▼慶応大学名誉教授・金子勝氏の「山本太郎は首相になりたいならトンデモ論と手を切れ」への反論(前)
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12581173400.html
 
本記事は、上記投稿の続きとなります。

金子勝教授への反論という構図になります。

 

 

〇金子氏「法人税減税があっても、内部留保や配当を増やして労働分配率を減らしてきた」

 

→ 法人税は人件費や配当を支払った後の利益にかかるものであるので、法人減税されても労働分配率を下げたのであるなら、増税する場合においては、企業のインセンティブが設備投資等に向かう可能性のほうが高いと思われます。経営者は、増税で余計に徴税されるよりもリソースへの投資により利潤を稼ごうという向きになります。
 
出典: @huit8elimi250v 氏
 
 
〇金子氏「97年の金融危機以降、より賃金の安い非正規労働雇用が拡大し、賃金水準はひきさげられた」
 
→ だからこそ、山本氏は非正規を減らし、正規雇用(公務員など)を増やすように提案しています。
 

出典: 山本太郎 https://blogos.com/article/266074/
 
 
〇金子氏「大企業増税は絵に描いた餅。れいわの法人税増税はインフレ率2%になった場合に限られるが、永遠にインフレ率は2%にならない」
 
→ まず野党全党が「法人税・所得税の累進化で大企業・富裕層への増税を」という向きのコンセンサスを得ているはずですが、それを否定するのでしょうか。
そして再度ですが、れいわは「インフレ率2%になったら法人増税」などとは一切言っていないので、デマを吐かないようにしていただきたい。厳重に警告したい。
 
 
〇金子氏「れいわが”悪用している”MMTにおけるJGP(ジョブ・ギャランティー・プログラム=総雇用保証)では、失業問題を是正するために財政支出で若者や移民を雇用する。それにより格差を是正し経済成長をもたらす。経済成長してインフレになると増税して発行した貨幣を吸収する」
 
→ JGPによりインフレにして、増税で貨幣を吸収?? 頓珍漢な解釈過ぎてまったく腹立たしいですが、そもそもMMTにおけるJGPは、JGP自体がビルトインスタビライザー(景気自動調整機能)を有するものであり、あくまで雇用と需給の安定を目的としているため、物価上昇させることだけを目標とはしていません。JGPの枠組みのなかでは徴税は出てこないし、雇用の安定化を通してショックアブゾーバーとするという議論となります。
金子氏による「増税で貨幣を吸収」というのは、おそらく累進課税によるビルトイン・スタビライザーのことで、JGPの仕組みと混同してしまっていると思われます。
 
 
〇金子氏「れいわのブレーンとされる人たちが、アベノミクスのインタゲ論で失敗し、その責任を逃れるためMMTを悪用して乗り換えた」
 
→ 「ブレーンとされる人」とは松尾匡・立命館大教授のことでしょうが、この点に関しても頓珍漢すぎて閉口せざるを得ません。アベノミクスのインタゲは金融政策のみで物価をコントロールしようというものですが、松尾教授の案は当初からポリシーミックスであり、財政政策もその両輪として提案しています。そしてこれは山本氏も採用するところですが、物価変動は主に需給により決定されるため、金融政策のみに依存しようとしてはいません。
言うまでもなく、アベノミクスのインタゲが失敗したのは、金融政策偏重だったためであります。
 
 
〇金子氏「MMTの枠組みを悪用することでその失敗を反省せずに、永遠に財政赤字を膨らませることが正当化できる。MMTで財政支出するのはJGPだ」
 
→ まずMMTも山本氏・松尾教授も「永遠に赤字を膨らませる」ことなど一切主張してはいません。需給と物価変動(率)を見ながら適度に財政政策を講じる(不況で需要減の時は財政支出)ことを主張しているに過ぎません。
そして、金子氏の脳内では、なぜかMMTの財政政策をJGPに限定しているようですが、これもまったく間違えています。
消費税は、病人から貧乏人、子どもから年金暮らしの高齢者にまでかける悪税そのものでしかなく、この悪税の逆進性、不公平性を除去しようとするのは、MMTの主張と一切相反するものではないし、MMTのチャーターメンバーのケルトン教授やミッチェル教授も消費減税には賛成しています。
金子氏にはランダル・レイ教授の「MMT」を再読することをお勧めします。そこにBAD税とGOOD税の違いが書いてあるから。
 
 
〇金子氏「なぜ山本さんはJGPを消費減税にすり替えたのでしょう?それはアベノミクスの残党たちが、その失敗の原因を消費増税のせいにしているからです」
 
→ すり替えるも何もまったく別の議論です。
ちなみに、山本氏はJGPを採用まではしていないが、「公務員の増員による、不況時の雇用安定と物価下落の歯止め」には言及しているので、JGPの議論に関しても理解していると思われます。
 
 
〇金子氏「1997年に5%に増税された時には、バブルが崩壊して金融危機が起きたことから景気を悪化させた。消費税が経済を壊したのなら、税率が20%に達する北欧諸国はとうに経済破綻している」
 
→ 90年代後半以降のわが国の景気低迷は、バブル崩壊の余波に加わり消費増税のショックが起因となったという事実であります。これは、先述した藤井教授の実質消費支出グラフの、消費増税毎に起こる消費支出の鈍化傾向からも容易に判断できます。
また北欧が高消費税制であるにも関わらずその影響を受けない理由については、まず、北欧は日本と比べたときに国税全体に対する消費税の寄与度が同等程度であることを理解しなければなりません。
そして食品や日用品にかかる軽減税率も低率に抑えられているため庶民の消費支出への影響も軽微であるという特徴があるうえ、化石燃料排出国や輸出依存国であるというお国柄の違いもあることが挙げられます。
金子氏の議論はまったく暴論に過ぎないと言えます。
 
国税に対する消費税収はすでにデンマークを上回っている 
出典:editor http://editor.fem.jp/blog/?p=3375
 
画像⑬ 出典: http://hakka-pan.blog.jp/archives/14540948.html
 
 
〇金子氏「国債発行に依存した消費減税はハイパーインフレの可能性を高めます。もちろんハイパーインフレは、貨幣供給量を増やしただけでは起きず、戦争により供給上のボトルネックが生じた場合、デフォルトの危機が発生して通貨が暴落する時に起きるため、めったには起きません。しかし産業衰退が起きている状況で、国の借金が1000兆円を超えているため、経済が成長して物価と金利が上がると、国債価格が暴落し、財政も破綻し、たちまち経済も破綻してしまいます。つまり景気が良くなったとたん、経済が破綻してしまうのです」
 
→ 論理飛躍し過ぎていてもはや何を言っているのかまったく理解できません(笑)が、「ハイパーインフレはめったに起きないが、戦争でハイパーインフレが起きる可能性が高まる」という話は、なにか山本氏が戦争体制を構築しようとしているとでも言いたいのでしょうか。
もし産業の衰退というものが、供給能力の毀損された状態と同等であると言いたいのなら、腐ってもGDP世界三位の実力を持つわが国の供給体制がそれほど脆弱であるとはまったく考えられません。
また、「景気が良くなったら金利が上がって経済が破綻する」とのことですが、金利が上がり国債価格が下がる状況というのは、もちろん景気が良くなっている時ですから、その時には設備投資欲も復活し、経済の好循環がより発揮されているのではないでしょうか。
 
 
〇金子氏「日銀が国債購入をやめたとたんに、国債も株価も暴落し、金利が上昇して財政も破綻する」
 
→ 要するに日銀が金融オペをやめたらどうするんだ?ということですが、中央銀行が国家を破綻させようという向きでオペレーションを講じるような国が存在したのであれば教えていただきたいです。
 
 
〇金子氏「世界的なバブル崩壊が生じた場合は、先進諸国の中央銀行が金融緩和策を取るので、日銀にはすでに取るべき政策手段がなくなっている」
 
→ 現在の世界的なコロナ不況で米国のバブルは崩壊しかかっていますし、FRBは緊急の利下げに踏み切ったので、これは現実に起きていることです。なかなかまっとうなご指摘に思えます。確かに、実際にゼロ金利下において、日銀が取れるべき金融政策手段はほぼ残されていません。しかし、ケインズ派・MMT派としては「財政政策をやればよい」と答えるだけですし、不況時には公債を発行し、財政支出し、減税するだけです。そう、中学校の教科書で言っているように。
 
 
〇金子氏「財政赤字は民間貯蓄の黒字と経常収支の黒字でまかないます。ISバランスから見ると高齢化で民間貯蓄は大幅に減少しつつあります。企業にもイノベーションがなく国債競争力がない以上、いずれ減少するでしょう」
 
→ 金子氏は、いわゆるSFC理論(ストック・フロー・コンジステントモデル)と信用創造システムを理解していないようです。政府の赤字支出が市中銀行によるファイナンスで賄われていると誤解しているのでしょう。政府の財政赤字の原資は、政府自身が支出することで創造されるので、民間銀行の預金からはマネーを借りてはいません。国債を購入する資金は日銀が供給している準備預金(日銀当座預金)ですので、政府支出により通貨は増えますが、準備預金の量は変わりません。
このポイントを理解していないということは、MMTや貨幣創造、またその循環の事実をまったく理解していないことになります。
参考: 京都大学特任教授・青木秦樹「MMTの信用創造過程 」 http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/documents/mmt_201911_aoki.pdf
 
 
〇金子氏「対外ショックで円高になれば、たちまち所得収支も赤字化し、外国人投資家に日本国債を大量に買ってもらわなければならなくなる」
 
→ 海外要因で金利高騰したり円高になったりと忙しい人ですが、まったく意味不明です。
民間銀行が預金通貨で国債をファイナンスしているという誤った視点を持っているので、国内の民間貯蓄が減ったら、そのぶん国債を買うお金がなくなり、外国人が国債を買うだろうという認識になってしまうのでしょう。
また、仮に円高になったとしても、その絶好の相場を逃す投資家が皆無であると想定することは考えられませんので、必ず円安反動の相場になります。
 
 
〇金子氏「1990年代にはトリプルAだった日本国債の格付けが、放漫財政でBランクに落とされるのも避けられない」
 
→ 海外格付け機関は、単なる民間の営利企業ですので、基本的にはポジショントークしかしません。しかもその格付け基準は自国通貨建て国債か外貨建て国債かの区別をつけない、あまり意味のないものです。
財務省でさえ、過去の格付け機関の格下げに反論し、「自国通貨建て国債では破綻やハイパーインフレは起きない」と憤慨しています。
(参考:財務省「外国格付け会社宛意見書要旨」  https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm)
 
 
〇金子氏「れいわは財政赤字が減っていると言うが、日銀に政府赤字を付け替えているだけ」
 
→ 山本氏は「財政赤字が減っている」などと一切言っていません。新規国債発行額が年次で減っているとは言っていたと思います。もしくは「債務対GDP比が減っている」ではないでしょうか。
ちなみに、ケインズ派はこのデフレ不況にあって新規国債発行と政府支出を抑えることは、逆に批判しています。
また、中央銀行が「最期の貸し手」であることはマクロ経済学の常識であり、日銀が国債を引き受けるのは当然のことです。
繰り返しになりますが、政府の債務は日銀の資産であり、資産を保有するにあたって所得する通貨発行益は再び政府国庫に納入されるだけです。
 
新規国債発行額は減少基調にある
 

債務対GDP比は年々改善傾向にあり、とうとう米国よりも改善してしまった 
出典:財務省  https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j01.htm
 
 
〇金子氏「日銀がマイナス金利の国債を償還するだけで約13兆円の赤字が出てくる」
 
→ 金子教授は満期到来国債がどのような経路を辿って消化されていくのかご存じないようです。日銀の保有する満期到来債は政府に買い取られ、新規の借換債として発行されます。政府がその満期到来債を買う資金は民間金融機関から調達されますが、その民間金融機関が購入した借換債は、かならず日銀に買い取られるという約束(売現先取引)のもと発行されていますので、何の問題もなく消化されていきます。つまり、実質的な永久債状態です。
(参考: 富山大名誉教授・桂木健次「政府債務の償還と財源の通貨発行権」https://www.slideshare.net/kenjikatsuragi1/2016513
 
 
〇金子氏「破綻するまでバラマキの利益を享受するのは今の食い逃げ世代であるのに対して、負担するのは未来の世代だということ」
 
→ いい加減にしていただきたい。金子教授のような緊縮バラモン左翼と、小泉・竹中・安倍のような売国ネオリベ右翼の世代がこの国を衰退化させ、後世に残る傷跡を残したのです。自分の罪を若い世代になすりつけないでいただきたいし、新しい経済理論を学ぶ意志や能力がないのなら、せめて論壇から引退し口をつぐんでいただきたい。社会にとって害悪でしかありません。
 
 
〇金子氏「れいわは産業を石炭火力エネルギー中心でやろうとしている」
 
→ 「石炭」など一言も言っていません。デマはやめなさい。
れいわ新選組は、この悪質なデマを岩波と金子氏に訂正し、謝罪するよう要求すべきです。
そして、山本氏は再生可能エネルギーにも投資し、研究・実用化を進めるべきだと何度も発しています。
 
 
〇金子氏「電力会社を解体し、発送電を分露し、社会の仕組みを変えよう。日本の異常に高い公共事業支出と異常に低い教育研究投資のコントラストを逆…していくべきだ」
 
→ 電力会社を解体する必要はありません。東電などは国営化し、公務員としての雇用を創出、また電力自給率を上げるべく再エネに投資し、グリーンニューディールとして国策の公共事業とするべきでしょう。すでにグリーンニューディールは欧米では主流の議論になっていますので、金子氏は一周遅れの議論をしているヒマがあったら最新の情報に触れるべきだろうと思います。金子氏の提唱する民営化・自由化案はすでに過去の汚物、いや遺物です。
また、「日本の異常に高い公共事業支出」というのも、完全な事実誤認にもとづく発言ですので改めなければなりません。
そして、金子氏は、地域経済に関しても、自由放任に任せていればイノベーションが生まれて、経済発展するかのようなネオリベ志向に侵されているようですが、このデフレ不況下においては、どんなに供給体制を増やしても需要は勝手に生まれませんので、政府が支出して需要・供給ともに支えていくことが肝要かと思います。
 
 
〇金子氏「山本さんが本気で首相になりたいと言うのであれば、ガラパゴス的な政策と気候変動をめぐるトンデモ論と一刻も早く手を切り、未来の『われら』の側に立つことです。
 
→ 本ブログポストをご覧いただけた方は、どちらがガラパゴスでトンデモなのかご理解いただけたと思います。
 
 
以上、ご覧いただきありがとうございました。
またつまらんモノを切ってしまった。
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