『ライフ・アクアティック』(ウェス・アンダーソン製作・脚本・監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『ライフ・アクアティック』(2005年アメリカ/118分)

監督・脚本・製作:ウェス・アンダーソン

音楽:マーク・マザースボウ

出演者:ビル・マーレイ、オーウェエン・ウィルソン(「エネミーライン」)、アンジェリカ・ヒューストン(「アダムス・ファミリー」)、ケイト・ブランシェット、ウィレム・デフォー、マイケル・ガンボン、ジェフ・ゴールドブラム(「ジュラシック・パーク」)ら

100点満点中79点


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 ウェス・アンダーソン監督、新進の若手監督として持てはやされていたのは、もう過去のこと。現在、年齢は40歳を過ぎ、最近は2009年のアニメ作品「ファンタスティック Mr.FOX」やブラピを使ったソフトバンクのCMの監督を務めています。


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 パッケージの綺麗さ、可愛さに惹かれて手にとってしまった作品が、アンダーソン監督であることに驚きでした。知らなかったんです。全く。

 監督の大好きな「ストップモーション」を多用し、深海・浜辺・磯に生息するという「架空の生物」を多数登場させ、鑑賞者を異世界に誘ってくれます。主演のビル・マーレイ始め、アンジェリカ・ヒューストンやケイト・ブランシェットら「妖気漂う」名優達を要所に配し、筋立ての巧みさよりは、奇想天外な場面設定やシーン、生き物の出現で我々を揺さぶってみて、付いて来れるか、どうかを試しているかのような短いエピソードの連続で構成された作品です。


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 主役のビル・マーレイが演じるのは、海洋生物研究家であり、海洋探検家であり、海洋調査船「デラフォンテ号」の船長で、二頭のイルカを飼うドキュメンタリー作品の監督でもある「スティーブ・ズィスー」なる人物で、やや肥満した彼は、顔中に白いヒゲを蓄え、赤いニット帽を被って登場し、製作費と称して生活費を得ると、取材だ!調査だ!撮影だ!と言っては、決定的シーンや感動的な天然・自然の有り様を記録するでもない映像作品を垂れ流す作家。

 名前からして・・・ウサン臭い人物だし、出で立ちが熱帯のサンタクロースのようでもあり、夢を追いかけると言えば聞こえはいいが、才能の欠片も見せないまま洋上生活を決め込む「エセ宗教家」の雰囲気さえある。


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 今後期待できる「海洋資源調査」に関わる学会・業界にも通じ、大学の単位取得に苦しむ学生らを、無償で集め、学外実習と称して彼らを奴隷のようにこき使うという搾取者・人買いの一面もある。

 彼「ズィスー」の頭の中にあることといったら、女とセックスすること以外にはあまり何もなさそうだが・・・とにかく、浮世から隔絶した生活を送りながら、大好きな海洋映像を死ぬまで撮り続けていたいのでしょう。そんな生活を、コメディタッチ満載で追っていく作品です。


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 これだけ書くと、よほど酷い出来栄えと勘違いされる向きもあろうかと思いますが、さにあらず。他人は、いかに断じようとも、作品隅々に渡って配られた監督のニヒリズムやペーソス、そしてそれらを引き立てる小さなユーモアを添えた演出やアホな台詞が、鑑賞者の心情を優しくくすぐってくれます。


 (あらすじ・・・少しだけ)

  ある晩、大劇場を満員にするドキュメンタリー映画の試写会が催される。監督は、海洋学者でもある「スティーブ・ズィスー」で、彼は「チーム・ズィスー」を率い数本の作品を世に出すが、この5年間鳴かず飛ばずのドキュメンタリー作家である。

 今回の作品は、「謎のジャガーシャークを追え!」

 深海に住み、未だ発見された事のない、新種のサメがテーマだが・・・撮影中、「チーム・ズィスー」の長老で、ダイバーとしても超ベテランの右腕「エステバン」を失ってしまう。しかも、彼らを襲って、「エステバン」を食った「ジャガーシャーク」の映像を納めたカメラを深海深くで無くしたため、肝心の「迫力映像」がまったく無い作品に仕上がっている。上演後の、質疑応答では、観客の6割近くが退席し、一部のカルトなファンが作品を賞賛するだけで、散々の試写会となってしまう。だだ・・・パイロットの制服に身を包んだ青年からの敬意のこもった質問以外は。

 「次回作は、いつから製作に取り掛かるんですか??」

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 この青年は、 「ネッド・プリンプトン」(オーエン・ウィルソン演ず)と言い、「ネバダ航空?」の副操縦士であるが、「ズィスー」を慕ってやって来た。彼は、退場する「ズィスー」に対して、驚きの発言をする。

 

 「僕は、多分あなたの息子です。」


 この発言に驚く「ズィスー」だが、彼の生い立ちを聞き、納得する。30年近く前に同棲していた女性の息子であるからだ。


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 彼の現在の妻は「エレノア」(アンジェリカ・ヒューストン演ず)で、富豪の娘であるが、もうすでに二人の関係は冷え切っている。彼女は、彼の探検にも、映像製作にも全く関心が無くなっているが、「ネッド」の登場には正直気になっている様子だ。


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 「ズィスー」は、「ネッド」をクルーの一員とし、「ネッド」も航空会社を退職し、次回作の製作のために、洋上へと繰り出す。


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 彼らが乗り組む調査船「デラフォンテ号」は、甲板上に、小型ヘリコプター小型深海潜水艦を搭載する米軍から90万ドルで払い下げられた中型の船舶で、船内には客室はもとより、中国の職人によって備え付けられたサウナ室、研究室、録音室、現像室、編集室、海底観察室も備えた本格的なもので、電気信号を受信して深海映像を撮影するイルカ2頭がこの船に随行する。ここが「チーム・ズィスー」の本部であり、陸に上がらずとも映像製作と海洋生物の研究・観察ができる移動スタジオ兼研究所なのだ。


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(*アンダーソン監督は、この「デラフォンテ号」のくだりをやりたくてしょうがなかったんだろうなー・・・と伺える。だって、男のロマンをたっぷり詰め込んだ「秘密基地」みたいなんだもの!!)


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 次回作は、前作で命を失った「エステバン」の弔い合戦だとばかりに、「ジャガーシャーク」の発見と捕獲をテーマに展開する海洋冒険ドキュメンタリーとなるはずだが・・・彼らに行く手に待つものは?



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