Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評- -4ページ目

Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『イースタン・プロミス』(原題:Eastern Promises /2007年カナダ、イギリス、アメリカ/100分/R-18)

監督:デヴィッド・クローネンバーグ

脚本:スティーヴ・ナイト

製作:ポール・ウェブスター、ロバート・ラントス

製作総指揮:スティーヴン・ギャレット、デヴィッド・M・トンプソン、ジェフ・アッバリー、ジュリア・ブラックマン

音楽:ハワード・ショア

撮影:ピーター・サシツキー

編集:ロナルド・サンダース

出演者:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、アーミン・ミューラー=スタール、イエジー・スコリモフスキー、シニード・キューザックら

100点満点中76点



 ロンドンを舞台とした、ロシアン・マフィアによる組織犯罪とその隠された証拠を掴んだ助産師の行動を、ショッキングなヴァイオレンス・シーンを織り込みながら描いたスリラー作品。

 冒頭から陰湿な殺害シーンで始まる作品で、著しく観る者を選ぶ、暴力場面の数々が登場します。・・・なので、血が吹き出たり、指を切り落としたりといった過激な描写が苦手な方にはお勧めできません。



 監督のデヴィッド・クローネンバーグは、カナダのトロント出身の脚本家で俳優でもあります。トロント大学を卒業後、カナダでTV作品を多く手がけ、1975年公開の『デビッド・クローネンバーグのシーバース』で劇場映画監督としてデビューしました。1980年公開の『スキャナーズ』では超能力者同士の戦いを描き、1983年公開の『ビデオドローム』では録画映像が鑑賞者の現実を変容させるといったような、難解で相当気持ちの悪い作品がこの頃は多く、興業的には振るわなかったですが、業界人や一部の映画通の絶大なる支持を得て、カルト作品の巨匠として、一躍注目される映像作家となりました。




 主演のナオミ・ワッツは「アンナ・ヒトロヴァ」を演じます。この役は、ロシア人の父を亡くし、イギリス人の母と2人暮らし女性です。最近、子供を死産し、黒人の医師と別れたアラサーの助産師で、病院勤務をしています。彼女は英国生まれなので、ロシア語が全く読めません。通勤には、ロシア製の古い大型バイクを使っています。




 同じく主演のヴィゴ・モーテッセンは「ニコライ」を演じます。この役は、ロシアン・マフィアの運転手兼“掃除屋”です。主にポスの息子にくっついて、助手として、高級車を運転したり、死体遺棄を手伝ったり、雑用もします。体中に刺青を入れ、組織の幹部を目指して、ボスに取り入ろうとしますが、誰にも知られない“裏”の顔を持っています。




 共演のヴァンサン・カッセルは「キリル」を演じます。この役は、ロシアン・マフィアのボスの息子で、短絡的で直情傾向のある“隠れ”同性愛者です。「ニコライ」を相棒というより、兄のように頼っています。




 同じく共演のアーミン・ミューラー=シュタールは「セミオン」を演じます。この役は、ロシアン・マフィア「法の泥棒」のボスで人身売買や売春、密輸などの組織犯罪をしきる裏社会の顔役で、祖国ロシアでは指名手配中の犯罪者です。表向きは、トランス・シベリアン(シベリアの恍惚)というロシア料理店を経営しています。彼の性癖はかなり異常で、ロシアや東欧なら十代の少女を組織的に拉致しては、無理やり暴行して自分の性欲を満たすと、その少女を麻薬漬けにして、客を取らせ、死ぬまで働かせます。ミューラー=シュタール本人は、現在はロシア領になっている、ヴァイマル共和国(ドイツ国)プロイセン州ティルジットで生まれる。十代の頃はヴァイオリンを弾いていたが、20歳頃、東ドイツで俳優となり、舞台や映画で活躍しましたが、その後、西ドイツに亡命しました。1990年頃からは、ヘリウッド作品に出るようになりました。


(あらすじ)

 クリスマス目前のある晩、アジムの理髪店で、ロシア系の青年が髪を整えてもらっている。店主「アジム」の甥っ子「エクレム」が戻ってくると、「アジム」は彼に剃刀を渡し、「このロシア野郎の首をかっ切れ!!」と言うと、ロシア系の青年はあっけなく首を切られ、大量の血を喉から吹き出しながら絶命する。

 同じ夜、ドラッグストアーに身重の少女が助けを求めて入店してくるが、大量の出血をして床に倒れこむ。彼女は病院に運び込まれ、女の子を産んだ後、息を引き取ってしまう。手術に立ち会った「アンナ」は、彼女のバッグの日記を発見し、これを手ががりに、孤児となった赤ん坊のために、少女の身元を割り出そうと考える。日記はロシア語で書かれており、そこには“トランス・シベリアン”というロシアン・レストランのカードが挟みこまれていた。英国育ちのため、亡父がロシア人でありながらロシア語が読めないアンナは、カードを頼りにレストランを訪ねると、優しそうな店主「セミオン」が対応してくれるが、日記の存在を告げると、謎めいた挙動でその日記を手に入れようと必死な様子である。また、柄の悪い「ニコライ」と「キリル」も店先にいて、怪しい感じである。「アンナ」は、この日記の翻訳をロシア語のできる伯父に依頼することにするが、その内容は、犯罪組織に関する驚くべきものであった。























 



『シービスケット』(原題:Seabiscuit /2003年アメリカ/141分)

監督・脚本:ゲイリー・ロス

原作:ローラ・ヒレンブランド著『シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説(原題:Seabiscuit: An American Legend)』

製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル

製作総指揮:トビー・マグワイア、ゲイリー・バーバー、ロジャー・バーンバウム、アリソン・トーマス、ロビン・ビッセル

音楽:ランディ・ニューマン

撮影:ジョン・シュワルツマン

編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ

出演者:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー、エリザベス・バンクス、ゲイリー・スティーヴンス、ウィリアム・H・メイシーら

100点満点中84



 アメリカ合衆国の大恐慌直後の社会を舞台に、実在した競走馬とこれを育てた3人の男たちの姿を描いたヒューマンドラマです。

 私のような競馬に無知蒙昧な鑑賞者でも、十二分に感情移入できる感動作品で、ローラ・ヒレンブランドの書いた小説『シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説』が原作となっています。主演のトビー・マグワイアが製作総指揮の筆頭にいて、元々彼のやりたかった企画だったんだなとうかがわせる作品です。

 最後まで通して観ると、大恐慌で自信を失いかけた米国民に希望を与えたエピソードとして、「1度や2度の失敗や挫折でも諦めることなく、(または、見放すことなく、)可能性を信じてチャレンジすること、(または、チャンスを与えることが)肝要である。」というメッセージが貰えます。・・・なので、昨今の混沌とした経済状況の中で、薄ぼんやりとしか見えない庶民の頼りない希望に、明るい光を灯してくれる勇気を与えるような作品と言えます。


*「シービスケット」・・・(Seabiscuit、1933年 - 1947年)アメリカ合衆国で生産・調教されたサラブレッドの競走馬。1930年代競走生活を送っていた馬で、馬体が小さく、気性の浮き沈みが激しく、競走嫌いな性格のせいで不遇を託つものの、アメリカの自動車販売業者、チャールズ・スチュワート・ハワードが馬主となり、お抱えの調教師、ロバート・トーマス・スミスの型破りな調教法により、次第に競走嫌いを変えていき、1936年以降、快進撃を続け、マッチレースで三冠馬ウォーアドミラルを破るなどの活躍を見せた。

 監督のゲイリー・ロスはカリフォルニア州ロサンゼルス出身の脚本家でもあります。トム・ハンクス主演の『ビッグ』(1988年)で脚本を、ジェニファー・ローレンス主演の『ハンガー・ゲーム』では監督と脚本を努めました。




 主演のトビー・マグワイアは「“レッド”ジョン・ポラート」を演じます。この役は、幼少期は裕福な家庭に育ち、父の意向で乗馬を覚えましたが、父の破産により、厩舎で働くようになった青年で、賭けボクシングのファイターとして、日銭を稼がなければならないような苦しい生活をしていたようです。知人を後見人にすることを条件として、仮設移動競馬場でクォーターホース競馬の騎手となり、その後、「ロバート・トーマス・スミス」調教師との出会いから、「シービスケット」の騎手となりました。

マグアイア本人は、かつての「スパイダーマン」ことピーター・パーカー役で有名ですね。



 共演のジェフ・ブリッジスは「チャールズ・スチュワート・ハワード」を演じます。この役は、所持金のたった21セントを元手に西部のサンフランシスコに、単身移り住み、自転車修理工場を開いた実業家です。この頃、西部にも発明されて間もない自動車が普及し始めましたが、当時の自動車は高い・遅い・壊れやすい・危ないと非常に評判が悪く、アフターサービスも充実していなかったため、似たような業種の自転車修理店には故障した自動車がよく持ちこまれていました。彼はこれを商機と考えて、デトロイトにある自動車メーカーのひとつビュイック・オートモービルのサンフランシスコにおける独占販売権を手に入れ、一気に財を築きます。しかし、その後の大恐慌で窮地に陥ると、馬主として競馬にのめり込み、所有する牧場は彼の競走馬を繋養する場ともなりました。ブリッジス本人は、もう結構なお年ですが、両親も兄も俳優の俳優一家に生まれ、2009年公開の『クレイジー・ハート』でアカデミー主演男優賞を受賞しています。



 同じく共演のクリス・クーパーは『トム・スミス』を演じます。この役は、野良馬をならして、軍馬や農耕馬に育てる仕事をしていたが、モータリゼーションの進行で、職を失った調教師です。怪我をした馬や性格に難のある駄馬の潜在能力を引き出す天才的な才能があり、「ハワード」に見出され、「シービスケット」の専属調教師となります。クーパー本人は、1999年公開の『アメリカン・ビューティー』で、ナチスを信奉する厳格な元軍人を演じて注目され、2002年公開の『アダプテーション』ではそれまでのイメージを一新。どこかだらしない男臭いイメージの蘭収集家を熱演して、同年のアカデミー助演男優賞やゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しています。


 このような挫折や失意を味わった3人の男たちが出会い、やはり、殺処分寸前にまで追い込まれた“隠れた名馬”と出会うことで、新たな成功をつかむというアメリカン・ドリームが描かれます。


(あらすじ)

 乗馬においては秀でた才能を持つ「ジョン・ポラート」は裕福な家に生まれたが、大恐慌に見舞われた後、一家は離散し、名もない仮設移動競馬の騎手として、また、賭けボクシングのファイターとして赤貧の生活を送っていた。また、かつては、野良馬の調教師であった「トム・スミス」は、自動車の普及により、その職を失っていた。そして、また、自転車の販売修理業から身を起こした“自動車王”「チャールズ・スチュワート・ハワード」も、突然の大恐慌により、事業規模が縮小し、離婚も経験し傷心と挫折の日々を送っていた。ただし、「ハワード」は新たな事業として競馬に着目し、沢山の競走馬を保有しながら、投資家「チャールズ・ストラブ」とともにサンタアニタパーク競馬場に出資して、競馬が再開されたカリフォルニアで再起を誓っていた。1935年、「ハワード」は保有するベイメドウズ競馬場の厩舎で「トム・スミス」を調教師として雇い、馬体が小さく、気性の荒い駄馬でありながら高額で購入した「シービスケット」(=海軍御用達の乾パンの意)を改めて育てることとする。そして、この馬の負けん気の強さと同じ気性の「“レッド”ジョン・ポラート」を騎手としてスカウトする。「スミス」の卓越した調教術が、「シービスケット」の潜在能力を開花させ、また、彼の試合感が、「レッド・ポラート」の騎手としての才能を引き出し、初戦こそ落とすが、このコンビは西海岸で連戦連勝の快進撃を続けるのであった。そして、その勢いは、まるで大恐慌によって、自信を失いかけた大衆の明日への希望と勇気を奮い起こさせるようであった。



















 



『ブリット』(原題:Bullitt /1968年アメリカ/113分)

監督:ピーター・イェーツ

脚本:アラン・R・トラストマン、ハリー・クライナー

製作:フィリップ・ダントーニ

製作総指揮:ロバート・E・レリア

音楽:ラロ・シフリン

撮影:ウィリアム・A・フレイカー

編集:フランク・P・ケラー

出演者:スティーブ・マックイーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーン、ドン・ゴードン、サイモン・オークランド、ノーマン・フェル、ロバート・デュヴァルら

100点満点中88


 スティーブ・マックイーン主演のサンフランシスコを舞台にしたヒューマン要素とアクション性のあるクライム・スリーラー作品。

 1968年公開と古い作品ですが、60年代ファッションとその時代の名車たち(1968年型フォード・マスタングファストバックGT390、同ダッジ・チャージャー)が登場し、なんとも懐かしいがスタイリッシュなムード漂う落ち着いた大人の刑事ものです。

 サンフランシスコの刑事ものというと、クリント・イーストウッド主演の『ダーティーハリー』シリーズが有名ですが、かの作品の1作目が公開されたのは、1971年なので、「ハリー・キャラハン」刑事の人物像や舞台設定に、本作が少なからず影響を与えたと考えられます。

 

 監督のピーター・イェーツはイングランド、ハンプシャーのアルダーショット出身の映像作家でありプロデューサーです。イギリスでTV制作に携わった後、本作がハリウッドでのデビュー作品です。1969年公開の『ジョンとメリー』や1983年公開の『ドレッサー』等があります。



 主演のスティーブ・マックイーンは「フランク・ブリット」を演じます。この役は、サンフランシスコ市警本部捜査課の警部補で、特の嗅覚と捜査手法をもった現場たたき上げの捜査員です。上司からは絶大なる信頼を得ているベテランであり、劇中では出発間際の国際線の旅客機を、職権で止めてしまいます。そんなことも・・・許される人物。この頃の彼は、現役のプロレースドライバーでもあったため、本作でもチューンナップしたフォード・マスタングファストバックGT390(↓)を駆って、アップダウンの激しいサンフランシスコ市街から、カーブの多い郊外へと、暗殺者が乗り込むダッチ・チャージャーを猛追するカーチェイスを繰り広げます。これは、ハリウッド作品の中では、カメラ視点を車内に置いたり等、当時カーチェイスの革新的シーンとなりました。確かに、今見てもすごい迫力で、車酔いしそうなほどに鬼気迫るものがあります。





 共演のジャクリーン・ビセットは「キャシー」を演じます。この役は、 「フランク」の恋人であり、女性ながら当時としては先端の職業である工業デザイナーです。この時、24歳のジャクリーンは、昨今の女優とは違って“小顔”ではないですが、知性あふれる健康的なお色気を放つ美女で、無表情な彼氏に健気に後からついて行く、やや気弱なキャリア・ウーマンを演じています。そして・・・まーその可愛いいこと可愛いいこと!!



 共演のロバート・ボーンは「ウォルター・チャルマース」を演じます。この役は、シカゴの犯罪組織の幹部が司法取引に応じ、身柄の保護を申し出たことを利用して、閣僚等の官職を得ようとする上院議員で、捜査協力と言いながら、捜査員を消耗品のように扱ったり、議員の立場を利用して、立場の弱い者に対して上から圧力を掛けて我を通したりと、いわゆる“人間のクズ”です。ボーン本人は、TVシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』や1960年公開の『荒野の七人』の出演で有名ですね。


 また、あのロバート・デュバルがタクシー運転手役を演じていますが、チョイ役で、さほどセリフがないですが、劇中で捜査進展のきっかけを与える重要な役柄です。まだ、この頃のデュバルは主役級の俳優ではなかったようですが、地味に演じても存在感はたっぷりです。


 これら豪華俳優陣でアクション性のあるクライム・スリラーをおくるわけですが、鑑賞中、心がジーンとなるところがあって、それは、終盤のジャクリーン演じる「キャシー」とマックイーン演じる「フランク」のやり取りで、犯罪捜査に身を置く「フランク」の心の闇に触れた「キャシー」が、自身の怯えと彼への思慕の情をぶつけていく場面です。この辺が、単なる犯罪映画ではない深みのあるヒューマン作品の要素も強く感じるところです。


(あらすじ)

 シカゴの犯罪組織から足抜けを決意した「ジョー・ロス」は、組織から雇われた暗殺者に命を狙われていた。彼は組織の内部情報を土産に、身柄の保護を求めて上院議員「チャルマース」に接触し司法取引することとなる。サンフランシスコ市警本部捜査課の警部補「フランク・ブリット」はこの上院議員から呼び出され、翌週月曜日の公聴会開催まで、「ジョー・ロス」の身辺警護を直接依頼される。「フランク」と彼のチームは、手はず通り、サンフランシスコ市内の安ホテルで、「ジョー・ロス」を保護することとなり、三交代制で昼夜付き添うこととなるが、その晩、「チャルマース」上院議員だと偽りを名乗る暗殺者2名の急襲を受け、チームの一員「スタントン」刑事は膝を散弾銃で打たれ重症、当の「ジョー・ロス」は肩と顔に散弾を浴び、意識不明の重体となる。その深夜、さらに暗殺者は、「ジョー・ロス」の息の根を止めようと、収容先の病院にまでやってくるが、「フランク」の機転により、未遂に終わる。上院議員「チャルマース」は、この失態を攻めながら、何としても2日後の公聴会には「ジョー・ロス」に証言させると息巻く。しかし、次の日の早朝、「ジョー・ロス」は息を引き取ってしまう。一計を案じた「フランク」は、担当医と申し合わせて、「ジョー・ロス」の死亡を隠すため、市の死体安置所にその亡骸を移し、再度、殺し屋が現れるのを待つことにする。そして、生前の「ジョー・ロス」のいくつかの不審な行動を糸口に独自の捜査を開始する。そして、そこには意外な真実が隠されていることが分かってくる。