① 立憲がアルゼンチンを目指している
② 部門間収支とは?「政府の赤字はみんなの黒字」
③ 実際の部門間収支のグラフ(日銀資料)
④ 経済学における部門間収支(注釈)

今回の記事は特に立憲支持者の皆さんに読んでほしいと思う。
といってもエリート主義の彼らが底辺ミュージシャンの私の文章を読むとも思えないが、立憲は本当にヤバい考えを持っているので、ぜひ彼ら議員に「それは致命的な誤りですよ」と忠告してあげてほしいのだ。
 

 

① 立憲がアルゼンチンを目指している

 

昨日、立憲の公式がこんなポストをあげ、長妻氏の「現下の情勢を踏まえれば、財政健全化の指標はPBではなく、利払い費を含む財政収支を用いることなどを検討すべき」との談話を掲示していた。

 


本当に頭が痛い。
PB(プライマリーバランス)とは、利払い費を除いた財政収支のことだが、2025年にこのPB黒字を達成したら次は利払い費含む財政黒字に目標を定めるとのコンセンサスが財務省内にあるとの噂(三橋氏ら)も聞こえる。

これは立憲執行部が財務官僚に洗脳されてることを物語るんじゃないだろうか。

財務官僚がいかに詐欺的テクニックをもちいようとも、「財政黒字」は絶対に目指してはダメなものだ。

緊縮財政により財政黒字を成し遂げたアルゼンチンは、4四半期連続でマイナス成長今期はGDP-5.1%となった。

 


世界的に権威のある国際機関のIMFが絶賛してるんだからそれは正しいことなんじゃないの?と考える人もいるかもしれないが、IMFは悪の結社と呼んでも良いくらいひどい組織だ。

 

ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツは、「アメリカと銀行家たちが、IMFを通じてグローバルサウスをドル負債の返済地獄に陥らせ支配している」というロジックを、世界銀行・副総裁の立場から証明している。上記記事ではそのことを彼の著書から引用し示している。

「財政を黒字にしろ」なんていうのは、IMFの言うことはおためごかしというか、貧困国を破綻させるための悪魔の誘惑に過ぎない。

 

 

② 部門間収支とは?「政府の赤字はみんなの黒字」

 

さて、「財政黒字を目指す」ことがいかに狂ったことなのか、簡単に説明したい。

政府収支 + 民間収支 + 海外収支 = 0

これは誰にも覆せない事実だ。
これを部門間収支(貯蓄投資バランス)と呼ぶ。
上記の政府収支とは歳出と歳入のバランスのことで、民間収支は私たち民間の経済のことだ。
海外収支は実際は経常収支のことだが、ここでは便宜上わかりやすく「海外収支」とした。

部門間収支を踏まえると、現在の日本はだいたいこんな感じになる。

政府収支(赤字:-5) + 民間収支(黒字:+10) + 海外収支(赤字:-5) = 0

三つの部門が全て黒字になることは絶対にない。
なぜならあらゆる経済主体の相対的関係は、他者との貸し借りによって存在しているからだ。*文末[脚注1]参照

いっぽう現在のアルゼンチンはこうなっている。(*細かい数字は捨象)

政府収支(黒字) + 民間収支(赤字) + 海外収支(黒字) = 0

政府収支と海外収支が黒字なら民間収支(企業や家計)は赤字になるほかない
これが何を意味するのか?
政府が支出を絞ったので民間に流れるお金が減り人々が赤字になったということだ。
結果、実質DGDPは4半期連続でマイナス。今期は-5.1%だった。

 

 

さて、立憲民主党や財務省は財政黒字を目指しているが、そうすると、民間収支はどうなるだろうか?

政府収支(+10) + 民間収支(-5) + 海外収支(-5) = 0

分かりやすく表記するとこんな感じになる。
財政黒字になると民間は必ず赤字になるのだ。
これはアルゼンチンのようにGDPが減り大不況になることを意味する。

逆に言うと、民間の我々が黒字になるためには、政府が赤字を出すしかない
「政府の赤字はみんなの黒字」である。


なお、部門間の収支バランスがゼロになる経済学的な説明は文末[*脚注2]に記した。

 

 

③ 実際の部門間収支のグラフ(日銀資料)

 

では実際の日本経済がどうなっているのか、日銀資料を見てみよう。
 *民間収支は、民間非金融部門(一般企業のこと)と家計に分かれる。


出所:ニッセイ基礎研究所(黒線などは筆者が加筆)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77962?site=nli

 

赤い線(家計収支)と緑の線(政府収支)がほぼほぼ連動(強い負の相関)していることが見て取れる。
2020年の茶色の囲いは、コロナ禍で給付金やゼロゼロ融資などで政府支出が爆増し(収支的には赤字)、家計の貯蓄が増えたというシーンだ。

若干のズレがあるがバランス式はだいたい[政府収支(-20) + 民間収支(企業-1,家計+22)+ 海外収支(-1) = 0]となる。

さらに茶色の矢印を見ると、20年以降、コロナ禍で増えた赤字を徐々に絞っていっている様が伺える。23年末には二度、ほぼ±0付近まで緊縮財政を進めている。
その結果、家計の収支がとうとうマイナスになっているのだ。
日本の場合は支出削減もその理由だが、増税や高い税率も原因となる。過剰に税を召し上げ家計からお金を搾り取っているのだ。

▼23年度の国の税収、70兆円超へ 2年連続で大台突破 企業の業績好調で
2024/6/24
https://www.sankei.com/article/20240624-4AFWITSUIBOJNI3R6WMGVWZB2A/

税収が二年連続で過去最高だと浮かれている場合ではない。これはただの悲劇だ。


財務省と立憲民主党は、緊縮財政を講じ税を搾り取ることを通じ民間経済を破壊することで財政を黒字にしようとしている。

上掲した日銀図に戻ろう。
結局、現在は「財政黒字を目指す!」という愚かな目標のもと政府が赤字支出を減らし続けた結果、とうとう23年第1四半期と第4四半期には家計が赤字に転落している。

財政を黒字にするという意味は、ほぼイコールで家計や企業の収支を赤字にする

日銀図の23年の第一四半期時点の収支を式で表すとこうなる。
(*部門間収支には若干のズレがあるので注意)

政府収支(-2) + 民間収支(企業+6,家計-2) + 海外収支(-2) = 0

これが財務省や立憲民主党が目指した世界である。
これはアルゼンチン型の破滅に向かう経済だ。


財政黒字を目指すことは悪事である。
統一教会が信者からお布施を毟り取り、韓国に巨大な宮殿のごとき教団施設を建てる行為そのものだ。

立憲の議員は、このような非科学的な信仰ではなくしっかりと科学に依拠してほしい。


ちなみにだが、こちらはよく見る部門間収支(貯蓄投資バランス)のグラフだ。

棒グラフの大きさが0を境に「対」になっていることが可視的に確認できる。
(*この図は年率換算なので、四半期ごとの値が4倍に拡張されている。また海外収支が捨象されている)

少し違う視点で経済を見てみよう。

下図は政府支出、民間消費、実質GDPのグラフだ。

内閣府 国民経済計算(GDP統計)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
四半期GDP成長率(前期比)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2024/qe241_2/tables/ritu-jk2412.csv

なんとなくだが、政府支出が伸びれば民間消費・GDP共に伸びることが確認できるだろう。
コロナ禍は混乱期なのでバタつくが、20年の給付金等の支出で民間支出とGDPが伸びていることもわかる。
20年以降に政府支出を絞っていったので、消費もGDPも落ちていく様がわかる。


自民党政権を倒し、財務省には解体的出直しをはからなければならない。
そのためには、野党第一党である立憲民主党にはカルト信仰から脱してもらわなければならない。

立憲がまともな経済観を持つことを強く願う。


cargo

 

 

④ 経済学における部門間収支(注釈)

 

[*注釈1]
下図は日銀資料より。これが「我が国のお金の流れ」の概観図だ。
どの主体も他者との賃借関係で成り立っている。


https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf


[*注釈2]
「政府部門収支 + 民間部門収支 + 海外部門収支 = 0」
これは、ISバランスとか貯蓄投資バランス、部門間収支などと呼ばれる概念。

国民所得恒等式「Y=C+I+G+(EX-IM)」の右辺を左辺に移項する。

Y-C-I-G+IM-EX = 0

貯蓄Sの定義式(貯蓄は可処分所得から消費を差し引いたものに等しい)「S=(Y-T)-C」を用いて、上の式に代入する。

Y-T-C-I + T-G + IM-EX = 0

(S-I)+(T-G)-(EX-IM) = 0

もしくは(S-I)+(T-G)=(EX-IM)

参考:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%AF%E8%93%84%E6%8A%95%E8%B3%87%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9
https://e-econome.com/macro-economics/47397909/