*この記事はシリーズ「全体主義からの脱獄」の一部となる。他の記事はこちらから。

 

またRFK Jr.が大炎上した。

炎上の発端になったのはNYポストの「RFKジュニア、新型コロナウイルスはユダヤ人を除外するよう『特定人種を標的にした』可能性があると語るとした記事だ。
https://nypost.com/2023/07/15/rfk-jr-says-covid-was-ethnically-targeted-to-spare-jews/

記事では以下のように問題提起している。

・・・・・・・
新型コロナウイルスは人工的に作られ、中国の武漢研究所から漏れ出したものであるという米情報機関の間でのコンセンサスが高まっているが、特定の宗教集団や人種を免れるように設計されたという証拠はない。

テルアビブ大学の現代ヨーロッパユダヤ人研究センターによると、ケネディ大統領候補の発言は、パンデミック勃発直後にネット上で広まったコロナウイルスの出現と蔓延をユダヤ人のせいにして非難する使い古された反ユダヤ主義のレトリックを反映しているという。

2020年のオックスフォード大学の調査では、英国人のほぼ5人に1人が、ユダヤ人が経済的利益のためにコロナウイルスのパンデミックを引き起こしたと信じていることが判明した。

左派の名誉毀損防止連盟(ADL)は声明でさらに次のように述べた。
新型コロナウイルス感染症が白人や黒人を攻撃するために中国人やユダヤ人によって作られた生物兵器であるという主張は非常に攻撃的であり、中国嫌悪と反ユダヤ主義の陰謀を助長するものである」
・・・・・・・


1行目の文章の前半には同意できるが、後半部分は正確ではない。そして記事のヘッドラインもフェイクと言える。
反ユダヤ主義・人種差別だとする問題提起も妥当であるか微妙だ。

一つ一つ読み解いていこう。

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まず、論点の一つ目にしたいのが、NYポストが言うようにコロナウィルスが「研究室で人工的に作られた」ものであることはほぼほぼ確実となる。(これは日本の主流メディアでは一切報じられていない)

 

今年の1月、FBIと米エネルギー省が「武漢研究所から漏洩した可能性が高い」と認めている。
https://www.wsj.com/articles/covid-origin-china-lab-leak-807b7b0a

 


上記ツイの記事は、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長アンソニー・ファウチらとコロナウィルスの発生起源を検証するチームの責任者だったクリスチャン・アンダーセン博士の議会証言に関するものだが、他にも世界で最も影響力のある医学誌「ランセット誌」のCOVID-19委員会の委員長を務めるジェフリー・サックス教授はウィルスが人工物である可能性が高いことを認めている。

https://www.jeffsachs.org/interviewsandmedia/64rtmykxdl56ehbjwy37m5hfahwnm5

 

また、元国務省のパンデミック調査官のデイビッド・アッシャー博士は、武漢研究所からの漏洩であることをファウチが隠蔽したと断定し、下院の委員会ではファウチ自身もウィルスの遺伝子配列から自然起源のものである可能性が低いと認めた
https://www.youtube.com/watch?v=DEphd___3KY


本日のThe Hillでは上記の事案を「確定した」として扱っている。
https://www.youtube.com/watch?v=fhypiDfbGYA

 


◇◇◇◇◇◇

RFK Jr.が生物兵器だと断定したのかどうかが次の論点となるだろう。

NYポスト記事内の実際の映像も確認してみたい。 
これはRFK Jrと記者らの食事会の場でのオフレコでの発言だった。

 

・・・・・・・
RFK Jr:
アメリカは何億ドルもの資金を投入して特定の人種を標的にした細菌兵器を製造している。
中国も同じことをやっている。
実際、Covid-19は特定人種を標的にした生物兵器だという議論もある
Covid19が襲うのは特定の人種に偏っている、Covid19に最も免疫のある人種は、ACE2レセプターの遺伝的構造の違いで生じる。そしてCovid-19は白人(Caucasian)と黒人を標的として攻撃する。最も免疫力が高いのはアシュケナージ・ユダヤ人と中国人だ。
意図的に狙ったのかどうかはわからないが、人種や民族の違いやその影響を示す論文が出ている。

中国が何億ドルも費やして生物遺伝兵器を開発していることはみんな知っているし、我々もウクライナにある研究所で生物遺伝兵器を開発していて、特定人種を標的にできるようにロシア人や中国人のDNAを収集している。
・・・・・・・


上記はなるべく正確に翻訳するよう努めたが、RFK Jr.は、NYポストが報じたような「コロナウィルスはユダヤ人を排除するようユダヤ人に設計された生物兵器だ」などとは言っていないことがわかるだろう。

「Covid-19は特定人種を標的にした生物兵器だという議論もある」「意図的に狙ったのかどうかはわからないが…」という発言から、RFK Jr.が確定的事実として扱っていないことがわかる。
もちろん、それを示唆はしているが、ユダヤ人だけでなく中国人もウィルスの攻撃排除対象として挙げていることもわかるし、後述するが、彼が指摘した研究ではフィンランド人やアーミッシュもそこに含まれている。

これが「反ユダヤ主義」として炎上したのは、主流メディアによるいつものフェイクニュース論法に他ならないが、同時にRFK Jr.もだいぶ危なっかしいことを言ったもんだと多くが呆れるのではないだろうか。


NYポストに端を発したRFK Jrの発言が大炎上した。

次の論点は人種的要因があるのかどうなのかという問題だ。

日本では、パンデミック初期の頃、2020年の夏あたりには、日本人がコロナウィルスに感染・重症化しにくいことから、iPS細胞で有名な京都大学の山中伸弥教授らによる不確定因子「ファクターX」を人種や遺伝子的要因(獲得免疫)に求める議論があったことを覚えている人も多いだろう。
http://totalnewsjp.com/2021/02/22/covid19-7/

これはウィルスの変異前の状況であることも注意が必要だが、遺伝子的要因はわりとメジャーな議論のはずであったので、CDCなどの機関も人種別の感染率や重症化率を割り出しているし、なんら人種差別的意図を含まないことが言える。

元The Hillのキャスターで、RFK Jr支持者のキム・アイヴァ―センは「もし誰かが、高齢者ほどコロナウィルスに感染しやすいなどと言ったら”年齢差別主義者”だと言うのか?」と疑問を呈している。
https://www.youtube.com/watch?v=ORnaaScS95g

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炎上についてRFK Jr.は次のように激しく反論している。

・・・・・・・

翻訳:
NYポストの記事は間違っている。私はCOVID-19ウイルスがユダヤ人を標的から外したものだと示唆したことは一度もない。
私が正確に指摘したのは、オフレコの会話の中で、アメリカや他の政府が民族を標的にした生物兵器を開発していることと、COVID-19ウイルスの2021年の研究によれば、COVID-19は特定の人種に不均衡に影響を及ぼすようだということだ。
なぜなら、「フーリン切断部位」は黒人と白人に最も適合し、中国人、フィンランド人、アシュケナージ・ユダヤ人には最も適合しないからである。
その意味では、この研究は特定人種を標的にした生物兵器の概念を実証したともとれる。
私は、人種に及ぼす効果が意図的に操作されたとは信じていないし、そのようなことを示唆したこともない。
当該研究はこちら: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32664879/
・・・・・・・


RFK Jr.が提示した研究論文について、彼を批判するどのメディアも目を通さずに「反ユダヤ主義だ!」などとレッテル貼りしているのだと思うが、この論文内容に触れる前に基本的な前提知識を知る必要がある。

RFK Jr.の言う「フーリン切断部位(FSC)」とは、コロナウィルスの突起部分 (スパイクたんぱく質)に位置し、ヒトへの感染に必須とされる部位で、他の類似したウィルスにはこの部位の遺伝子配列が存在しないという。
この事実から、ウィルスが人工物であることが確実視された。それどころかフーリン接続部位の遺伝子配列が、モデルナ社の作成した遺伝子配列であったことが確実とされている。
https://tantotempo.hatenablog.com/entry/2022/05/05/122056

そしてスパイクたんぱく質が、ヒトの細胞のACE2受容体にドッキングして感染する点も抑えたい。


Nature誌掲載の査読済み論文より
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v18/n10/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AB%E4%BE%B5%E5%85%A5%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF/109460
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さて、RFK Jr.が提示した研究は「New insights into genetic susceptibility of COVID-19: an ACE2 and TMPRSS2 polymorphism analysis(COVID-19の遺伝的感受性に関する新たな知見:ACE2とTMPRSS2の遺伝子多型解析)」とされるもので、医学知識のない私のような人間にとってはだいぶ読解が難しいが、論点は以下の部分になるだろう。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32664879/

簡単には、人種によってACE2受容体の感受性が異なり、ウィルスへの感染・重症化しやすさが変わるという話だ。

 

・・・・・・・
この研究では、約81,000のヒトゲノムからACE2とTMPRSS2 (SARS-CoV-2の2つの主要な宿主因子) のDNA 多型を調べることにより、COVID-19に対する遺伝的感受性を調査しました。
私たちは、ACE2とTMPRSS2の異なる集団間で独特の遺伝的感受性を発見しました。
(中略)


ACE2の劇症型変異体の分布は、gnomAD(v3)の9つの集団間で異なることがわかった。
具体的には、ACE2の劇症型変異体の39%(24/61)および54%(33/61)は、それぞれアフリカ系アメリカ人(AFR)および非フィンランド系ヨーロッパ人(EUR)集団で発生している(図1b)。
ラテン系/混合系アメリカ人(AMR)、東アジア人(EAS)、フィンランド人(FIN)、南アジア人(SAS)集団における劇症型変異の有病率は2~10%であるが、アーミッシュ(AMI)およびアシュケナージ・ユダヤ人(ASJ)集団はACE2コード領域にそのような変異をまったく持たないようである(図1b)。
・・・・・・・


遺伝子的にゲルマン系のアーミッシュの重症化率が低いのは意味がわからないが、他の人種、アシュケナージ系ユダヤ人やフィンランド人に関しては、東アジア人/モンゴロイド系と似た遺伝子を持っていることが理由ではないかと推察できる。
この研究ではあげられていないけど、おそらくインディアンやエスキモーなんかも有病率が低いんじゃないだろうか。

 

なぜ私がそのように推察するのか。Y-DNAハプログループの分布図で見るとイメージしやすいかもしれない。
これを見るとアシュケナージ・ユダヤ人がいたウクライナ南部には東ユーラシア人系の遺伝子は到達していないように見えてしまうが、フィンランド人が東ユーラシア系と同じグループにいることは確認できる。


結論:
RFK Jrに人種差別や反ユダヤ主義的な意図があったとは思えない。グローバル企業をスポンサーとする大本営メディアのいつものポピュリスト叩きと言っていいだろう。

しかし、不用意な発言であったことは確かだ。欧米では中国人や東アジア系に対するヘイトクライムも多く起こった。
https://psycnet.apa.org/record/2022-55385-001

また、イギリス労働党の元党首ジェレミー・コービンも「兵器化された反ユダヤ主義のレッテル」によって言いがかりをつけられ、党を永久追放されたほど、欧米はユダヤ問題には過剰に反応する。
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12808634825.html

特定の遺伝子を狙った生物兵器は実際に存在するようだ。
https://twitter.com/TheChiefNerd/status/1680229787376181250

米欧と中国の全体主義体制の外側いるインドのメディアは、英サンデータイムス紙を引用しながら「武漢研究所では中国軍部と共同でコロナウィルスを生物兵器として開発した可能性があり、中国政府は漏洩を隠蔽した」、「700万人が死亡したパンデミックの代償を払わせるようハッシュタグをつけて中国政府に圧力をかける時代が来た」と強調した。
https://www.youtube.com/watch?v=0Q77qmML_K4

しかし実際のところコロナウィルスが生物兵器であったかどうかはまだ確定していない。
人工物であったことはほぼ確実だし、米国の資金と技術の提供によって感染力を増強させる機能獲得実験が武漢ウイルス研究所で行われていたことは事実だろう。
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/296.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cc5e64f743a1fee119066c866e91068182de822


もしウィルスが人工的に製造された生物兵器であり、東ユーラシア人らだけには感染しない機能を獲得していたとするなら、その意味を類推すれば、犯人は中国政府と米国政府ではないかという仮説が立てられるが、まだそのための傍証が薄いと感じる。

生物兵器の製造過程でミスで流出した、または生物兵器とそのワクチンを研究する過程で製造したウィルスが事故で流出したなどの可能性も考えられる。

これらの可能性は念頭に置くべき事柄ではあると思うけど不確定情報であるため、このことを大統領候補がわざわざ口に出すことなのかとも思う。

余談だが、CDCや他の研究では、パンデミック初期の罹患率に関して人種間の有意な差異はあまり認められていないようだ。
CDCはごく初期にだけアジア人の罹患率が低いことを報告しているが、いずれにしてもエッセンシャル・ワーカーとして働くなどライフスタイルにも左右されるので私には何とも言えない。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7011e1.htm
https://www.kff.org/coronavirus-covid-19/issue-brief/covid-19-racial-disparities-testing-infection-hospitalization-death-analysis-epic-patient-data/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8087292/



以上、本日はRFK Jr.の大炎上について報告した。

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