一般的には、賃借物件の明け渡しについては、室内の物品をすべて搬出し、鍵を貸し主に返還した時点で完了と理解されるケースが多いと思います。
しかし、契約書に「室内の物品を搬出し、鍵を貸し主に返還した後、原状回復工事の完了をもって明け渡しとする」という条項が契約書に記載されている場合もあります。
先日、キャリープロで原状回復サポートを行なった物件も、まさにその条項が書かれており、少々驚きましたが、たまたま物品の搬出完了から原状回復の工事まで日数的に余裕があったために問題なく解約が完了しましたが、日数的に余裕が無い場合には日割りの家賃を支払う義務があるのでしょうか?
≪事例紹介≫
借り主Xさんと、貸し主Yさんとの間で、月額賃料102,000円、敷金660,000円の条件で賃貸借契約を締結し、約3年後に当物件を合意解約し、借り主Xさんは明け渡しました。
貸し主のYさんは、返還する敷金から、修繕・原状回復工事に掛かった費用と、明け渡しから工事完了までの日割り賃料を差し引いたため、借り主Xさんは控除した敷金の返還を貸し主Yさんに請求する訴えを起こしました。
≪裁判所の判断≫
次のように述べて、借り主Xさんの請求を一部認めました。
借り主は物件の明け渡し後、同物件を使用しておらず、貸し主が主張する日割り賃料を支払うべき義務はなく、貸し主の主張する日割り家賃を控除することは許されない。
敷金から控除できる原状回復等の費用は、借り主の責任による行為によって工事を必要とするものであったにしても、慣行として認められているものに限定されていると理解するのが相当である。
本件の賃貸借契約は、借り主の退去時に畳表及び襖紙の取替えをするものとされており、この点は慣行として認められていると理解するのが相当であり、その費用67,830円は敷金から控除されるべきである。
■契約書に書かれている“明け渡し完了”の定義をチェックしておきましょう。
一般的には、賃借物件を解約する場合に、貸し主への通知が1ヶ月前ならば、通知後1ヶ月以内に室内の物品をすべて搬出し、通常の清掃を行ない、物件の鍵を貸し主に返還した時点で明け渡しが完了というケースが多いですが、“原状回復の工事完了後に明け渡しが完了する” と契約書に書かれている場合も稀にあります。
月末に解約をする場合には、それに合わせて引っ越しをし、新しい物件の契約もそれに合わせて行なうことが多いですが、引っ越しをした後でも原状回復工事が完了しない間は日割り家賃を請求されるとなると、賃料の二重払いの期間が多くなり、無駄な費用が発生してしまいます。
上記の事例では、引っ越し後に部屋を一切使用していないために、裁判所の判断は日割りの賃料を払う義務は無いということでしたので、裁判に発展した場合には支払う義務は無いと判決が出される可能性が高いと思います。
しかし、裁判を行なうには労力、時間、費用の面で負担を強いられます。
原状回復の工事は、通常は半月ほど日数を要しますので、契約書に原状回復工事が完了後に明け渡しが完了する旨書かれている場合には、その分の賃料を請求されてしまう恐れがあります。
解約時に契約内容を初めて知って焦らないようにし、無駄な労力を使わないためにも、前もって契約書に書かれている“明け渡し完了の定義”をきちんと確認しておくようにしましょう。





