ノーマン・ホイットフィールド逝く | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。


Norman Jesse Whitfield

ここのところ、大物の訃報が続いていますが、またもや巨星が落ちました・・・。

その名は、ノーマン・ホイットフィールド。


ロックの進化が急速に進む中、ブラック・ミュージック側からのその変化に対する回答ともいえた一連の改革の中心でもあった彼。それまでのモータウン・ミュージックの持っていた、ヒット曲工場の文化をぶち壊すきっかけとなった男でもあるわけですが、そのすぐあとに訪れたニュー・ソウルとの時代にはさまれ、あまり大きく功績を賞賛されていないように感じます。


彼のプロデュース・ワークを代表的なヒット曲をもとに振り返ります。


"Beauty is Only Skin Deep "Temptations('66)

まだまだ彼らしい意匠は薄くて、モータウンの公式から外れないスイートな一曲です。最高3位。


"I Heard It Through the Grapevine "Gladys Knight & the Pips('67)

グラディス・ナイトの魅力が詰まった一曲。モータウンという枠に収まりきらない魅力で、全米2位に輝きます。


"I Heard It Through the Grapevine "Marvin Gaye('68)

普通全米2位にでもなれば手放しで喜ぶところですが、ノーマン・ホイットフィールドは、よほどこの曲を気に入っていたらしく、マーヴィン・ゲイの復活プロジェクトという大きな舞台でこの曲を候補に挙げます。もちろん周りには反対されたようですが、これが1位に輝くことに。執念のヒット。しかもモータウンが60年代に出したヒットの中でも最大のものに。ノーマン。ホイットフィールドがこの後モータウンの中で、確固たる地位を得ることになりました。


"Too Busy Thinking About My Baby "Marvin Gaye('69)

60年代のマーヴィン・ゲイの曲の中で、個人的に一番好きなのはこの曲だったりします。甘~いソウルの薫りはモータウンの伝統そのままに、仰々しいまでのオーケストラがドラマチックに盛り上げていく感じはいかにもノーマン・ホイットフィールドの魔法がかかっています。


"I Can't Get Next to You "Temptations('69)

ノーマン・ホイットフィールドが時代の寵児になろうとしていた頃、音楽の世界は、まさに大変革の真っ只中でした。ソウル・ミュージックという枠組みももはやポップ・ミュージックという世界全体の変革の中、新しい表現を求められており、その期待を上回るべく、新しい音を生み出していくという大役を負うことになります。

この曲なんかもその意気込みや緊張感が曲に溢れています。もちろん全米1位。


"Ball of Confusion (That's What the World is Today) "Temptations('70)

強靭なビートはさらに進化を続け、ロック顔負けのハードなものに。全米3位。


"War "Edwin Starr"('70)

もはやファンク・ミュージックともいえる音。日本でも有名な曲ですよね。全米1位。


"Smiling Faces Sometimes "Undisputed Truth('71)

ノーマン・ホイットフィールドは、だんだんと作風を自ら進化させていきます。この静かな緊張感の演出の仕方は、いかにも70年代の空気感をつかんだものです。全米3位。


"Just My Imagination (Running away with Me) "Temptations('71)

耳元で囁くような、あまりに繊細なヴォーカルで始まるスイートな一曲。彼らしいドラマティックなストリングス使いで、夢の中の世界へ引き込まれてしまいます。全米1位。


"Papa was a Rollin' Stone "Temptations('72)

オトナのためのポップソング、という切り口でここでも一度紹介したことのある作品です。この繰り返されるグルーブこそがこの曲の真髄。そこにアクロバティックに飛び込んでくるヴォーカル陣。わさびとかのようにコドモには分からない味わいの世界です。全米1位。


"Car Wash "Rose Royce('76)

表舞台から遠ざかっていたノーマン・ホイットフィールドが沈黙を破って帰って来たのは映画の主題歌でした。この映画自体も、非常に良く出来たブラック・ムーヴィーなのですが、この曲なしには成り立ちません。勿論全米1位。


私が生き続けるかぎり、私は彼のサウンドを聴き続けることになるでしょう。

彼のサウンドはよく”サイケデリック・ソウル”として紹介されます。そして今、カニエ・ウェストを筆頭に、ブラック・ミュージックはかつてないほど、ブラック・ミュージックの枠組みを越え、まさにサイケデリックとでも言うべきサウンドへと進化しています。この状況を見て、ノーマン・ホイットフィールドはようやく60年代末に背負った重荷を下ろすことができたのではないでしょうか。1940年生まれといいますから、まだまだ若かったわけですが・・・。


私の人生をより豊かにしてくれた彼。心からご冥福をお祈りします。