その後は、数日簡単なメールのやり取りをしていた。


俺は不安に苛まれていた。ゆか、ゆかの心は本当に俺に向いているの?



週末まで待とうと決めていた。

そして、その週末。



「ゆか、ちゃんと顔見て話しよう。今夜、お店が終わる2時すぎに会おう。連絡待っている。」



そうメールして、俺はただひたすら返事を待った。

時間は夕方。ゆかはまだ寝ているだろう。




今夜は、もともと歌舞伎町に行く予定だった。

昔仲良かったキャバ嬢の一人が田舎に帰ることになり、その送別食事会。

しゃぶしゃぶごちそうして、他愛もない昔話をして時間を見る。 21時。


ゆかからのメールはない。



ゆかがお店に出ているのかどうか、お店に電話してみる。

出勤している。

また時間がなく返事しないのか?

ゆかの心が見えない。


お店に行こうかとも思った。でも、返事もないのに、なんかお店に行くのは気後れした。

情けない自分。こんなにも会いたいのか?



歌舞伎町を離れる前に、ゆかにメールした。

「今夜歌舞伎町に来ていた。このままもう帰る。とにかく返事を待つよ。」





その日は、返事はなかった。


ずっと来なかった連絡。



朝一通のメールが届いた。

ゆかからだ。


内容は、ごめんなさい。ケータイを見て、メールや着信の記録がたくさんで、どうしたらいいか

わからなくなった、とのことだった。

また、俺が他のキャバクラへ行った事に対する批判。


とりあえず連絡が来た。



俺は、ここ数日でいろいろ考えた。どうするべきか。



ゆかの自由奔放さ?を受け止めて愛し続けるか。

ゆかのいい加減さに呆れて、もう離れるか。




ゆかと付き合うときに言った言葉。俺が放った言葉。



「ゆか、ゆかは独りじゃないんだよ。俺が横にいる。東京にいても、独りじゃないんだよ。」





この言葉をもう一度考えてみた。

俺は格好つけのために、気を惹くために言ったのか?


違う。



この言葉を貫こう。

そう考えた。自分の言葉を信じ、貫くことで支えにしようとしていたのかもしれない。




「ゆか、いろいろ慣れない土地でストレスが溜まることもあると思う。

好きな相手だから話せないこともあるのかなって思う。でも、俺はいつでもゆかの味方だよ。

いつか話せるときが来たら、話して欲しい。俺が何かの助けになるのかどうかはわからない。

けど、俺は味方だよ。」



メールを送信した。




その日の夕方に返信。


「ありがとう、嬉しいよ。でも、こんな私のこと嫌いになったでしょ?ごめんね。私もいろいろ考えてた。

でも、どう話したらいいのかわからない。」




いくつかのメールをやり取りし、ゆかは仕事に入った。



今の俺は、ただ待つしかない。

今までの俺なら、こんな芸当は無理。受動よりも能動なタイプな俺。

まさに忍耐の勝負。

これを一つの試練だと考えるようにした。



でも、辛いわ。


会いたくても会えない。話したくても話できない。

本当は、今すぐにでも、ぎゅっと抱きしめたい。ゆかを感じていたい。



5時半まで歌舞伎町でゆかからの連絡を待ち、諦め家に帰る。

無念というか、なんというか・・。悔しくて涙も出ない。


またか・・・。



こんな短い期間に、こんな辛くて切ない恋愛をするとは思いもしなかった。

もし、前もって、こうなることがわかっていたら、俺はこの恋愛を選んだか?


選ばない。


でも、恋愛の先は、誰にもわからない。

だから、恋愛を通じて人は成長するのだろうし、喜び、悲しむだと思う。



しかし今は、そんな悠長に構えていられない。

そんな心のゆとりはどこにもない。



裏切られたと思う辛い心と、ゆかを信じていようと思う甘い心。

そんな二つの心に挟まれながら、ここ数日を過ごしてる。



自分のプライベートが原因で、仕事に穴を開けたくはなかった。

しかし、気力という気力が失せ、今日は休むことにした。


心が乱れ、眠るに眠れない。でも、眠らなければ・・・。

寝ている間に、ゆかから連絡がくるんじゃないかと思うと、眠れない。


ベッドに入ったのは結局午前9時。。



起きたら、連絡が来るかな・・・。



寝よう。





午後12時半。

目が覚める。

ケータイを見る。なんにもない。

何が起きているんだろう。俺には何もわからない。



これからどうしよう?



黙って、じっとしていても何も変わらない。

俺はゆかに会いたい。情けないくらい会いたい。振られるのかもしれない、でも会いたい。

今夜またお店に行くことを決意した。



と、同時に誰かに話を聞いて欲しかった。弱い心が助けを求めている。

冷静に、正気を保てるように。



友人の腹黒へ電話する。

「今夜時間ある?話聞いてもらいたいんだ。」

「うん?よほどのことだね。時間作るよ。8時くらいでもいいかい?」

「ありがとう。じゃあ、8時に新宿で。」




夜までまだ時間がある。

少し寝ようかとも思ったけど、眠れそうにもない。

ゆっくりお風呂に浸かり、時計を見る。

まだ3時。


家でじっとしてても不安が募るだけ。

外に出よう。


車に乗り、いつもの歌舞伎町の駐車場へ。

ふらふらと歌舞伎町を歩き、ゆかのお店の近くにある喫茶店へ。

ここで腹黒さんを待とう。

コーヒーを飲みながら、本でも読もう。



午後7時半。

「もうすぐ到着するよ」

もちろん腹黒さんからの連絡。決してゆかからではない。


腹黒さんと落ち合って、昨日行った居酒屋へ。

ここ数日の状況を説明した。

どうコメントしていいのか、腹黒さんにもわからない。

真実は相変わらず、ゆかにしかわからない。


その後、いえろうからも連絡があり合流。

3人でいろいろ話したけど、なにも答えは出ない。

いえろうは昨日の今日で、いったいどういうことなんだ!と怒り気味。




10時を廻ったところで、お店へ向かう。

いえろうは本指名のみゆきさん。

黒服に確認。

「キャプテンさんは・・・」

「俺は場内指名で○○さん(ゆかの源氏名)」

「えっ?場内ですか?本指名ではなく・・・。」

「そうだよ。今夜は場内指名で。」

「今、中に確認取ったのですが、お休みのようです、○○さん」


なにやってんだ、あいつ?


「わかりました。では、違うキャストで。」



店内に案内される。

かなりの客。今夜は繁盛している。


俺は、昨日同じテーブルになったひかりさんを呼んだ。

ひかりさんも新人で、ゆかも新人。

新人同士、話もしているだろうと読んだ。


しかし、あまりよく知らないらしい。

空振り。


みゆきさん、ひかりさんに、俺とゆかのことを全部話しした。

本来、お店でこんな話はすべきではないと思う。

でも、藁にもすがりたい気持ちが勝ってしまった。


ひかりさんは優しく、

「話はいつでも聞くよ。気持ちはよくわかる。でも、焦って結論出さないで。

もう少し待って、ふたりで話してからでも遅くないんじゃない?」


今の俺は、優しくされると涙が出る。



他のキャストさんたちの話を聞いても、

「色恋営業じゃないでしょ~?それは。私だったら、もっと上手く引っ張るし、

家なんて絶対に教えない!」


じゃあなんで? ゆかは俺をからかっているだけ?

さっぱりわからん。。。とにかく、会うまでは何も進まないしわからん。


2時間半くらいお店にいて、会計し出ることに。

いつもは飲まないお酒。こんやも口にした。車は運転できない。。




お店を出てから、たばことライターを忘れていることに気づく。

お店のみゆきさんに電話し、持ってきてもらうこと。

そのままみゆきさんを誘い、飯食いがてら、話を聞いてもらう。



「悪いね、疲れているところ。」

「キャプテン、元気出しなよぉ~。心ここにあらずって顔しているし!」

「あら、やっぱそう?」

「うん、超空元気って感じ出まくりだし~」

「アハハ」


2時間くらい、いろいろ話を聞いてもらい、多少なりともスッキリした。


「笑っていれば、絶対いいことあるよ!」




みゆきさん、ありがとう~!



開き直って、笑おうと思った。助かった。嬉しかった。


午前5時過ぎ。

俺は車を運転し、みゆきさんを家まで送った。



そのまま家に帰る。


やっぱまだゆかからの連絡はない。