先月、日経で共産党・志位委員長が、コービンやサンダースを例にとり、「修正グローバリズム」の必要性を訴えていました。


2016 12/5 日経

サンダースは税制の不公平性の緩和などを主張しており、財政政策に関しては、コービンよりややマルクス経済学に寄っていますが、コービンは明確に「金融緩和と財政出動」をその政策の主軸としています。

本日はコービン氏が主張する「国民のための量的緩和」をもう一度検証したく思います。


その前に「コービンってこんな人」っていうのをよくあらわす記事がありますので、まずは紹介させてください。
 
▼ Jeremy Corbyn: 9/11 was 'manipulated'
(ジェレミー・コービン「9.11は操作されたものだ」)
http://www.telegraph.co.uk/news/politics/Jeremy_Corbyn/11892383/Jeremy-Corbyn-911-was-manipulated.html


http://www.telegraph.co.uk/finance/economics/11877247/Warning-to-Corbyn-money-printing-always-ends-in-tears.html

【抜粋、翻訳】

「9.11は操作されたものだ。 ブッシュやブレアは中東に攻め入るために911を利用した」

「湾岸戦争はNew World Order(新世界秩序)の開幕戦だった」

「白人富裕層は、武器の取引を通じて、現在の経済秩序を維持している」

「米国の戦争の目的は、欧米の銀行や多国籍企業が支配する世界秩序を維持するためだ」

 


はい、完全にこっち側の人ですね。

信用できる人物でしょう。

日本のマスコミはいまだに「陰謀論はデマだ」というむきでプロパガンダを垂れ流していますが、イギリスの次期首相がその陰謀論者なんですよねえ。

こういう世界の潮流を知らないままに、市場原理主義をもって主流派にくっついて安心していると、Brexitやトランプ現象のように情勢をひっくり返され、あたふたしかねません。


さて、コービンの「国民のための量的緩和」ですが、緊縮財政や増税などしなくても、必要な場所に必要なお金を供給できるといいます。

しかし、日本語での情報がとても少ないので、そのメカニズムの全貌を掴むのが大変です。

日本ではまだまだ自民党も民進党も前世紀的な「緊縮財政によって財政をどうにかしよう」という政策しか提案できていませんし、マスコミも「社会保障費が足りないので増税止む無し」というようなプロパガンダを繰り返していますから、、国民の関心も低く、情報が少ないのもうなずけます。

本来なら、日本の経済学者や評論家が翻訳し、わかりやすく解説すべきなのでしょうが、コービンの「国民のための量的緩和」に関してのきちんとした解説情報がほぼ皆無なので、私のような単なるミュージシャンが翻訳し解説しなければなりません。

次のイギリスの首相になるかもしれない労働党党首のコービンが、その政策の主軸にすえているものなのに、まったくおかしな話ですよね。
よほど都合が...(ry

とにかく、それほど知識人を含めた日本人には「信用創造」に関する知識が欠如しているということなのでしょう。

 
▼ 人々のための量的金融緩和政策
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E3%80%85%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96

【抜粋】

人々のための量的金融緩和政策(En:People's Quantitative Easing (PQE)もしくはQuantitative Easing for People[1])とは 中央銀行であるイングランド銀行がスターリング・ポンドを発行して、そのお金で公的サービスに投資をするものである[1]。

(中略)

基本的な理論に目新しさはない。 中央銀行が紙幣を新規に発行することで政府が財源を調達するという理論は(類似した理論も含めて) 昔から多くの人が考えていたことである。

はい。 Wikiもなんにも説明していませんね。

実際のメカニズムに関しての記述は、わずか数行。

その説明も適当すぎてイミフで、腹立つレベルの酷さです(笑)


英語版のWikiページも調べてみましょう。
 
▼ People's Quantitative Easing
Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/People%27s_Quantitative_Easing

こちらも記述量は少ないですが、ある程度ヒントもあります。

日本語版Wikiでも批判箇所が多く見られたように、英語版でも"economically illiterate(経済的に盲目)"と大々的に批判されていますが、メカニズムに関する部分を抜き出します。

Corbyn proposes to have the Bank of England create money to invest in housing and public transport, (中略) the Bank would purchase bonds for a state-owned "National Investment Bank".[5][6]

コービンはイギリスの中央銀行であるイングランド銀行に金融緩和させ、その投資先として住宅や運輸事業などを見込むつもりで、(中略)イングランド銀行は国債を”国立投資銀行”のために購入する予定だ


 Difference from helicopter money[edit] (ヘリコプターマネーとの違い)
Economics professor Simon Wren-Lewis explains that the difference between PQE and Milton Friedman's helicopter money (which some people also call "QE for the People"[9]) is that instead of central banks distributing newly created money directly to individuals, creating consumption demand without involving government, PQE finances investment projects that are to some extent at least initiated by government. So PQE impinges on central bank independence.[10]

(経済学者Simon Wren-Lewisは、コービンの「国民の為の量的緩和(PQE)」とミルトン・フリードマンの「ヘリコプターマネー(こちらも国民の為の量的緩和(QE for the People)とも言われる)」の違いについて説明する。 コービンのPQEは中央銀行が新しく創造したマネーを直接的に各関係省庁に供給する替わりに、政府が関与することなく、消費需要を作り出す。PQEは、少なくともある程度まで政府によって管理された投資プロジェクトである。つまりPQEは、中央銀行の独立性と衝突することにもなる。)


以上の項以外は、ほぼ「経済破綻をもたらしかねない」、「急激なインフレと金利上昇をも招く」という向きの主流経済学者からの批判で埋め尽くされています(笑)が、最後にこのような記述もあります。

In August 2015, Corbyn stated he had had messages of support on his economic policies in general from economists Paul Krugman and Joseph Stiglitz.
(2015年8月に、コービンは彼の経済政策に関しての、クルーグマン教授とスティグリッツ教授の支持もとりつけた

以前にも私のブログでご紹介した通り、ノーベル経済学賞受賞学者であるクルーグマン教授とスティグリッツ教授の2人の意見は、かなり信頼できると判断します。
http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12146292550.html
 


 *注 【用語】

: ヘリマネ
ヘリコプターマネーは、「ヘリマネ」とも呼ばれ、ある日、ヘリコプターが飛んできて、空から現金をばらまくように、中央銀行または政府が対価を取らずに大量の貨幣を世の中に(市中)に供給する政策をいいます。
具体的には、中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行などが該当します。

一般に中央銀行は、民間金融機関から国債やCPなどの資産を買い入れる対価として貨幣を供給しますが、一方で金融機関への貨幣供給をいくら増やしても、デフレや不景気などで金融機関の融資が伸びなければ、市中のマネー(お金)の量は増えません。このような状況に対して、世の中のお金の量を確実に増やせる手段として「ヘリコプターマネー」が考案されました。

ヘリコプターマネーは、実際に空からお金をばらまくのではなく、具体的には以下のような手法で行われます。
・政府が直接貨幣を発行する政府貨幣
・財政支出の金融政策によるファイナンス
・政府債務を貨幣の発行により償還する債務マネタイゼーション
・中央銀行が家計に直接貨幣を支給 他


【出典】 i Finance
http://www.ifinance.ne.jp/glossary/global/glo215.html
: 財政ファイナンス
財政ファイナンスは、「国債のマネタイゼーション(国債の貨幣化)」とも呼ばれ、国(政府)の発行した国債等を中央銀行が直接引き受けることをいいます。これは、中央銀行が政府に対して、マネー(資金)をファイナンス(供給)することであり、政府の厳しい財政状況において、財政赤字の拡大や穴埋めの支援策として、中央銀行が直接協力することを意味します。

一般に財政ファイナンスを行うと、その国の政府の財政節度を失わせると共に、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こす恐れがあり、そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も大きく損なわれるため、先進各国では、財政ファイナンスを制度的に禁止しています

【出典】 i Finance
http://www.ifinance.ne.jp/glossary/japan/jap130.html
 

なんとなく見えてきましたね。

ではコービンのPQEは、いったい普通のケインズ主義的な「金融緩和&財政出動」方式と何が違うのでしょうか?


長くなってきたので、この続きは次回にまとめてみます。


ご覧いただきありがとうございました。


cargo
 

 

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【重要】英首相候補コービンの討論動画を翻訳してみた 前編

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http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12281404484.html

英労働党党首コービンの「国民のための量的緩和/People'sQuantitativeEasing

http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12243351541.html

英労働党党首コービンの「国民のための量的緩和/PQE」②

http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12244394450.html

英労働党党首コービンの「国民のための量的緩和/PQE」③

http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12246007801.html