『Paper Trail』T.I. | ポップ・ミュージックのトリコ

ポップ・ミュージックのトリコ

流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。


Papertrail
頂点から谷底への挫折を味わった男ならではの深みが、このアルバムを特別な物にしています。

このアルバムのジャケットのように、収録曲は一見、シングル候補曲の寄せ集めのようにも見えます。しかし下手にコンセプチュアルなものにしていない分、最初は気付かないのですが、よくよく聴けば、これらの曲がしっかりとこのアルバムを形作っているパズルのピースのような役割を担っていて、T.I.という人物のあらゆる側面を浮き彫りにしています。何と言っても、芸達者。ラップのセンスが一流なのは当たり前として、エンターテイナーとして、類稀なる才能があります。


"No Matter What "

彼の独白。こんなものをシングルカットするところがいかにも現在の彼の状況を物語っています。彼は確実に来年1年間、刑務所に服役するわけですが、「こんなことで絶対終らない」という強い決意を感じます。


"Whatever You Like "

何しろT.I.自身がレコーディング段階で1位を確信したという、音楽の神が降り立った軌跡の一曲。こういう話って結構昔からあって、たとえばビートルズの"She Loves You"とかジョン・レノンの"Whatever Gets You Thru the Night"とか、似たようなエピソードはありますが、やはり音楽の神は存在しているのでしょう。


"Swagger Like Us "

アルバム一枚にせいぜい一曲でも奇跡の一曲が入っていれば特別なものになるというのに、このアルバムにはもう一つ、奇跡が埋め込まれています。ジェイZに、リル・ウェインにカニエ・ウェスト。一体この4人で、どれだけのヒット曲を出しているでしょう?もちろん全員、全米1位の獲得を経験済み。それがこの奇想天外なトラックでマイクリレーを展開するのですから、面白くないわけがありません。


"Live Your Life "

そしてこんな曲まで入っているのです。最近のヒップホップのアルバムで、こんなに聴くのが楽しいアルバムがあったでしょうか?


ビートルズのアルバムで例えると、内容は『マジカル・ミステリー・ツアー』に近いものだと思います。前作『T.I. vs T.I.P.』ほどコンセプチュアルではないものの、サイケデリックな面白みなど、作品トータルで見た面白さは絶妙。

だから、『サージェント・ペパーズ』のあと、という味わいがちょうど良い表現かなあ、と。

そして、ラップアルバムの歴史的意味合いから言えば、2パックの『All Eyez on Me』に比肩するものと思います。

2008年は、この1枚のリリースだけでも、大きな歴史の1ページに記録されることになるでしょう。