まさにその2作のサウンドの類似でした。ブライアン・イーノがプロデュースしていた『ヨシュア・トゥリー』。音の向こう側から湧き上がってくる瑞々しいエコー感のあるシンセの音色。これを見事に自分たちのサウンドに独自の解釈で取り込んだのが『X&Y』でした。
そして彼ら通算4枚目のアルバムで、その当の本人を迎えての制作。かつてビートルズがフィル・スペクターのサウンドに憧れ、目標にしていた末に『レット・イット・ビー』で遂にプロデューサーとして雇ったことにどことなく似たエピソードです。

"Cemeteries of London"
このアルバムで特にお気に入りの曲です。今回のアルバム制作では、ブライアン・イーノからファルセットを禁止されたというクリス・マーティン。それはこのアルバムに、これまでの彼らにないほど男性的な作風をもたらしています。これまでのコールドプレイの作品にあった静かで緻密なサウンドとブライアン・イーノの緻密ながら輪郭を溶かした音色の融合は、こういう静かな作品ではマイルドに仕上がりすぎますが、クリスがファルセットを極力使わないことにより、曲に隠れていた”静かなる怒り”が浮き彫りになり、聴く者に情念の塊を感じさせる深い味わいをもたらします。

"Viva la Vida"
中学生の英語の授業にさえ使えそうな平易な英語を使いながら、非常に含蓄のある詞世界。
ヴァイオリンの音を使用し、非常にドラマティックな力強い曲。
曲単体でも、初の全米1位を獲得し、間違いなく彼らの代表曲となりました。
i-PodのCMで使われ日本でも人気の高い曲です。

"Violet Hill"
PVは2種あるのですが、テレビでは放送できないこのバージョンでリンクを付けます。
ブルージーなサビのフレーズとタイコの連打の音が頭に残る作品。”静”と”動”が代わる代わる繰り返されるうちに、寄せては返す波にさらわれるようにこの曲に呑まれてゆきます。


さて、ロンドン五輪まであと3年。五輪は開催地に商業的な発展をもたらすことは有名ですが、カルチャー・エンターテインメントの世界にも大きな影響をもたらします。音楽でも特に1984年前後のロスアンジェルス(LAメタルなど)、1996年前後のアトランタ(サウス系ヒップホップなど)と米国では特にその傾向が顕著です。
英国も、”クール・ブリティッシュ”のさらなる躍進は確実で、今後ますます目が離せません。


このところ、解禁間もないタイトルの紹介が続きます。全品貸出し中の際はあしからず・・・。