*この記事は連載「全体主義からの脱獄」の一部です。他の記事はこちらから。


2024年の大統領選には、バイデン(民)、R.ケネディjr.(民)、トランプ(共)、デサンティス(共)ら4人の有力候補が出馬する。

個人的にはコーネル・ウェスト教授の動向(https://www.youtube.com/watch?v=wW2iPjaJ-Js )も気になっているのだが、興味深いのは、この4人のうち、バイデン以外の3人が「反ワク」だということ。
また、この3人はウクライナ戦争にも反対している。

日本では、90%以上の人が、ワクチンとウクライナ戦争は正義だと思っているだろう。しかし少なくないアメリカ人はそうは考えていないのだ。

私はウクライナ戦争には反対であり、早くアメリカが調停すべきだと考えているので、どうしても戦争屋のバイデン以外の候補に勝ってほしいと思ってしまう。
もちろん、経済政策に関しては、他の候補に比べてバイデンが段違いで良いが、あまり共感できない共和党候補を除外するとしたら、R.ケネディjr.の存在がとても気になる。

本日はR.ケネディjr.大統領候補について少し触れたい。

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RFK Jr. プロフィール:
環境・医療関連の弁護士で検事補経験もある。ペース大学環境訴訟クリニックの所長兼教授。
環境汚染の実害を受ける貧困コミュニティや先住民のために何度も大企業や行政府に対する訴訟を行っている。モンサント訴訟における弁護団の一員でもあった。
ダコタ・パイプラインの抗議行動にも参加。
オカシオ・コルテスのグリーン・ニューディール決議を支持。反原発派。

2008年、オバマの大統領選を支援。ジョージ・ブッシュと企業との腐敗を批判する書籍も著した。
オバマ政権ではEPA(環境保全庁)の長官職をオファーされていた。

00年代よりワクチンと自閉症の関係を追及。
反ワクチン・ドキュメンタリー『Vaxxed』の2019年の続編である『Vaxxed II: The People's Truth』の製作総指揮者として名を連ねている。
21年に反ワクチンのドキュメンタリー「Medical Racism: The New Apartheid」をプロデュース。
https://en.wikipedia.org/wiki/Medical_Racism:_The_New_Apartheid
複数のワクチン・環境正義関連のベストセラー書籍も著した。
ただし、これらのワクチンに関わる著作には、多くの反論もある。

喉が痙攣して発声が困難になるSpasmodic dysphonia(痙攣性発声障害)を患っている。

RFK Jr. ウィキペディアより
https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_F._Kennedy_Jr.
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(オカシオ・コルテスの「GND決議案」は、私も所属するGND政策委員会で朴教授が翻訳している https://green-new-deal.jimdofree.com/https-green-new-deal.jimdofree.com-2022-10-05/


以下で彼の主張がそれなりにわかるインタビュー動画を抄訳、短くまとめた。
(*だいぶ発言内容を短縮したので正確ではない)

私の所感としては、財政とコロナに関する認識は自分とは違うけど、外交・軍事・CIA・環境に関する認識はほぼ同じという感じ。
インタビューでは、彼は「財政に関してはこれから勉強する」とした。知識があまりないことを素直に認められるのは好印象だ。

逆に、私は医療の知識が殆どないので、ワクチンに関わる彼の主張が正しいのかいまいち判断できない。
個人的には、彼が信用に足る人物かどうかは、彼が科学的思考ができる人物かどうかにかかってくると思う。

▼ E127: Presidential Candidate Robert F. Kennedy Jr. in conversation with the Besties
https://www.youtube.com/watch?v=nA0OXZuaG0g

 

①ウクライナ戦争、台湾有事に関して
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R.ケネディjr:
ネオコンが14年にウ国でクーデターを起こし内戦、ウ露戦争に発展させた。米国は今も兵器を与え続け、結果としてウ/露の死者数は7対1(ウ:30万人)になった
・プーチンはギャングだが不合理ではない
大統領になったら即座に停戦する
・バイデンはイラク戦争から全ての戦争に賛同してきたのでキングメーカーに気に入られた
米国はロシアに「NATOを東に1インチも拡大しない」と約束したのにそれを破った。私はNATOを拡大しない
・私は台湾有事も起こさない。中国への挑発をやめエスカレートさせるのもやめる
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 *彼はウ/露の死者数をロシア側発表のものに求めているようだけど、私はそこまでのキル・レシオの開きはないと考えている。

 

 

②財政や経済に関して
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R.ケネディjr:
・巨額の財政赤字、債務対GDPは憂慮すべき。軍事費が8.4兆ドルもある。軍事的挑発や監視活動をやめれば1.1兆ドルを削減できる財政規律は大事だ。しかし財政を均衡させるための方法はもっと勉強が必要だ
・社会保障については勉強が必要だが、メディケアは削減できない
8兆ドルもイラク戦争に使ったのに何の成果もなかったどころか難民を200万も増やした
・コロナ禍でロックダウンをして16兆ドルも使ったが何もえられなかった
・銀行を救済しているあいだにフードバンクの予算を削減した
・ウクライナの戦費に予算を費やすのではなく国内の社会保障を充実させるべき
・インフレで貧しい人達を苦しめている
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 *ほとんどの人が騙されているように彼も均衡財政派のようだが、ここは勉強してほしい。

 

 

③JFKとRFKの暗殺、CIAについて
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R.ケネディjr:
・父のRFKは、CIAが叔父のJ.ケネディ大統領を暗殺したと考えていた。叔父JFKが死んだ日に、父RFKはCIA長官に電話し「JFKを殺したのか」と聞いた。
・CIAは軍産複合体の影響を受け国内監視網を作った。
父RFKは暗殺される2週間前に、このスパイ部門を排除しようとしていた
・CIAは汚い仕事をこなす。暗殺や不正選挙を行い、準軍事部門として機能し、黒人を拷問した
・CIAはブッシュに嘘をつきイラクに侵攻させた。
CIAは間違いなく叔父JFKの暗殺に関与した
・アサンジやスノーデンを罪に問うことは間違っている。彼らは米国人を守ろうとした。
・私は「ディープステイト」という言葉は使わないが、官僚組織・石油企業・軍産複合体・CIAは腐敗している。
・CIAと軍産複合体は、金のためにグアテマラなど中南米の国を転覆した
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 *疑いの域から出ない例もあるが、概ね同意する。
 例えば、CIAによる中南米における非道な準軍事作戦については、私もこちらでも綴った。(https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12796767101.html、 https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12797560172.html

 

 

④ワクチンや製薬企業について
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R.ケネディjr:
・モンサントやカーギルなどのビッグ・アグリは有毒な農薬を作っている
・イベルメクチンやヒドロキシクロロキンがコロナに効くとわかっていたのに、ファウチらは許可しなかった
・ナイジェリアではマラリア予防のためこれらを接種していたため死亡率は14/100万に抑えられた。米国は3000/100万だ。米国の黒人の死亡率は白人の3.6倍。人種的偏りもある。
・ハイチのワクチン接種率は1.3%だが死亡率は15/100万人だった。
・ワクチンを光の速さで製造させたのは保険省ではなくNSAと軍事関係だった。
・彼らは権利章典を無視し、社会全体をロックダウンした
・私は反ワクチン主義者ではない。ワクチンを接種している。
・ワクチンの認可行程には問題がある。製薬企業と政治との癒着によって必要のないワクチンが子供に打たれている。
・何らかの慢性疾患に罹患する米国人は6%から2006年に54%になった。自閉症率は1/1万人から34/1万人に激増した。89年以降にアレルギー疾患の人が爆発的に増えた。
・72のワクチンには420の病気が副作用として関連付けされているが、ワクチン普及と共にこれらの病気も爆発的に増えた。
・私のワクチンに関する書籍は1400の参考文献と400件の研究をまとめたもので、科学的にも明白だ。
・ジフテリア破傷風のワクチンDTPは、米国で1/300人の子供の死に関連した結果、接種をやめた。米国でも欧州でも禁止になったが、ビル・ゲイツは今でも1.6億人のアフリカの子供に接種させている。彼は公的には3000万人を救ったとされている。
・デンマーク政府はアフリカで30年間のワクチン接種/未接種の子供のデータを集めた。その結果、ワクチン接種者はジフテリアでは死なないが、他の何らかの原因でワクチン未接種者の10倍の数が死亡していた。
・ワクチンはその病気には効くが、免疫系に悪影響を及ばす。
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 *この部分は私は門外漢なのでなんとも判断しようがないが、2000年代前半からの筋金入りの反ワクであるので、コロナ禍を機に反ワクになった者たちとは手合いの違う印象を受ける。

ただ、ロックダウンに反対しているのはだいぶまずいんじゃないだろうか。

 

 

⑤エネルギー、原発について
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R.ケネディjr:
原発が安全かなど誰もわからない。保管方法さえわからないのだ
・もしニューヨーク近郊の原発にテロ攻撃があれば、ニューヨークは今後5000年は廃墟と化す
・福島では処理水をタンクに貯めておくことしかできない。終わりがない
・民間原発企業は、事故の責任を公共のせいにできる法案を通してしまった。自由主義市場の原則に反する
・現在、太陽光発電所は1ギガワットあたり10億ドルで建設可能で、風力は1ギガワットあたり12億ドルだ。石炭は1ギガワットあたり5億ドルだが地域を汚染する
・エネルギーが足りなくなるというが、ノースダコタの風力発電は十分なエネルギーを産出できる。ただし現在のグリッドシステムでは効率的に電力を供給できない。改善が必要だ
米国には十分な再生可能エネルギーがあるが、既存の化石燃料企業によって作られたルールがあるため、供給できていない。それらを逆転させなければならない
・原発はひとたび事故が起これば事態を収拾できない
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 *彼の言う「ギガワットあたりの建設コスト」はよくわからないが、IEA(国際エネルギー機関)が「メガワットあたりの運転コスト」を公表していて、以前「GND政策研究会」で翻訳したので確認してほしい。

https://green-new-deal.jimdofree.com/https-green-new-deal.jimdofree.com-2021-04-07-cargo-iea/
RFK Jr.の言う話とは異なるが、まあ「再生可能エネルギーのコストは安い」という広い文脈でとらえるのなら間違いではないだろう。

この他のイシューに関しては、トランス問題については自発的な人権を尊重すべき、公共教育を充実させるべき、製薬企業が広告スポンサーであるためマスメディアは偏向報道を行っている、バイデンと一族が外国政府からお金を貰っていたのなら去るべき、等の主張を行った。

印象はそれほど悪くない。
トランプやデサンティスのような知的水準の低さも感じられない。
何より、真実が何かを突き詰めようとする探求心や研究心、そしてエスタブリッシュメント体制に対する猜疑心社会に対する正義感は大きく評価できる。
間違いがあったら認めようとする姿勢も印象が良い。

惜しむらくは、偏向メディアがトランプらと同じような荒唐無稽な陰謀論者として彼を扱い、ディスプロモーションを行っているということ。

現在、民主党候補の支持率はバイデン60%、RFK Jr.15%といったところ。
共和党のほうはトランプ50%、デサンティス25%といった感じだ。
バイデンvsトランプなら五分五分の状況である。

今後もRFK Jr.には注目していきたい。


【おまけ】
ウ露戦争の勃発した3週間後の、RFK Jr.と元ミントプレスの記者ホイットニー・ウェッブのPodcast音声がある。
RFK Jr.は、ウ露戦争について一方的な報道をする大本営マスコミの姿勢を批判したほか、ホイットニー・ウェッブの、「シリアでISISや反体制派にヒラリーが武器供与し、彼らを育てたように、CIAはウクライナのネオナチ(スヴォボーダや右派セクター)を育て、ドンバスを攻撃させた」とする話を受け入れている。
(私の理解する事実は、「FSA(自由シリア軍/ISISやアル・ヌスラの前身となった組織)にヒラリーと米国が武器供与」であるので、彼女の話は少し勇み足にも思える)

▼RFK Jr. & Whitney Webb (March 15, 2022)
https://www.youtube.com/watch?v=oSbAIBfFpZo

上記対談でウェッブが話したことはこの自身の記事がネタ元になる。
https://unlimitedhangout.com/2022/03/investigative-reports/ukraine-and-the-new-al-qaeda/

ウェッブが「戦前からCIAがウクライナのネオナチを訓練していた」とする根拠となった記事は、私も1年程前に扱ったザック・ドーフマン(アスペン研究所/カーネギー財団)の記事だ。
https://news.yahoo.com/cia-trained-ukrainian-paramilitaries-may-take-central-role-if-russia-invades-185258008.html

ドーフマンの記事は戦前の22年1月のもので、この当時は検閲がなかったため、平然と「CIAが2015年からウクライナ軍を訓練してきた」と書いてある。


私が、22年2月に作った画像

私は、この記事は「CIAがウ軍を訓練した」とする記事だと思っていたが、ウェッブによると「ネオナチを訓練した」とされている。
なるほど、この記事を読み直していて、私は重要な箇所を見逃していたことに気づいた。
それはこの箇所だ。

プログラムに詳しいある関係者は、もっと率直にこう語った。元CIA当局者は「米国は反政府勢力を訓練している」と述べ、この計画がウクライナ人に「ロシア人の殺害方法」を教えたと付け加えた

この反政府勢力とはネオナチのことだ。
いくつかの米欧主流メディアでも扱われたが、アゾフらネオナチが「紛争が終わったら次はキエフ政府を落とす」と息巻いているインタビュー映像などがある。
ネオナチの少なくない数の戦闘員が、「反政府勢力」なのだ。

しかし、いずれにしても、2014年の内戦以降、特に18年以降は、アゾフ(National Corps)、スヴォボーダ、右派セクター、ドンバス大隊、アイダル大隊、C14、KUNなどのネオナチ系民兵組織は国軍に編入され、区別できなくなっていたため、米国がネオナチに軍事支援や訓練を行っていたことはただの事実となった。(これは米国の歳出法・付帯条項に反する可能性が高い)


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