トラブル修理-ボルボ V50(MB4204S) 走り始めて500mでギア抜けして走らなくなる | フリークのブログ

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「それって幾らになるの??」にも、明確にお答えします(^^)

今回のボルボさん、

兵庫県の淡路島からHELPコール頂きました。

 

 

現状に至るまでの経緯は、

 

①変速ショックがあったから、中部地方にある整備工場にて修理してもらった。

 

②完成したので引き取りに伺い、工場を出発して500m程走った所で、アクセルを踏んでも全く進まなくなった。その時は、どのレンジに入れても空ぶかしになるだけで全く動いてくれない。

 

③動かなくなってから10分くらい後、再び動くようになったから整備工場に戻った。

 

④原因はDCTフルードフィルターの詰まりだという事でフィルター交換をして貰い、その後はどうにか自宅までは帰れたけど、自宅周辺を乗ってみてもギクシャクとショックが酷過ぎて乗るのが恐い。

 

 

という経緯でのご連絡でした。

 

 

何だか、ゲトラグDCTあるあるみたいな感じですが・・・

 

ぼんやりと、「原因はあれかなぁ」なんて考えながら、

レッカー搬送にてお預かり。

 

 

 

こうしてみると、結構綺麗な赤色。

ボルボの赤で少し深みのある赤は、名前が「フラメンコレッド」というそうです。

情熱の赤!っていうイメージがしますね。

 

 

さて、早速診て行く訳ですが、

お客様が「500m位で止まった!」と言われていましたので、まずは試運転から行います。

症状を再現させてみる訳です。

嫌だけど・・・(笑)

 

 

会社から出ると、すぐに国道56号線!

「後ろに車は付かないでね~!」って願っている時に限って、後ろに大きなトラックとかタンクローリーとか引っ付いて来るんですよね。

 

出発直後は問題無さそう!

 

すぐに止まって動かなくなったらどうしよう・・・なんてヤキモキしてたから少しだけ安心しながら、、、

坊っちゃんスタジアムに入ろうとウィンカーを出して、曲がってすぐの横断歩道手前でちょっと止まって、そして再びアクセルON!!

「ぶぅぅぅ~~~~~ん!!」と、ここで何故か空ぶかし・・・

ギアレンジを確認し、再びアクセルON!!

「ぶぅぅぅ~~~~~ん!!」

と、、とまった、、、本当に止まった、、、!

 

 

そこから、ギアをガチャガチャすれど、

エンジン切ってかけなおそうと、毎度毎度の空ぶかし!!

 

仕方ないから、降りて少し押しましたよ(^^;

 

 

でも、空ぶかし状態から5~10分後には、全く何ごとも無かったかの様に動力が伝わり始め、その後は普通に走れました!

 

 

 

会社に戻って早速ショートテスト実施。

DTCが入っています。

しかも、TCMには3つも。

 

 

 

記録されているDTCは、

 

・05C2 多機能ソレノイド、クラッチ圧力/冷却奇数ギア、高油圧

・05D2 多機能ソレノイド、クラッチ圧力/冷却偶数ギア、高油圧

・05A3 油圧ソレノイド、クラッチの奇数ギア、低油圧

 

 

油圧が高かったとか低かったとか・・・

もう、、、どっちかに統一してよ(^^;

 

 

この、相反する内容のDTCが検出されたという事は、検出の時間軸がそれぞれ分かれていると考え、

相反する症状がひとつのミッションに混在する理由は・・・、

 

あくまでも私なりの解釈ですので、順に診て行きます。

 

 

 

ではまず、油量のチェックから始めます。

冷間よりエンジン始動。

始動直後はオーバーフローは起こりませんでしたが、暫くするとご覧の様に溢れて来ます。

 

そりゃ溢れては来ていますが・・・

 

 

 

 

 

もの凄いエア噛みです。

 

下手な人に注いで貰ったビールですか!?

 

 

少し余談ですが、油量調整については、余りにもシビアになる必要はありません。

0.1リットルや0.2リットルの誤差でトラブルを起こす様な、精密でシビアなミッション、私は今のところ出会った事はありません。

 

過去にBMWの6HPで、ATFを少しずつ抜きながら、どの位抜いたら不調が出て、どの位抜いたらエラーを検出するのかという実験をした事があります。

 

今ここでその時の実験結果をお話しするのは時間がかかりますし、そもそもZF6HPの情報を、ゲトラグDCTには引用出来ませんので割愛しますが、おそらくこのDCTでは、油量が一定以上少なくなるとポンプ部でエア加味しやすい構造ではないかと思います。

(他にも、同じ様な症状を抱えやすいドイツメーカーあり)

 

 

そしてオーバーフローは急に止まりました。

現在まだエンジンはアイドリング状態で、油温は少しずつ上がって来ているところです。

その後は、溢れてきたり、止まってみたり・・・

それを何度も繰り返していました。

 

 

 

では、フルードレベル調整をいちからやり直してみましょう!

まずはフロント側からドレンアウト。

 

 

1リットルちょっと!?

この時点で既にDCTフルード量は、私が行った過去データと比較して明らかに少ないです。

 

 

続いてもう1か所もドレンアウト。

 

 

 

トータルで、抜けた量は4.3リットルでした。

 

 

 

ちなみにこちらの写真は、別のボルボでのDCTフルード交換の際のものです。

容器の口元から溢れ返っています。

 

つまり、抜けたDCTフルードの量は、私が今まで作業して来たいずれのボルボ(ゲトラグDCT)と比較しても、約2リットル程度少ない状態でした。

 

 

前回DCTフルードを交換されてから、まださほど日数経過していませんので、今回は圧送交換までは不要と考えました。

 

その業者さんが使われていたフルード「MOTUL DCTF」を規定量充填します。

 

 

圧送はしませんので、トルコン太郎の「新油注入」モードにて充填をしていきます。

 

フルードレベル調整温度に達したところでオーバーフローさせて完了!

 

 

アダプションも実施。

 

 

 

過去DTCを全て消去し、試運転を約20km行い、

会社に戻って来てからの診断結果がこちら。

 

 

 

全項目、問題ありません!

 

ただ、この時の試運転はフルード温度がある程度上がってからの試運転でしたから、その翌日の朝一冷間状態からの試運転を、合計3日間に渡って実施。

そのいずれの試運転でも不具合は無く、会社に戻って来てからのショートテストも問題無し!!

 

 

エンジンをかける度に「点検しなさい!」と出ていたので、

 

 

 

ついでにサービスリマインダーもリセットしておきました。

 

 

輸入車は整備要領書がなかなか手に入らず、

更にはミッション部分となるともっと面倒だったりしますが、

よく分からない状態で行った作業が元で、ドライバーさんの身に危険を生じさせたり、修理をするにしてもミッション丸ごと交換の判断が出たり、場合によっては車をスクラップにする・・・という事にも繋がります。

 

 

日頃からの情報収集や勉強は、欠かしてはいけないと強く思った案件となりました。


ご用命、ありがとうございました<(_ _)>






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