現在まで賃貸・売買の様々な仲介を行なってきましたが、契約書の作成はこちらで作成する場合と、もう1社の仲介業者である別の不動産業者が作成する場合とケースバイケースですが、私が仲介で関わった契約の契約書では借り主に一方的に不利な契約書はほとんど見たことがありません。
しかし、知人が借りているマンションの契約書を見せてもらったりしたものでは、とんでもない条項や特約が書かれている契約書もありました。
一般的な賃貸借の契約書は、そのアパートやマンションによって決まったフォームがあり、借り主はその契約書に対して説明を受け、よくわからない部分もあるまま契約を締結する場合もあります。
不動産業者や貸し主と違い、借り主は一生のうち数えるほどしか引っ越しをしないで、普通はその時にしか賃貸借の契約に関わらないので、漠然としか理解できない人もいるのは当然のことです。
そこで借り主に一方的に不利な条項や特約が書かれていて、変更の要望や借り主側の主張を伝えても、なんとなくごまかされたように説明をされて曖昧なまま納得させられるケースも多いと思います![]()
今回ご紹介する判例は、借り主に一方的に不利な特約が定められていたのですが、その内容を貸し主側が十分に説明をせず、借り主がその条件を十分に理解して自由意志に基づく同意をしたと認められず、無効とされた事例をご紹介します。
借り主Xは、平成16年3月に賃貸借契約を解約し、明け渡しましたが、その契約書には下記の特約が書かれていました。
1、原状回復特約:借り主が原則として修繕及び修理等の費用を負担する。
2、損害金特約:貸し主が、借り主による原状回復義務履行を確認した日をもって明け渡し日とする。明け渡し日まで借り主は賃料の倍額相当の損害金を支払う。
1の特約も借り主に一方的に不利な特約だと思いますが、2の特約はもっとひどいです。
借り主が、「○月の末で解約をします」と伝え、解約日に部屋を空っぽにして明け渡したとしても、1の特約に基づく修理、修繕が完了するまでは明け渡したと認められず、修繕・修理が終わるまでは今までの家賃の倍額の損害金を支払う、という内容です。
この特約だと、ほぼ100%の人が損害金を払わなければいけなくなる=つまり敷金が全額戻ってこなくなるのではないでしょうか?
貸し主であるYは、この特約を根拠として借り主Xが預け入れた敷金の返還を拒絶したため、借り主Xはその返還を請求する訴えを起こしました。
裁判所の判断は、下記のように述べて借り主Xの請求を認めました。
1、この賃貸借契約における原状回復特約は、借り主の故意・過失あるいは通常でない使用方法による汚損、破損についての修繕を義務付けたものと理解されるので、時間の経過及び通常の使用によって生じる自然損耗についてまで借り主が修繕し、契約を行なった当初の原状に回復すべき義務を定めたものと理解することはできない。
2、また、この損害金特約のように、社会一般に通常行なわれている賃貸借契約に比べて、借り主に特に義務を負担させる条項が有効であるためには、借り主に対してその義務の内容について説明がなされて、借り主がその義務を十分に理解し、自由な意思に基づいた同意をしたことが必要である。
本件賃貸借契約においてそのような事情を認めることができず、本件損害金特約は無効である。
これは当然の判決と理由だと思います。
この判例は、消費者契約法が施行されてから約4年後のものですが、その当時より今は消費者契約法がもっと一般的に知られているようになっています。
賃貸でアパート・マンションに住んでいる人は、改めて自分の契約書を読んでみて、借り主に一方的に不利な条項が書いてあり、解約の時にその条項を元に不当な請求などをされた場合には、自信をもって拒否し、敷金の返還がされずに話し合いで解決しない場合には、都道府県の相談機関、消費者センターなどにまず相談をしてみてください。

