6月23日に起こった「プリゴジンの乱」について、結局何だったのかよくわからずモヤモヤしている人も多いと思う。

相変わらず大本営メディアがデマばかり発していたので、何が起こったのかわからない人が多いのではないか。
 


本日はその「プリゴジンの乱」について、筆者が最も整合性が高そうだと感じた解説を紹介したい。
ウ露戦争に注目する人なら多くが知っている、国連の元軍事顧問/主任査察官スコット・リッターの解説だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC

また、CIAの元分析官/国家情報推定委員長で、歴代大統領のアドバイザーも務めたレイ・マクガヴァンの見解も抄訳する。マクガヴァンはソ連・ロシア情勢の専門家でもある。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ray_McGovern

ウクライナの戦争についての過去の考察はこちらを参照いただきたい。


ワグナーPMCはロシアの傭兵部隊で、エフゲニー・プリゴジンがオーナーとなっている。
プリゴジンは若いころ強盗や傷害事件を繰り返し収監されたヤクザ者だったが、ホットドッグのケータリング業が大成功し、プーチンのインナー・サークルに入るまでになった。
傭兵部隊としては2010年代初頭から活動。

そのワグナーが、6月23日に反乱を起こし、モスクワに向かって「行進」した。
プリゴジン自身も「行進」だと語っているが、西側メディアは「政権転覆のためのクーデター」と報道した。
実際、道中で小規模な衝突が起こり、露軍を中心に10名程度が死亡したが、ワグナーの更新はモスクワを目前に突如停止し、ルカシェンコの仲介でプリゴジンとワグナー兵の身柄はベラルーシに引き渡されることとなった。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%8F%8D%E4%B9%B1
*筆者注:Wikipediaの「ワグネルの反乱」ページはホワイトウォッシュされているので注意が必要だ。
Wikiの記述はCIAら諜報機関が改ざん・情報工作していることをWiki創設者のサンガーが告発している。
https://www.youtube.com/watch?v=YR6dO8U8okk


筆者は当初、ウ国の諜報部SBUやCIAの関わりも疑っていたが、リッターとマクガヴァンの話を聞いてその可能性は低いとの結論に達した。

 

 

上記「Covert Magazine」におけるリッターの発言も、プリゴジンが政敵と考えるショイグ将軍を出し抜こうとする考えの現れだったのかもしれない。

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スコット・リッターの解説から確認してみたい。

 

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▼Scott Ritter: Ukraine DESPERATELY Tries To DRAG Poland Into Russian War
2023/07/24 

【抄訳】

ワーグナーはプリゴジンが入る前にウトキンが立ち上げた傭兵部隊で、これがクリミアのリトル・グリーンメンの正体だ。
当時のクリミアは法的にはウクライナであり、ロシア軍が入るわけにはいかなかったのでワーグナーを利用した。
(*筆者注:クリミアにはもともと常駐していたロシア兵も数千人いたので、西側メディアが喧伝した「記章のないロシア兵が越境してきて市庁舎を占拠した」との報道は事実ではない)

ロシアの国内法では傭兵を禁止しているが、海外で活動するワーグナーはこの法の外側にいた。露軍の代わりにシリアやアフリカで活動した。
ワグナーは2014年からウクライナ領であるドンバスに入っていたが、22年秋にロシアがドンバスを併合したため、ロシアの法律としてワグナーは違法な存在になってしまった

毎年5月1日にロシアとワグナーは契約を更新していたが、2023年の5月に契約終了となった。
これがワグナーの国軍編入の話となる。国軍に編入されれば得られる資金が少なくなるため、プリゴジンが激高して6月の「プリゴジンの乱」に繋がった。
反乱は違法であるが、プーチンは訴追しないと決めた。
ワグナーはプリゴジンの手を離れることになる。

ワグナーは500人の部隊から3万人に拡大したが、プリゴジンを崇拝する者はわずかだった。反乱にもわずか(*筆者注:約4000人と言われている)しかついていかなかった。
それも「国境を守る」と言われて出動した者がほとんどだ。

ロシアはワグナーとの契約を終了したため、傭兵はロシア国内には駐留できない。そこでワグナーの傭兵には国防省に所属するか、アフリカのワグナー部隊に行くか選択を迫った。また、ワグナーの拠点を国外であるベラルーシに移した
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だいぶ合点の行く話ではないだろうか。
西側メディアに言われていたウクライナ治安部SBUや米CIAとの取引で寝返った、などということはないさそうだ。

そして、反乱前や直後にプリゴジンがしきりに強調していた「露軍がワグナー軍に対して地雷を設置した」「キャンプを砲撃した」などという話は事実かどうか確認できないので、狂言か自作自演だったのではないだろうか。

一説によると、ワグナーは、ロシア国防省との契約金以外にアフリカの金鉱山などの利益から、年間数十億ドルを稼いでいたというので、露軍に編入されることでその権益を失うかもしれない事態は大きな痛手となるとプリゴジンが予想し激高したというストーリーはもっともらしい。

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次に元CIA分析官のレイ・マクガヴァンの見解も見てみたい。
マクガヴァンに関しては、「プリゴジンの乱」以外にも広範にわたるウクライナ情勢に関しての見解となる。

 

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▼ Ex-CIA: White House PANICS Over Exposed Dark Secrets
2023/07/09

【抄訳】
「プリゴジンの乱」は、ワグナーが解散させられ国防省に編入されそうだったから起こったことで、プリゴジンが10億ドルの権益を奪われることを恐れて激高し起こした。
CIAとMI6も知っていたかもしれないが、プリゴジンの感情的な性格から察するにもっとシンプルな事件だっただろう。

ザポリージャ原発についても同じようにシンプルだ。
実効支配しているロシアが偽旗作戦を行う必要はない。ウクライナ側が偽旗作戦を行った
今回の計画は、原発を爆破し、ポーランドに放射能をまき散らし、ウクライナでの敗北を誤魔化すためだったと思う。
しかし、おそらくNATOのメンバーに計画が止められたのだと推測する。

(ロシアはNATOの不拡大とクリミアの扱いについて西側に提案したが断られた)21年12月の時点でプーチンは西側との交渉は不可能だと考えていた。
2月4日に北京を訪れ「露中は通常の同盟以上に強固な同盟だ」との覚書を記した。この時に習近平に戦争を遂行することに関する了解を取っていたのだろう。
22年1月にはウ軍のドンバスに対する砲撃は10倍に増えていた。NATOとの訓練を重ねたウ軍はドンバスに侵攻する準備を十分に整えていた。
プーチンは習近平に「ウクライナに侵攻しなければならないようだ」と言った。習近平は「2月20日に冬季オリンピックが終わるまで待ってほしい」と約束させた
2月21日、ドンバスの2州の独立をロシア議会が承認。それを受けてプーチンは24日に侵攻を開始した。
侵攻の理由はこれだけではないが、このような流れもあるということだ。

ゼレンスキーはワシントンのパペットだ。バイデン大統領自身やオースティン国防長官からロシアを弱体化させるための任務を負っている。
それはロッキードやレイセオンの利益のためにやっているということだ。
もしゼレンスキーがパペットであることをやめてウクライナ国民のために働こうとしても、それは阻止される。
彼はロシアとの停戦を公約として大統領になったが、大統領になった直後にアゾフに脅されて尻込みした程度の人間だ。

戦争を仕掛ける者の正体は軍産複合体だと言われるが、軍産複合体というより、「軍産・議会・諜報・メディア・学術シンクタンク複合体」だ。
私は頭文字をとって「MICKY MAT = MIlitary Industrial, Congressional, Inteligence, Media, Academia, ThinkTank Complex」と呼んでいる。
そしてメディアがその中心にいる。彼らが支点となり情報をゆがめているのだ。
そのメディアがウクライナの次はバルト三国、ポーランドだというようにロシアの脅威を、何の証拠もなく強調している。

2008年2月、バーンズCIA長官(当時駐ロ大使)は、NATOのウクライナ・グルジアへの拡大について「ならぬものはならぬ(Nyet means Nyet)」「内戦がおこる可能性がある」とラブロフから忠告されていた。
ところが、2008年4月にブカレストでブッシュは「ウ国とグルジアをNATOに加盟させる」と宣言した。
その後2014年にウクライナでクーデターが起きた。
クーデターの2週間前に、クーデターが起こることが予定されていることが暴露された。ヌーランドとパイアット駐ウ大使の電話だ。
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2008年2月のバーンズ現CIA長官とラブロフ外相のやりとりはWikileaksにより暴露されている。
下記はその抄訳だ。
アメリカ側はロシアから深刻な忠告を受けていたのに、「NATOをウクライナとグルジアに拡大する」と強引に宣言し、この2国で政変を起こそうとした。
ウクライナではアメリカの主導したクーデターは成功したが、結果として、ラブロフの忠告した通りに内戦となった。

これはアメリカのミスやボタンの掛け違いなどではなく、意図的に戦争を起こそうと計画を遂行してきたことを物語る。


本日は「プリゴジンの乱」を中心にお送りしたが、ウクライナ戦争についてはまだまだ謎が多い。
これからも、情報が更新され次第、この件を追っていきたい。


また次回。

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