れいわ新選組ほどマクロ経済をわかっている党はないと断言できる。

参院選では2議席を確保すると見られ、3議席目を臨むと言われるが、5議席でも10議席でも取ってほしいと強く思う。

れいわの政策の詳細は以下のページで説明されている。
https://reiwa-shinsengumi.com/sanin2022_kinkyu/

政策発表に際し、山本太郎氏は以下のようにも述べている。


まだまだ多くの人は「今はインフレなんだから財政出動したら余計にインフレになる!」と考えており、また、少し詳しい人達は「インフレ抑制のためには利上げが必要だ」と考えているので、本記事ではそれは事実ではないということを説明したい。
また、岸田内閣が無策であることや、立憲の「利上げ策」が間違ってることも指摘する。

 

【目次】
①立憲「インフレ対策として利上げすべき」 
②「利上げをやってはダメ」な理由
③コストプッシュ・インフレに対する短期の対策
④「利上げ」はインフレや円安の解決にはならない

 

①立憲「インフレ対策として利上げすべき」 


例えば、このあたりが普通の日本人が考えるインフレや財政支出、金利に対する感覚ではないだろうか。
もちろん彼らの感覚はほとんどすべて間違っている



「マネタリーベースを供給すると貨幣価値がさがる」論は、下記リンク先で簡潔に事実ではないことを解説している。
(ツイ主の青識亜論氏はマネーストックのことを言いたかったのかもしれないが、どちらの場合でも即時的にインフレになることはない。下記記事ではクルーグマンやイングランド銀行の「MBを増やしても銀行外に出ることはない」とする言説、またMSに関してもライシュ元労働長官の「賃上げが伴わなければインフレにならない」、そしてノーベル経済学者17人の「バイデンの財政支出はインフレを抑える」とする言説を引用した)

 

 

特に「利上げ」は絶対にやってはいけない政策となる。
立憲には「経済オンチ」と呼ばれないためにもぜひ考え直してほしい。
https://cdp-japan.jp/news/20220316_3275

立憲のそれ以外の対策は以下の小沢一郎事務所のツイの通りのようだが、「金融政策」のところに「2%物価目標の見直し」とある。
これが示すのはどういうことか未確認だが、彼らの方針には「政府日銀の協調(アコード)の見直し」との文言( https://cdp-japan.jp/news/20220603_3799)もある。
「過度なインフレになっているのに日銀が物価を上げるための金融緩和をやり続けるなんてけしからん!」という向きだろう。

 


「利上げ」に関しては泉代表が以下のように発言してしまっている。

 

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泉代表は、物価高を止めるためには金利を少し上げるのも必要ではないかということを岸田総理に問われた。
「今の円安、そして内外の金利差を、ただ放置しているというのは、まさにアベノミクスで自分たち自身をがんじがらめにしてしまっている。金融政策の幅を失っているということだと思いますので、このまま幅を失った金融政策をいつまで続けるのか。それを変えるということは、多くのエコノミスト、専門家も含めて考えるべきではないかというふうに、今、言っている局面だと思います。」
https://cdp-japan.jp/news/20220527_3745
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立憲のそれ以外の政策はこちらで説明されている。
https://elections2022.cdp-japan.jp/lifesecurity/01/

 

 

②「利上げをやってはダメ」な理由


さて、「利上げをやってはダメ」な理由を説明していこう。

まず前提知識として、量的金融緩和は、財政出動やそれに伴う賃上げや供給側の値付けが伴わなければ、物価に影響を与えることはないという事実を掴む必要がある。(一定の条件下における期待インフレの論理を完全否定するものではない)

下記は世界の貨幣総量(MB)とインフレ率の関係だ。相関してるようには見えない。


https://www.sankei.com/article/20171126-R2TBGLK7BVOOPNNYTILKPQG6I4/

他方で「金融引き締め」も同様にインフレ抑制になるとは言えない。

また、金利とインフレ率の相関関係にかんしても気になるところだが、そこは少し置いておいて話を進める。


現在の日本のインフレは「コスト主導型のインフレ(コストプッシュ・インフレ)」であることも抑える必要がある。
コストプッシュ型とは、コロナ禍や戦争の影響でエネルギー価格が上昇し、また供給網の混乱により輸入物価が上がることだと説明できる。
対してデマンド主導型のインフレ(デマンドプル・インフレ)というのもあり、これは景気が良く需要が旺盛な状態で、その需要に牽引される形で賃金や物価も上がるという現象を指す。
我が国は好景気で需要が旺盛で賃金が上がっている状況にあるだろうか?

「コスト主導型のインフレ」は、輸入品の高騰が主な原因であるので、中央銀行が利上げや金融引き締めをしても効果はない。
そのことはFRBのパウエルやECBのラガルドも指摘している。

 

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パウエル「私たちが直面している圧力は主に供給側から来ている」「私たちFRBは供給側に影響を与える能力があまりありません」

ラガルド「利上げしてもインフレを押し上げている原油高や供給の制約といった問題は解決しない」

https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12726392531.html
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この時点で「コストプッシュ型インフレ対策としての利上げ」が、完全な間違いであることがわかる。


立命館大学・松尾匡教授の発言を借りる。

 

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1)日本経済は総需要がまだ停滞している中にあり、コストが上がってもほとんどの企業が製品価格に転嫁できず、賃金部分も含む利益が圧縮されている。
金利が上がると、お金が借りにくくなって、設備投資需要などの規模の大きい買い物が抑えられてしまう。
特に、小さくて資金力の弱い企業ほど、設備投資を諦めてしまう。すると本来その支出先から波及していくはずの消費需要なども起こらなくなってしまう。

[中略]
3)コスト高でもたらされるインフレを止めるための根本的な解決法は、国内の生産能力を高めて、海外での価格上昇の影響を受けにくくなることである。
そのためには、今は設備投資をする必要があるのに、金利が高くなると上述のとおり設備投資の妨げになる。
https://note.com/matsuo_tadasu/n/n5f5e849af3c6
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利上げをすると銀行の貸出金利等も影響を受け、体力のない企業の資金調達が困難になり支出も抑えられるため、経済に悪影響を与えるということだ。

では、利上げをせずに、どうコストプッシュ型インフレに対抗すればいいのだろうか。
それは松尾教授が経済アドバイザーを務めるれいわ新選組が答えを出している。

以下は「短期のインフレ対策」となるが、れいわ新選組はほぼ完ぺきである。

 

 

③コストプッシュ・インフレに対する短期の対策



https://twitter.com/ppsh41_1945/status/1537371395679989760

「①消費税廃止」や「②ガソリン税ゼロ」はそのままインフレを軽減する方向で作用する。価格に乗せられた税率を除去するのだから価格が下がるのは当然だ。
そして即時的に物価が下がった状況では人々の需要が旺盛になるので、景気回復し、企業の値付けも価格アップに向かう。その時に初めてデマンドプル型のインフレ、つまり「良いインフレ」の状況が生まれるわけだ。


出所:れいわ新選組 参議院調査情報室シミュレーションより


コストプッシュ型インフレは、過去の経験則から一時的(1~2年)であることがわかっているので、景気回復した頃にはこちらも緩和されていることが予測できる。また、景気回復に伴い円安も適正化される。

世界ではこの「需要>供給」、もしくは「賃金>物価」の構図が作られているが、日本ではまったく達成できていない。




「③国民への10万円給付」に関しては、米欧でも同じようなことをすでにやっている。これは電気ガス料金高騰に対する助成などの形で講じられている。
そのため、何も突飛なことでもバラマキなどでもなく、物価高騰に苦しむ国民に対する当たり前の施策となる。

フランスでは既にこのような物価対策を行っている。(*岸田は検討に検討を重ねた結果、ほぼ何もしていない)


出所:cargoがIMF報告書などから作成

当然ながら、財政出動(MSの増加)してもそれが即時的なインフレに繋がらないことは、前出の記事( https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12714758976.html )などで何度も説明している。


ちなみに「短期のインフレ対策」があるのなら、「中長期のインフレ対策」もあるということであるが、それはまた次回にでも説明する。
端的には、エネルギー自給などを含めた「供給制約の底上げ策」となる。
 

 

④「利上げ」はインフレや円安の解決にはならない

これに関してはまず、「金利は政策変数である」事実を掴む必要がある。

例えば、以下のような財務省の「財政への信認低下で金利が上がる」という論理は、アホの極致である。
(これは日経新聞や各主流メディア、左右の識者たちも勘違いしている点である)


出典: 財務省 日本の財政関係資料(平成30年10月)「V.財政健全化の必要性と取組(PDF)」
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11247618/www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201811.html


財務省はギリシャの例を出しているが、これに対しては経済クラスタなら即時にツッコミを入れることができるだろう。
ギリシャには中央銀行がなく、ECB(欧州中央銀行)はギリシャ一国に対してピンポイントで金融政策を行うことは稀だということだ。
(コロナ禍ではECBは各国の国債を買い上げ金利調整し、買いオペを介し流動性供給を行っていたが、2008年のGFC時のギリシャは見捨てられた)

日本のような中央銀行を有する自国通貨発行国において「金利はマーケットの動向で決まる」などということは起こりえない。

このことは2020年以降のコロナ禍で証明された。


2020~2021年は、MMT派の理論が正しいことが立証され続けてきたのだ。

 


ここで気をつけなければいけない点は、当初は供給網のボトルネックで起こっていたインフレが、21年後半から需要増を伴うインフレになったことによって、アメリカ政府がビビッて利上げをしてしまい、結果として2022年にMMT派との分岐点が生じたということだ。

上記にあるように「財政支出しても金利は上がらない」ことは立証されている。
MMT派は、これについて「金利は政策変数である」ことを採用し、従前から指摘を重ねてきた。

昨今の利上げについて思い返してほしい。
別にマーケットが利上げの圧力をかけたから金利が反応して上がったのではない。
FRBが(たとえ悪手であっても)、「利上げする」と決定し、能動的に金利を上げたのだ。
つまり、ここでもMMT派の言う「金利は政策変数」が証明されている。


MMT派は、金利の上げ下げは経済に良からぬ悪影響をもたらし、かつ物価にはほとんど影響を与えないと考えているため、「金利はゼロに固定」することを推奨する学者が多い。

以下で確認できるように、「利上げすると逆にインフレになる」ことさえあるし、金利の調整ではインフレ率はコントロールできているとは言えないことがわかる。さらには、遅効性をともなって失業率が上がることも確認できる。


上図を含むMMT派やノーベル賞学者たち、または中央銀行家によるインフレに関する認識は、こちらの記事でまとめてある。

 

日本の長期金利とインフレ率の推移も確認しよう。


出所:三橋貴明
http://mtdata.jp/data_69.html


日米以外でも同じことが起こる。下図はブラジルの例である。


https://fil-affiload.net/finance-economy/brlinfo130213/

これは、これは企業が高い金利コストを価格に転嫁するために起こるとされる。

(コストプッシュ)インフレ対策として利上げすると、インフレを抑制できるどころか、逆にインフレになったり、必要以上に需要を低減させたり、失業率などの雇用の悪化にもつながることが確認できた。

「利上げ」はインフレ対策としても円安対策としても妥当ではないのだ。

結局、端的な形で山本太郎が発していたように、景気を底上げすることが重要なのだ。
彼が言っていることが、絶対的に正しい。
 

日本政府は、このような悲惨な状態を何とかするべきだ!!





以上、本日はここまで。

また次回。


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