*この記事はシリーズ「全体主義からの脱獄」の一部となる。他の記事はこちらから。

 

また戦争が始まるかもしれない。
仏国の植民地支配を逃れようとするニジェールに対し、米欧の傀儡と化したナイジェリアなどのECOWAS連合が軍事攻撃を加える模様である。


もうすでに、BBCやCNNなどの大本営メディアが一斉にニジェールの悪口を言いだしている。
大本営が口をそろえて悪口を言うということは、まあそういうことだ。

この件に関してはあまり詳しくないが、いくつかの報道などをヒントに、事態を把握すべくまとめてみたい。

基本的には下記動画の報告を軸に抄訳・まとめを進める。

▼ Niger coup: 78% of people support military government's anti-colonial policies
2023/08/10


フランスに植民地にされた国々

2020年からギニア、マリ、ブルキナファソとクーデターが起こり、つい先日、7月28日にニジェールでもクーデターが起こった。
これらの一連の動きはフランスの「新植民地支配」に対する反乱だ。

クーデターの翌々日にはニジェール市民がフランス大使館を襲撃、マクロンは600人の関係職員を帰国させる。
https://www.youtube.com/watch?v=_YeNxLgvL6A


この地帯はサヘル地帯としても知られる。

選挙では選ばれはしたが、フランスの傀儡と化したバズーム大統領を、ニジェール軍が打倒した。

78%のニジェール国民がクーデターを起こした軍事政権を支持していることから、クーデターも民意を受けてのものだったと見られている。


https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2023/08/07/after-nigers-coup-the-drums-of-war-are-growing-louder

2014年の2月のウクライナと同じようなことが起きたのに、欧米はご都合主義で、ニジェールのクーデターを批判している。


ナイジェリアを主軸とするECOWASが米仏の後押しを受けてニジェールに軍事介入しようとしている。


赤色の国が二ジェールへの軍事介入に反対(周辺国であるチャドやアルジェリアも反対)。青色のナイジェリアらが軍事介入を画策。

ニジェール国民がクーデター政権を支持するのは、彼らが旧宗主国フランスの支配を脱却しようとしているからだ。

マイケル・ハドソン教授の話から学んだように、ニジェールもまた欧米の搾取の対象となってきた。


フランスの電力供給の70%以上が原子力であり、原発を動かすウランの半分以上がニジェール産だ。フランスがニジェールにおける権益を失えば死活問題となる。


ニジェールは世界有数のウラン産出国
https://www.huffpost.com/entry/france-more-worried-about_b_470217

ニジェールは金の産地でもあり、フランスはその金も収奪している。マリ、ブルキナファソも搾取されてきた。

当該三国の輸出品のほとんどが鉱物資源、多くが金。


欧米はアフリカの国々が独立したあとも、天然資源を収奪し続け貧困にさせている。このような構造を「新植民地主義」という。

フランスは、旧植民地14カ国にCFAフランという通貨を押し付けて搾取している。フランス財務省に50~80%の準備預金を預けCFAフランを使用できるというシステムで、価値はユーロにペッグされている。

https://www.youtube.com/watch?v=_YeNxLgvL6A

また、ニジェールには10億バレルの石油の埋蔵量があるとされ、現在採掘が進む。
石油パイプラインは中国が作ったため、米仏が警戒している。


ニジェールで権力を掌握した反政府勢力のリーダー、アブドゥラフマン・チアニ将軍が新たな暫定政府樹立に関する法令に署名した。
フランス外務省とアメリカ国務省は、ニジェールの秩序回復に向けたECOWAS首脳会議の決定を支持すると述べた。
また、正当な大統領であるバズーム大統領とその家族の即時釈放を求めた。
https://twitter.com/Sprinter99800/status/1689932020560916480

ナイジェリアを主軸とした欧米傀儡の国々を米仏がけしかけているとの見方が強い。


https://twitter.com/Sprinter99800/status/1688992272170336257
 

アフリカにある外国軍の基地


ニジェールにはアメリカ軍の世界最大のドローン基地があり、フランス軍も駐留するが、大半のニジェール国民は駐留する米仏軍を追い出したい
近年のニジェールは、ロシアとの連携を深めているためNATOが激怒した背景もある。

戦争屋のヌーランド国務次官も前のめりでニジェールに介入しようとしている。
ナイジェリアらECOWASと、親西側の大統領バズームを再任させるため軍事介入を行う会談を設け、中露との関係を断つよう圧力をかけている。
https://www.state.gov/acting-deputy-secretary-of-state-victoria-nuland-on-the-situation-in-niger/

ところがニジェール人たちは、米仏英らNATO国より、ロシアや中国を信頼している。
なんと6割以上の人がロシアを信頼している。


「どの外国人を信用するか」と聞いた世論調査
(*中国が少ないのは中露を一体と見ているからだそうだ)


The Hillでも同じ物語を語っている。戦争屋ヌーランドが前のめりになっているとの向きだ。
https://www.youtube.com/watch?v=yaaPHJiD1us

アメリカの傀儡となっているナイジェリアのティヌブ大統領は、ECOWASの議長も務める。米国が管理するIMFと世界銀行の支援を受けた経済改革体制を発足させた。
https://businessday.ng/news/article/world-bank-imf-others-back-tinubus-economic-reforms/

ティヌブは親族と共に、米国とのヘロイン取引の資金洗浄に関わっていたことが明らかになっているほか、米国の石油企業にコンサルとして籍を置いている
一方で、ニジェールと同様にクーデターを起こし軍事政権の統治下となった隣国のブルキナファソ、マリ、ギニアも、ニジェールへの攻撃は自国への攻撃とみなされると警告している。
https://thegrayzone.com/2023/08/05/bagman-ecowas-chairman-invade-niger/


最後に、「Democracy Now!」に出演したシラキュー大学のホレス・キャンベル教授(アフリカ研究者)のインタビューを抄訳したい。

 

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▼ Horace Campbell on Opposing Military Intervention in Niger & Disastrous U.S./French Role in Africa
https://www.youtube.com/watch?v=LMiLz2BMmWE

左:キャンベル教授 右:ロシア国旗とプーチンの写真を掲げるニジェール市民

・を急進的タカ派の軍国主義者であるヴィクトリア・ヌーランド国務次官補は、地域の分断を煽っている。
ブルキナファソとマリがフランス軍や米軍を排除したように、ニジェールもそうすべきだ。
・フランスはウランを採掘し搾取したほか放射性廃棄物を遺棄した。
・西アフリカの経済を支配するCFAフランの廃止と、西アフリカに駐留する24万のフランス軍と職員の退去を求める。
・地球温暖化で乾燥化が進むチャド湖は90%の水を失ったが、復興計画にフランスが反対している。
・イスラム原理主義系テログループのボコ・ハラムをフランスが支援している二枚舌外交を西アフリカの人々が非難している。
・オカシオ・コルテス議員はニジェールに学生時代に留学していたのに、なぜ米国のニジェールに対する軍国主義に声を上げてくれないのか。
・ニジェール、ブルキナファソ、マリ、スーダンは反帝国植民地主義ブロックを形成しつつある。
・ECOWASの主軸であるナイジェリアの上院は軍事介入に反対し、人々は現ナイジェリア政権を違法だとしている。
・西アフリカの人々は毎年欧州に何百億ドルも送金したくない。CFAフランの代わりに独自の統一通貨を持ちたい。
・アメリカ、フランスそしてEUは、アフリカの団結を阻止し、アフリカ人が自分達のために道路・鉄道・港を建設することに反対してきた。
アメリカとNATOは、アフリカ統一通貨を計画していたリビアのカダフィ大佐を打倒した。
統一通貨はアフリカからの資源と資金の流出を防ぐためのものだったが、米欧には脅威だった。だからこそアメリカは中国に関してブギーマンを創り出してもいる。
ウクライナ戦争は、アメリカがウクライナのファシスト分子を支援したもので、非常に恐ろしいものだった。
アメリカはロシアの悪影響をアフリカから排除すると脅している。ウクライナにおけるNATOとアメリカの戦争に賛同するようにと議会を脅している。
BRICSサミットでは中露印、ブラジル、南アが、アメリカの支配を打破するため団結する。
・ヌーランドが南ア政府を脅しているのもそのためだ。
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西アフリカ人の全員がロシアを支持しているわけではないが、日本人には考えられない現実感をもっていることがわかる。
(動画のコメント欄のアフリカ人たちからの発言を読むとそのことがより一層わかる)

西アフリカ人にとって、過去の英仏の植民地政策は絶対に許せないものであり、現在の新植民地政策を牽引する米仏も許せない存在なのだ。

ロシアや中国はアフリカを植民地にしていないし、「テロとの戦い」と言いながら国を破壊したりもしない、むしろ大切なビジネスのパートナーだ。

ニジェールや西アフリカで起こっていることをとっても、マイケル・ハドソン教授のロジックが証明されるだろう。

 

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