前回の「コロナ禍でも国民殺しの緊縮財政を後押しする立憲議員」の続きになります。
財務金融委員会の様子をお伝えします。

  *本投稿は「コロナ禍でも国民殺しの緊縮財政を後押しする立憲議員」と対になっています。立憲議員を無条件で絶賛しようという意図のもと書いたものではありません。

立憲には緊縮派だけでなく、反緊縮派の議員も多く存在していますので、希望の光となる彼らにも焦点を当ててみたいと思います。

まずは末松義規議員から。

24日の財金では、会社法改訂に際する株式交付制度創設に関わる株対価M&Aに関する措置により、外国人株主が中小企業を間接的に買収できる件について追及しました。
 *24日衆院財金の末松議員の質疑(時間指定)→ https://youtu.be/vT2yWJ5gGkU?t=18130

26日の財金では、「政府が支援して最低賃金を上げ、需要を温めて経済の好循環を求めるべきだ」と極めてまともなことを言っています。
 *26日衆院財金の末松議員の質疑(時間指定)→ https://youtu.be/sV9OmcnOzzQ?t=634

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そして長谷川嘉一議員。
 

 


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最後に日吉雄太議員の質疑に焦点を当てます。
これは、かなり良い質疑だったので、全体を要約します。

 

▼ 2月24日 衆議院財務金融委員会(国会中継)
https://www.youtube.com/watch?v=vT2yWJ5gGkU
 5時間44分頃から日吉議員の質疑
   ()内はcargoの捕捉と疑問

● 日吉議員:
基本的事項を確認します。
日銀にお聞きします。インフレを起こすためには貨幣流通量を増やすことと、需要を増大することが考えられますが、これについて簡潔に説明ください。

〇 日銀企画局長・清水誠一氏:
インフレ率は、経済のマクロ需給ギャップと、中長期的な予想物価上昇率によって決まるというのが標準的な見方です。
日銀の金融緩和はMBをインフレ上昇まで増やし、予想物価上昇率を上げるための施策です。
実質金利(名目金利 - 予想物価上昇率)を下げるため金融緩和を実施し、受給ギャップを改善し、インフレ率を上げます。
物価が持続的に下落するデフレではない状況を作りました。

● 日吉議員:
「MBを増やし金融機関の貸し出しを刺激、MSを増やし、物価上昇させる」ということですが、金融機関が貸し出しをすることによって預金という貨幣(金融機関にとっての負債)が増えます。
貨幣が増える仕組みはこれであってますか?

〇 内閣府大臣政務官・和田義明氏:
議員ご指摘の通り、銀行の信用創造が行われると預金などの信用貨幣を増加させます。

● 日吉議員:
日銀や民間銀行の振り替え処理を除くと、政府が政府預金を支出して純資産を減らすことによって、民間非金融機関の預金が増えて純資産が増えます。
財政支出をすると世の中にお金が増えていくということでよろしいでしょうか?

〇 財務副大臣・伊藤渉氏:
政府が浮遊する預金(MS)を用いて非金融機関に支出を行うと現預金(MS)が増加します。
一方で政府はそうした支出に必要な政府預金を得るために租税の徴収や国債発行等を行う必要があります。
その過程において法人や個人の現預金(MS)が減少することもあります。
資金調達手段によってMSの増減が変わることにも留意が必要です。
なお、支出のために発行した国債を銀行が購入する場合には、銀行による信用創造を通じてMSの増加につながりますが、あくまでも金利水準等をふまえた金融機関の主体的判断によるものです。

● 日吉議員:
今のお話は、政府支出によってMSは増え、徴税によってMSは減るということですね。
日銀にお聞きしたいのですが、量的金融緩和を行ったのに目標のインフレ率に達しません。なぜでしょう?

〇 日銀企画局長・清水誠一氏:
金融緩和でデフレではない状況ができたが、2%目標は達成されていません。
今までの賃ぎにゃ物価下落の慣行から下方への期待形成が多いのと、原油価格の下落で期待が下がったことが考えられます。

● 日吉議員:
日銀が量的金融緩和をしても、日銀・政府・金融機関部門の間のお金が増えるのであって、民間非金融部門のお金が直接増えるわけではありません。
(国債)金利が下がることで貸し出し金利が下がり、借り入れがしやすくなる環境が整えば、民間非金融機関の借り入れが増えることはあり得ますが、直接世の中のお金が増えるわけではありません。

民間金融機関からの借入がないということは世の中にお金が生まれないということです。
資本主義の前提として借入が行われることは不可欠ですが、この借入を増やす手段はあるでしょうか?

〇 内閣府大臣政務官・和田氏:
仰る通り、借入・信用創造が増えないと社会にとって大きなマイナスになりかねません。
政府としては、官民金融機関に対して、迅速かつ積極的な新規融資を実施するよう促しています。

コロナ禍の無利子・緊急小口資金の事業において、政府系金融機関は7兆から15兆円に、民間金融機関は3兆から17兆に貸し出し残高が増えました。

● 日吉議員:
借入を増やすためのサポートの制度があるのはわかりますが、(企業が投資するための)借入を増やす手立てがないんじゃないかという思いもありまます。

次の質問ですが、今回、財政赤字が大きくなりましたが、これは政府の収入より支出が大きいからおこっているわけなので、インフレにつながるはずではないでしょうか?
ところが財政赤字が多いのにインフレになっていません。この理由は何でしょうか?

〇 麻生財務大臣
財政赤字とインフレのリスクについてですが、インフレはマクロ的な需給のバランスや家計や企業のインフレ予想など様々な要因で決まりますので、財政政策だけを理由にはできません。
日銀が言ったように長期の低成長・デフレで企業や家計のマインドが変わらない、そして賃金はこの数年で1%2%と上昇したが、価格上昇に繋がらない。
ヘリマネすれば物価が上がると言う方もいますが、現実としてそうなっていない。
したがって、財政運営の信認が失われ、国債や円の信認が失われると、インフレになることは十分にあるため、経済再生とか財政健全化と伴ってインフレも少しづつ進ことが理想です。

● 日吉議員:
財政政策だけでインフレは説明できないとのことでしたが、お金が貯蓄に回るとかでなかなか動いていないことが理由の一つ、それとPB黒字化を目指すということは支出より税収を増やすことであって、世の中のお金を少なくする政策ということがもう一つあります。
消費税で税収を増やす事もその例で、特に消費支出を減退させることでデフレに向かうような政策を行っているのではないでしょうか。
質問ですが、PBの黒字化は世の中のお金を少なくする政策ですね?

〇 麻生財務大臣:
ご指摘の通りですが、足元で国と地方のPBが赤字になって、政府は借り入れ過多の状況にあって、一方で家計と企業は貯蓄過多の状況にあります。
したがって、財政の持続可能性の維持のためには、政府の借り入れ超過を解消すると当時に、消費や投資の拡大につながる経済の好循環を実現していくなかで、民間の貯蓄過多を減少させることも期待されます。
これは消費が起こり賃金が上がるということですが、こうした民需主導の経済成長を実現するなかでPBの黒字化のみを論じることは適切ではないと感じております。
いずれにしても、デフレ脱却して持続可能な財政を確立します。

● 日吉議員:
PBの黒字化と税収の増加がデフレに向かう政策であることが確認できました。
その国債残高が増えているのに金利がどんどん下がっていますが、なぜでしょうか?

〇 財務副大臣・伊藤渉氏:
国債発行額は国債金利に影響を与えるひとつではありますが、国債金利は経済財政、海外動向など様々な要因を背景に市場において決まりますので、市場動向への混乱を避けるため言及は避けたいと思います。
一般論ではあるが、国債発行額が増加すると国債市場での需要が緩み、国債利回りの上昇圧力にはなると考えています。

● 日吉議員:
国債利回りの上昇圧力になると言いますが、実際は下がっていますよ。
この解釈として、国債を発行して財政支出をするとお金が増えます(通貨の純増のこと?)が、お金が増えたから国債の金利が下がって、国債の価格は高いままなのではないかと思います。

長谷川委員が先日質問した件ですが、平成14年の外国格付け会社宛て意見書では「日米など自国通貨建て国債のデフォルトはありえない」としていますが、これは経済の動向によってインフレなどになることはあるが、国債自体を償還できなくなることは自国通貨建てなのでありえないという理解でいいすか?

〇 財務副大臣・伊藤渉:
(ごちゃごちゃ…)日本の財政健全化を否定したものではありません。(ごちゃごちゃ…)財政健全化と経済再生に努めます。

● 日吉議員:
私の質問に直接答えてませんが、可能性としてはインフレはあると思いますが、償還は可能なはずです。
ところで財政規律、PB黒字化や対GDP比債務残高の目標を達成するとどんな社会になってると思いますか?

〇 麻生財務大臣:
漠然とした質問だが、財政健全化と経済再生の両方を実現する必要があります。
少子高齢化が進んでいるので、社会保障の安定などで国民を安心させなければいけないと思っております。

● 日吉議員:
PB黒字化で倹約すると、教育や防災、インフラ、科学に十分なお金を使えず、企業も投資が進まないし賃金も下がる、いっぽうで高所得者や大企業は剰余金を増やすが国際競争力は弱くなる、という世の中になると思います。
それでも国債残高は減らず、「財政規律を守ろう」と言い続けているような将来が来る気がします。
根本的な改革のためにはお金を使おうと考えたほうがいいのではないでしょうか。
その前段階として333兆円の富裕層の貯蓄つまり純資産、企業の534兆円という剰余金を投資に回す、課税をするようにして、中低所得者には消費税を減税、当面廃止し、消費を増やすことでお金を流通させることが必要ではないでしょうか。
そこで、今回の税制改正によって、需要を増大させるような策は何があるのか教えて下さい。

〇 財務省主税局長 住沢整:
デジタルやグリーンなど企業の投資を促す様々な税制の措置を講じています。
これらの措置で経済構造の転換を行います。

● 日吉議員:
投資をしようとしている人は支える措置はするようですが、需要のないところに公共投資することが大事ではないでしょうか。
例えばワクチン供給体制を整える投資とかは世の中の訳に立つと思いますが、世の中が必要としているところにお金を回すべきじゃないでしょうか。
財政規律を守ることありきではなく、格差を是正したり、世の中を良くするためにどれだけのお金が必要なのかを議論することが大事ではないかと思います。
その結果として、税制が増え、財政健全化も達成でき、債務残高の設定できるのではないかと思います。

〇 麻生財務大臣:
選択と集中、ワイズ・スペンディングで生産性の高い企業を支えるために予算を重点化して頑張ります。

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日吉議員は、26日には「金融所得課税の総合課税化(一億円を超える所得への課税率が下がる問題)」や「消費税の税収は社会保障向けの歳出として区分されているか」という問題を扱いました。
 *26日衆院財金の日吉議員の質疑(時間指定)→ https://youtu.be/sV9OmcnOzzQ?t=5997

消費税の税収が行方不明である件についてを説明します。

 


つまり、この質疑でわかることは、財務省は「税収の総額からどの部分が社会保障費に充てられているかわからないが、法律上は消費税収は全額社会保障費に充てられることになっているので、消費税は全額社会保障費に充てられているとしている」と、言い張っているということになります(笑)
もう少し細かく説明しましょう。
 

私が以前作ったスライドですが、要するに消費税収の使途は不明なのです。

財務省のロジックは、上記スライド右下部の財務省の「令和二年度の消費税収の使途」の通り、消費税収総額31.5兆円のうち、(地方分等を除いて)国が使える17.5兆円分は、社会保障4経費分の44.5兆円より少ないことから、消費税収は全て社会保障に使っているのだという扱いにしています。
しかし、実際は、国の総税収63.5兆円のうち、どの部分が社会保障費に使われているかは、税収ごとに区別していないのでわからないということです。

この後に、日吉議員は「自国通貨建て国債が償還できなくなる場合があるのなら、どのようなときか?」と質問し、麻生大臣は「財政に対するマーケットからの信認があって国債が買われている。信認が失われると金利が上がる、すると資金調達が難しくなる。MMTは日銀が国債を買い受けるから破綻しないと言うが、金が印刷されるとインフレになる。だから持続可能性を考えて、PB黒字化などで財政を運営しなければならない」と答えます。

麻生大臣の見解が間違っていることは、当ブログを見てくださっている方にとっては即座におわかりかと思います。



長くなりましたが、以上です。

ダメな議員には「それは違う」と批判し、良い議員には「もっとやれ」と応援する、そういうメッセージを彼らには送りたいもんですね。

概観として、立憲は「財政規律を守れ」派が7割、「財政規律ありきじゃなく国民を護れ」派が3割と、分裂している印象ですが、党内のガバナンスはいったいどうなっているんでしょうかね。

これが意図的なのであれば、政府に対する「北風と太陽」作戦と言えなくもないけど、いずれにしてもコロナ禍で苦しんでいる国民が多数いるのに「財政規律を守れ!」は許されないことですよね。


最後までご覧いただきありがとうございました。

では、また次回。

cargo



【おまけ】
財金所属ではないけど、落合議員と中谷議員は期待の星ですね