*この記事はシリーズ「全体主義からの脱獄」の一部となる。他の記事はこちらから。

 

7月3日、ボストン・ヘラルド紙が、ニューハンプシャーの予備選でRFK Jr.が勝つ可能性があると伝えた。
https://www.bostonherald.com/2023/07/03/biden-should-watch-rfk-jr-pundits-say-kennedy-will-likely-win-new-hampshire-primary/

ニューハンプシャー州は、歴史的に民主党予備選が開かれる最初の州で、ニューハンプシャー州で勝った候補はその後も優位に立つとされる。
ところがバイデンと民主党全国委員会(DNS)はその初戦を自分に有利なサウスカロライナ州に変えようとしている

初戦が有利である理由は、もっともメディアから注目され、その結果が人々の印象に残るためだとされている。
https://en.wikipedia.org/wiki/New_Hampshire_presidential_primary



前回のニューハンプシャー州予備選の結果は、サンダースが1位(25.6%)でバイデンは5位(8.4%)だった。
その後、サンダース旋風が吹き荒れたことは記憶に新しい。
バイデンはニューハンプシャーでまったく人気がないこともわかる。

バイデンのセコさには閉口するし、不正な選挙操作であることは断言できるが、現在のところRFK Jr.は民主党員のあいだではあまり人気がないことも確かであり、巨大な風車に対し勝ち目のない戦いに挑んでいるようにも見える。
平均的な支持率は「バイデン60~65%/RFK Jr.15~20%」といったところだ。

民主党の中道派のみならず、プログレッシブ派のサンダースやウォーレンまでが諦めてバイデン支持にまわっているのだから仕方ない。
私は、プログレッシブ派が全体主義体制を前に尻込みしたのだと評価している。

22年の10月にサンダースの門下生にあたるジャヤパルやAOCら「ザ・スクワッド」を中心としたプログレッシブ派30名は、バイデンに対して「ウ露戦争の和平交渉」を求める書簡を送ったが、あまりの反発に翌日には取り下げてしまった経緯がある。
https://www.wsws.org/en/articles/2022/10/26/pers-o26.html
https://progressives.house.gov/_cache/files/5/5/5523c5cc-4028-4c46-8ee1-b56c7101c764/B7B3674EFB12D933EA4A2B97C7405DD4.10-24-22-cpc-letter-for-diplomacy-on-russia-ukraine-conflict.pdf

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*注意 【前提】
・私は米サンダースと英コービンの支持者である。
・私はワクチンに関する知識がないためRFK Jr.の主張の科学的な正誤を判断できない。
・ウクライナ戦争に関して、私は、RFK Jr.以上に反米英ウ政府派で、即時の停戦を求めている。
・私は、財政に関してはRFK Jr.と真逆の認識を持つが、マクロ経済における格差の認識に関しては概ね同意する。
・私が「反ワク・反ウク」という語句を使用する時は広義も含む。そこには各論者のグラデーションがあるからだ。
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最新のニューハンプシャー州における世論調査では、「バイデン68%/RFK Jr.9%」、または「バイデン70%/RFK Jr.17%」といった渋い結果が出ている。
https://thehill.com/homenews/campaign/4071728-biden-opens-up-wide-lead-on-rfk-jr-in-new-hampshire-poll/

ところが、世論調査の母数を非民主党員や共和党支持者にまで広げるとまったく結果が変わる。

下記は、6月初頭の「YouGov」の世論調査結果だ。設問は「この人物を好意的に評価するか?」だ。

RFK Jr.  49%
Biden  45%
Trump  43%

https://docs.cdn.yougov.com/rj3bg6ve06/econTabReport.pdf

RFK Jr.がバイデンやトランプに勝てる可能性のある候補であることがわかる。

この結果をもう少し詳細に見ていこう。
まずはRFK Jr.から。

なんと前回トランプに投票した層の61%から好意的に評価されているのがわかる。逆にバイデンに投票した層からは好意的/批判的が半々となっている。
また中道穏健派(Mod)と保守派(Con)の約55%から好意的に評価されていることもわかる。
しかも、「わからない」とした人が約20%もいる。これはまだ伸びしろがあることを意味するだろう。

次にバイデンの状況も見てみよう。バイデンもトランプも傾向は同じで敵方からひどく嫌われている。

前回バイデンに投票した層からは83%の支持を集め、なんとトランプに投票した層の95%から嫌われている。
加えてどの属性においても「わからない」が1~5%程度しかいない。評価がはっきりと分かれていることがわかる。

そしてトランプ。

前回トランプに投票した層からは82%の支持を集め、バイデンに投票した層の88%から嫌われている。
トランプもどの属性においても「わからない」が1~5%程度しかいない。トランプも評価がはっきりと分かれている。


バイデンとトランプは敵方からひどく嫌われているが、他方でRFK Jr.は保守派と穏健中道派から評価が高いことがわかる。

バイデンとトランプ支持者の現状が「分断社会」の象徴となるが、わりとニュートラルな評価を得るRFK Jrの存在は、「分断社会」に大きな影響をもたらすのではないだろうか。

しかしこれは調査の母体を全体に広げた場合の話だ。RFK Jr.は民主党支持者からあまり評価されていないことが事実だ。

以上のことから、RFK Jr.はほぼ確実に民主党予備選に負けるだろうことが予測できる。

しかし、実は予備選は法律で定められた連邦選挙ではない。
RFK Jr.は大統領選本戦に無所属・独立系候補として参戦することが可能で、おそらくその戦いが彼の本番になるのではないかとの予測も成り立つ。
ジョージ・ワシントンは無所属で選出された唯一のアメリカ大統領であった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Independent_politician

党派を問わず人気のあるRFK Jr.であればこの奇策も十分に効果を発揮するだろう。
また、上掲した世論調査の結果からも、まだまだRFK Jr.がどんな人物かわからないとした層が20%もいる。
今後は1年間以上かけて予備選・大統領選本戦で、どれだけアピールできるかにかかってくるだろう。

共和党・トランプ支持者のあいだで大人気の元FOXの司会者タッカー・カールソンにも「大統領選ではRFK Jr.が勝つ」と予測されている。
https://www.youtube.com/watch?v=I5WQu81Fbvo

思い返してみると、16年のヒラリーvsトランプ戦、20年のバイデンvsトランプ戦においては、サンダース支持者らはリベラルなはずなのに、トランプに投票したり、または投票自体を棄権したりした。
私もサンダース支持者なので、16年はトランプを応援(投票日数日後に組閣のインサイダーっぷりを理由に翻すが)し、20年はサンダース敗北後に興味を失っていた。

もし、24年の大統領選本戦で、バイデンvsトランプvsRFK Jr.の三つ巴の戦いが実現したらと想像してほしい。
今までサンダースを支持していたプログレッシブ/反戦派はRFK Jr.に流れるのではないだろうか。

サンダース派の多くがバイデンを嫌っている。バイデンがサンダースの政策を半分取り入れたので我慢していたが、戦争を起こしたことで多くが激怒しているだろう。

そして前回、トランプやバイデンに投票した層の少なくない数がRFK Jr.に流れるとも予想できる。
戦争屋のバイデンや、荒唐無稽な陰謀論にハマり暴動を扇動したトランプにうんざりしている人たちも多いだろう。

私自身も、この三者であればRFK Jr.が大統領にふさわしいと思っている。
反ワクチンだったり緊縮傾向だったりするのは、彼の誠実さや研究熱心さ、そして正義感で克服できるのではないかと楽観的に考えている。

◇◇◇◇◇◇

さて、先日紹介したリベラル系メディアのThe Hillだが、やっぱり以前と比べて報道姿勢が変わったようだ。

▼Democratic primary poll from Fox News that shows Robert F. Kennedy Jr.'s number continues to inch up - The Hill

 

最新の世論調査で「バイデン64%/RFK Jr.17%」とされた結果を扱いながら、RFK Jr.を擁護している。

クリスタル・ボールやキム・アイヴァ―セン、ケイティ・ハルパーらを追い出したThe Hillでさえ「民主党のエスタブリッシュメントや主流メディアが、RFK Jrは反ワクチンを唱える変人だとレッテル張りし、主流メディアから締め出すことで選挙妨害している」と苦言を呈しているのだ。

また、私が上述したように、予備選初戦のニューハンプシャー州の予定をバイデンとDNSが変えようとしていることも、不正操作だと批判している。

5大ネットワークは依然としてRFK Jr.のネガキャンに忙しいが、ある意味で選挙の大番狂わせを牽引してきたThe Hillがいままでの全体主義に迎合してきた姿勢を改めようとしているのだ。

The Hillは、G・W・ブッシュ政権で国防総省の政策・コミュニケーション担当特別補佐官を務めたダグラス・マッキノンのオピニオンとして「RFK Jr.が民主党大統領候補になるべきだ」として観測気球を飛ばしている
https://thehill.com/opinion/campaign/4020920-why-i-believe-rfk-jr-will-be-the-2024-democratic-nominee/

予想だが、おそらくThe Hillは、1年後にはRFK Jr.を真正面から支持しているだろう。
これは風向きが変わる可能性がある。

◇◇◇◇◇◇

私が「風向きが変わりつつある」と判断する要因はもう一つある。

それはRFK Jr.の演説やインタビューが予想外に素晴らしいことだ。
これらは、私も含めて「どうせただの反ワクでしょ」とイメージしていた人間の認識を大きく変えることになる。

以下に彼の演説とインタビューを紹介する。
上記ツイで示したこの6月21日の演説の10分くらいからが素晴らしい。時間があれば書き起こしか抄訳でもしたいと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=iZUZZTtZw_s

そしてこの動画には、なんと11600件のコメントが書き込まれていることにも心底驚く。93万回程度の再生回数で、こんなに大量の書き込みのあるYoutube動画を見たことはない。


そして以下はタウンホール・ミーティング形式の動画だが、こちらも素晴らしい出来で、動画の5分くらいから30分くらいまでが見モノだ。

▼Robert F. Kennedy Jr.'s Town Hall on NewsNation | RFK Jr. Town Hall
2023/06/30

こちらはわずか6日前の6月30日に公開されたものだが、約80万回再生で、なんと13000件のコメントで溢れかえっている。驚愕である。


最初の演説動画の上位コメは「自分は保守派/共和党支持者だがRFK Jrを支持する」等の書き込みが多く、ひょっとしてボットか仕込みかと思ったが、こちらの上位コメはだいぶ様相が違う。
保守派・共和党支持者もチラホラいるようだが、たいていはリベラル派が多いようだ。
「生まれて初めて/道徳心/正直さ/本物/誠実さ/真実/リーダー」といったキーワードが目立った。

私が好きなコメントはこういったものだ。
「イスラム教徒として、この人は平和的な政策をとり、汚職と闘い、アメリカと世界のために善を行おうとしていると私が信じた初めての人物だ」

◇◇◇◇◇◇

RFK Jr.の人気がいかほどのものか、過去のバーニー・サンダースのものと比べてみたい。
サンダースのYoutubeチャンネルにある動画で100万回を超えるものは10本以下だが、他メディア出演時の再生回数は1000万回を超えるものもある。
少し抜き出そう。

▼Fox News Audience Agrees with Bernie
2020/03/10 200万回再生 9,668 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=jthr_9gIkKo
今見ても熱くなるFOX出演時の映像

▼Bernie x Cardi B
2019/08/16 130万回再生 6,722 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=p1ubTsrZFBU
人気ラッパーCardi Bとのコラボ

▼Joe Rogan Experience #1330 - Bernie Sanders
 2019/08/07 1490万回再生 177,968 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=2O-iLk1G_ng
さすがジョー・ローガン、まさに桁違いのモンスターだw

▼Bernie Sanders - A Progressive Agenda for the 2020 Presidential Race | The Daily Show
2019/04/07 378万回再生 8,112 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=zfNP_z8unGU

▼I'm Running For President
2019/02/19 105万回再生 28,055 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=s7DRwz0cAt0
2020年大統領選出馬宣言の動画

▼America | Bernie Sanders
2016/01/21 470万回再生 13,258 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=2nwRiuh1Cug
サイモン&ガーファンクル「America」に乗せたサンダースの素晴らしい2016年のキャンペーン広告

さすがサンダースだ。モンスター級の数字もあるが、RFK Jr.もじわじわとサンダースの人気に迫る勢いを感じる。

しかしサンダースとローガンが叩き出した1490万回再生の約半分となる742万回再生が、2週間前のRFK Jr.とローガンのセッションの実力だ。

▼How Robert F. Kennedy Jr. would end the Ukraine War #joerogan #jre #shorts #robertfkennedyjr
https://www.youtube.com/shorts/OUFjczkhDT0

上記はショート動画だが、ローガンのチャンネルでのRFK Jr.の実力は以下動画の通りとなる。

▼Robert Kennedy, Jr. on His Uncle JFK and the Military Industrial Complex
2023/06/16 189万回再生 8,451 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=ljSbJQk32TQ

もうひとつ、イギルスのコメディアン、ラッセル・ブランドの動画も。

▼The CIA Killed JFK...CONFIRMED?! | RFK Jr On His Uncle's Death Russell Brand
2023/05/14 95万回再生 9,322 件のコメント
https://www.youtube.com/watch?v=qGHG9b-l_1M

再生数に比してコメント数がやたら多いのがRFK Jr.の特徴ではないだろうか。

◇◇◇◇◇◇

RFK Jr.は決して演説もうまくないし、インタビュー形式でもそんなにうまく受け答えができているとも思えない。なにより病気による障碍のため大変聞き取りにくい発声音であり、聞く者によってはストレスを感じるほどだと思う。
それなのに、彼の作りこんでいないひたむきさや実直さが全てのマイナス・ポイントを上回ってくるのだ。

彼は何度も、民衆のためのポピュリスト党としての民主党を取り戻す、グローバル企業にかしずいてきた民主党を変える、諜報機関や軍産複合体の支配体制を打ち砕く等と発している。

何より環境弁護士として、虐げられてきた貧しい人たちの環境正義ために大企業やアメリカ政府と戦ってきた40年の実績があり、そしてCIAに暗殺されたと強く疑う叔父JFKや父RFKの意志を引き継ぐという揺るぎない信念がある。

トランプのような愚かさや、バイデンのような傲慢さは、彼にはないのだ。

とにかく、今年から来年にかけての大統領選も、だいぶ楽しめそうだと感じた次第だ。


以上。

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