トラブル修理-マークX(GRX120)3速から2速時、2速から1速時に、強烈なシフトショック | フリークのブログ

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「それって幾らになるの??」にも、明確にお答えします(^^)

はじめに。

今回の故障診断にて、非常にご尽力頂いた方々にお礼を言わせて下さい。

 

・資料を用意して頂いた高田さん

・波形診断と故障探求の殆どを行って頂いた須藤さん

 

本当にお世話になりました。

 

 

 

 

今回の修理は、今の整備業界で重要視されている

「効率」・「能率」・「コスト」 などの分野を無視していて、

非常に非効率なやり方であり、

考え方の違う方にとっては理解して頂き難いものかと思います。

 

そもそも、フリークで行っている事自体、日々「非効率」の連続ですので、一緒に頑張ってくれているスタッフの人達も随分と「非効率脳」になっていると思いますが・・・(笑)

 

「またまた今度はうちの社長、一体何をし始めたんだ?」と思われていたかも知れません。

 

 

 

今回ご相談頂いたお車は2005年式、トヨタ マークX。

型式は GRX120 で、ミッション型式は A960E 型です。

 

 

お隣の香川県よりご来店頂きました。

 

ご依頼は、

「ATFの圧送交換をして欲しい」という内容です。

 

実はこちらのマークX、シフトダウン時にショックが発生しています。

それを直す為のATFの圧送交換をご依頼頂きましたが、、、

 

 

症状の発生したタイミング、症状の内容と現状などを事前に問診した段階で、実は既に「クラッチコントロールソレノイド」にまつわるトラブルであろうと予測していました。

 

 

でもそれは、言われれば 「あくまでも予測」 なので、

 

 

本来なら、

ご依頼頂いている「ATF圧送交換」を粛々と作業し、

朝お預かりで夕方ご返却、代車も不要で作業も当日完了~!!

会社としては売り上げは立つし、

依頼頂いた内容は行った訳だし、

原因として可能性のある個所をひとつ消し込み出来る訳ですから、

誰にも何の文句も言われない。

 

この様な流れをこなして行く事がこの業界の今の姿ですから、

これが正義であり、セオリーであり、日々こなすべきルーティーン。

 

「依頼された内容を依頼された通り行った。それの何が悪いの?」

 

 

でも、仮に上記の様に作業したとして。

 

今回のマークXのシフトショックは絶対に直らない。

何なら、ミッション本体丸ごと載せ替えても直る事は無いんです。

 

 

業界の「流れ」から外れ、

お客様からのご依頼内容を遮って留保し、

大切な愛車を何日も預かって、「非効率」と言われている事を延々と続けて行く。

(そして会社の売り上げにも全く貢献出来ない・・・笑)

 

 

そもそものご依頼内容はATF圧送交換ですが、

お客様が「求めているもの」を理解すべく、しっかりとした問診を行い、

「なぜATF圧送交換を希望されているのか」

から、更に深堀りして行った先に、本来求められている事に辿り着きます。

 

 

 

 

 

まず試運転を行います。

3速から2速へのシフトダウン時、結構な変速ショックが出ています。

そして強烈なのは、2速から1速へのシフトダウン時。

「車が何かに当たった??」と思う位のシフトショックが発生!

「ドゴンッ!!!」とショックが来ます。

 

 

 

会社に戻り、診断機を接続してフォルトチェック。

 

 ・P1589 加速度センサ学習値異常

 

を検出しています。

 

 

しかし、今回の症状はここから追いかけて行ったとして、果たして本当の原因に辿り着くのでしょうか。

※AT学習値とGセンサー学習の関係を元にECU判定の一部材料となるかもという事は、今後も学んで行く必要がありそうです。

 

 

そりゃ、頭脳であるECUがダメになっているんですから、正常な診断が出来る訳ないですよね。

 

べろべろに酔っぱらった人が、

「べつに酔ってなんか無いから!!」って言っているのと同じです。

※これは、本当に正常な判断が出来ていません(笑)

 

 

 

 

頂いた資料を元にオシロスコープを使って波形を確認。

 

 

その後オシロマスター須藤さんに色々と相談。

須藤さんも多方面に情報を当たってくれて、

本当の原因が分かりました。

 

 

波形の上辺が右肩下がりなので、ECU内部のトランジスタが疑わしいと須藤さん。

 

 

ラインプレッシャー制御をしているソレノイド、

12V出力時にはラインプレッシャーを逃がし、

0V時にはラインプレッシャーがかかります。

 

この波形パターンが、ONが1msで、OFFが2ms となっています。

 

OFFの時はラインプレッシャーを逃さないので、

この時間が長くなると必然的にラインプレッシャーが高くなります。

その、プレッシャーが高くなった状態でいきなりラインが開くのでハイプレッシャーのままクラッチが繋がれるから「ドンッ!!」という大きなショックを伴ったシフトダウンが行われてしまう。

 

 

OFF時間が長くなっている理由は入力信号の問題ではなく、

恐らくECU内部のトランジスタが正常にON/OFFを正常に行えていない事が原因であろうと。

 

 

よって、総合判断で ECU不良 という診断に行き付きました。

 

 

 

トラブルの原因となったECU。

早速、紹介して貰ったECU修理業者さんに連絡を取って、ECUを発送!

 

以下、

ECUリペアの方から頂いた情報も織り交ぜて紹介して行きます。

 

 

 

以下、リペア業者さんから戴いた情報です。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

第一に気になる点は

コネクター基部のハンダクラックです。

この頃の製品は、ハンダ成分の「鉛」の割合をできるだけ

低くしようとメーカーが試みていた時期です。

これを鉛フリーハンダと呼びます。

 

ただ、当時はまだ鉛フリーハンダの完成度が低く

靭性(粘り)が不足して、経年劣化で割れてしまうことが

多く見られ、今回もその例にあたるものと思われます。

 

今回は最もストレスのかかるコネクターの基部に

ハンダクラックが散見され、不調の主原因になっているようです。

 

処置としては

 

・ハンダを盛り直して修正する

・劣化したハンダを除去して、粘りの良いハンダに打ち替える

 

この二通りとなります。

前者は、ハンダゴテを当て直し不足している箇所があれば

適宣のハンダ追加をして修正する方法です。(低コスト)

 

ただ、一度劣化してしまったハンダを再溶解しても

組織そのものが劣化してしまっているので、早い時期にクラックが

再発する恐れがあります。

 

お勧めは後者の方法で、手間がかかる分

工賃は高くなりますが、長く使われるのでしたら

こちらの方法が良いと思います。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 

勿論、「高コスト」、高い方の修理内容にて施工依頼をしました。

 

 

 

 

 

 

 

合計200箇所ものハンダを修理して貰いました。

 

 

修理が完了し、ECUはすぐに弊社に届いたので早速車両に取り付け。

 

 

 

 

オシロスコープにて波形を確認。

 

あれ??

まさか・・・!?

 

 

 

続いて試運転。

 

 

3速→2速  「ドンッ!!」

2速→1速  「ドゴンッ!!!」

 

 

ECU修理前と全く変化無し・・・

 

 

ただ、ECU修理業者さんには申し訳無いけれど、得たものもありました。

 

 

まず、

この症状の原因は、「ハンダクラック」が原因ではないという事。

 

パワー系のコントロールチップである可能性が高く、

このECUに使われているICチップは入手が困難であるという事などが分かりました。

 

ECUの修理は、本当に難しい・・・。

 

 

 

実は、ダメだった場合の次の手立ても考えておりました。

 

※200箇所にも散見するハンダクラックがあるのに、クラッチコントロールソレノイドの一部にのみしか症状が出ていないという点や、Gセンサーのフォルトのみに留まっているという点で、少し引っ掛かるものがありました。

 

そして今回はその「次の手立て」である「リビルトECU」をチョイスする事に。

価格と納期は事前に調べがついています。

 

 

費用的な面から、出来れば現物修理で完治に至りたかったのですが、今回の症状はハンダクラックが原因では無く、ICチップが悪いので、もうこれ以上時間をかけてもジタバタ足掻き倒してもダメみたいです。

 

 

ある程度下準備をしていましたので、入荷までも早く、取付は瞬く間に。

流れはまるで、腎臓移植チームの様。

(見た事ないけど)

 

本当は開けちゃいけないんだろうけど、リビルトECUの中身もチェック。

これ見ている人も見たいと思うし、何より自分がこれ開けずに取り付けたら後悔する気がして。

 

「リビルト」と称しているだけで、基盤丸ごと新品ですやん!

 

 

そして、

ECUを装着後、試運転よりも先にオシロ波形確認!

ステップを順に楽しむというのも乙なものです。

 

 

 

おおっ!!!

デューティ比が全然違う!!!

 

問題を抱えたECUのものとは、全く真逆の波形が出ました。

 

 

 

 

この波形はエンジン始動後のものですが、

エンジン始動後は2:1から、おおよそ1:1になる様です。

 

そして試運転。

 

非常にスムーズな変速フィーリング!!

無事、ATトラブルは完治に至りました!!

 

 

 

 

 

最後に、

 

今回の様にオシロを使用した診断をもっと多くの整備士が出来る様になって欲しい。

それは自分も含め。

 

故障診断に不可欠な「良否判定」を、

「勘」で行うのではなく、

「あるある」で行うのではなく、

「ネット検索」で行うのではなく、

 

自分の知識と経験と情報を生かし、

「オシロスコープ」を使って波形を確認し判断する。

 

技術が要るし、情報が必要だし、知識も絶対必要。

習得するまでは時間もかかるし、

仕事から帰っても勉強しないといけない。

 

 

 

 

今の自動車整備業界は、

 

・悪いと「思う」所を順に交換して行こう!

・原因なんて究明しなくていい!悪いのはこの部品なのが分かっているのだから、さっさと交換して納車しろ!

・診断!?そんな時間のかかる事は外注して、車検整備だけしておけばいいんだ!

 

というのが「普通」なんです。

それが例えディーラーだろうが大手だろうが。

(逆に、ディーラーや大手がその傾向強いですけど)

 

 

 

でも、

絶対居るはずなんです!!

 

何だか自分が思い描いていた「整備士」とは違う毎日が繰り返され、

そんな中に浸り続ける事で「効率絶対主義」になりそうな頭をブンブン横に振り、これは違う!求めていたものはこれでは無い!こういう事がしたくて整備士になったんじゃない!という人。

 

ディーラーに勤めている人、

大手整備工場に勤めている人、

家業の跡を継いで高みを目指す人、

自動車整備で独立した人、したい人、

 

本気で学びたいのに、

何処で学べばいいの?

誰が教えてくれるの?

そもそも何をどうしたら故障探求できるの?

 

そんな悩みを持った日本各地の整備士に、

「学びの場所はあります!」と言いたい!

 

私の知識は微々たるものですが、

多くの方々と交流を重ねて行く内、

沢山の凄い人とお知り合いになれたりして、

色んな事を学べる場所を提案できる環境が揃ってきました。

 

 

オシロの勉強会は来年5月頃を計画中です。

ただし、こちらは人数制限の関係上、私が主催しているグループ内の参加希望者優先で募りたいと思っていますが、

 

そういった活動を、もっと間口を広げた形で行いたいと考えています。

色んな方が参加出来る勉強会。

 

 

引き続き、計画して行きます。


また、案内させて下さい。





※同じ内容の故障事例でも、作業内容や手順、個体差や経年劣化、部品価格の変動等により必ずしも同一価格・同一修理とはなりません。上記価格や修理内容を他の整備工場さんに強要する様な行為はお控え下さい。


 

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(1) フリークでは、密閉式ミッションの圧送交換が出来る様、様々なアタッチメントを製作・販売しております。商品一覧はこちらです → F-PETシリーズ

 

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愛媛新聞社の「マイベストプロ」に掲載されました