『モンパルナスの奇跡〜孤高の画家モディリアーニ〜』@よみうり大手町ホール | Capricious Bookshelf

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MyFavoraite/浦井健治・赤楚衛二・上川隆也・STING・ALESSIACARA・特撮(戦隊シリーズ&仮面ライダービルド)/編み物

【脚本・作詞・演出】G2

【音楽・編曲・音楽監督】かみむら周平

【あらすじ】

 2018年、アメデオ・モディリアーニの作品が172億円で落札された。

 それより100年前、第一次世界大戦下のパリで芸術家が集うモンパルナスのカフェで、モディリアーニは客をスケッチしては、小銭を稼ぐ日々を送っていた。

 そこにポーランド出身の詩人レオボルド・ズボロフスキーがやって来る。彼の妻であるアンナにモディリアーニが依頼したヌードモデルの仕事を断りに来たのだ。

 だが。そこで女優のルニアをスケッチするモディリアーニの絵を見たレオポルドは、一瞬で彼の才能に魅入られてしまう。

 妻にはモデルを引き受けるよう勧め、さらに自らがモディリアーニ専属の画商になると決意するのだが———。

【CAST】

 アメデオ・モディリアーニ/浦井健治

 

 レオボルド・ズボロフスキー/稲葉友

 ジャンヌ・エピュテルヌ/宮澤佐江

 

 アンナ・ズボロフスカ/福田えり

 デカーヴェ警部/俵和也

 ポール・ギューム/大津裕哉

 ヴィクトル・リビオン/ 鎌田誠樹

 

 ルニア・チェホフスカ/秋本奈緒美

【感想】

 作者が亡くなってからの方が作品の価値が上がる。

 この作品に横たわっているのは、芸術に詳しくない私でも知っている、芸術と商業の問題です。

 そして、これは現代にも通じる問題でもあります。

 まぁ、現代は“亡くなってから”という露骨さはありません。

 ですが、今騒がれている、原作を扱うドラマや映画、アニメの問題も根本は同じ。

 作者の思いではなく、ビジネスとして成り立つかか成り立たないかが優先される。

 この作品ではモディリアーニを通して、それによって生み出される悲劇を描いています。

 間近に迫る死を悟っているモディリアーニの佇まいからラストでの彼の死を受け入れる人、受け入れられない人の思いが描かれていく過程を見ているうちに、涙が止まらなくなり、最後は嗚咽になるのを抑えるのに必死でした。抑えきれずに多少は漏れていたと思います。

 今の時代だからこそ、このテーマがとても大切。11公演しかないことが勿体無いと思いました。

 また、劇伴もとても素敵でした。かみむら周平さんのオリジナル曲とのことですが、重厚で刹那げで余韻の残る曲たち。

 戦時下であるという重々しい時代の空気感とそこに生きる人々の切実さを、ときには優しく包み込み、ときには怒りに駆り立てるような素敵な曲ばかり。

 稲葉友君と秋本奈緒美さんはミュージカル初挑戦とのことでしたが、ハーモニーもとてもキレイでしたし、耳福な時間でもありました。

 

【Actors Check】

 今回の上演が発表された際、実は観劇を見送ろうと思っていました。芸術に詳しくない、というのが理由です。

 ですが。モディリアーニとしての浦井君のビジュアルが公開された瞬間に気持ちが変わりました。

 孤高の画家としてのビジュがあまりにも儚げで、これは新しい浦井君が見られそうだぞ、とチケットの申し込みをしました。

 実際に舞台に登場したモディリアーニとしての浦井君、凄まじかったです。

 気難しくて荒々しく、太々しささえ感じさせる荒くれ者振りが一瞬で分かってしまうんです。

 浴びるように酒を飲み、好きなように絵を描く。大胆不敵のようでありながら、同時に脆さも併せ持つ。

 気高く孤高でありながらも、人を惹きつけるモディリアーニがそこにいました。

 そんな彼を変えていくのは、レオボルドの友情とジャンヌの愛。

 しゃがれたような声だった浦井君の歌声が、徐々に徐々に澄んだ天使のような歌声に変化していきます。

 目を閉じて聴き入りたい。けれど、目の前ににる浦井君のお芝居も見たい。もう葛藤でした💦

 コロナで観劇を控えていた期間があり、昨年春の『アルジャーノンに花束を』から観劇を再開したのですが、浦井君のお芝居と芝居歌をここまでガッツリ観られるのがアルジャーノン以来で、ひたすらに浦井君に魅入っていました。

 『アルジャーノンに花束を』は絶対に映像化されない作品なので、今回はこの浦井君を永久保存版にしたいと思い、DVDも予約して来ました。そうすれば、目を閉じて歌だけを聴くことだって出来ますからね。

 浦井君のストレートプレイももちろん好きなのですが、やはり歌声も聴きたい派なので、今回は大満足でした。

 パンフレットを読むまでは、最初にモディリアーニが決まっていて、そこに浦井君がキャスティングされたのだと思っていたのですが、浦井君と芝居が出来ると決まったG2さんが「モディリアーニだよ!」と思ったのだそう。

 浦井君とG2さんで創り上げたモディリアーニ、とても素敵でした。

 

 いつもですと、浦井君の感想を最後に書くのですが、今回は先に書いてしまいました😅

 ここからは共演者の方について書いていきたいと思います。

 まず、稲葉友君ですが、映像作品で何度もお見かけしているので勝手に親近感がありまして、その友君と浦井君がどんな友情を見せてくれるかと楽しみにしていました。

 友君もイイ声してるんですよね。スタイルもいいですし、舞台映えもバッチリ。まだ舞台上での佇まいが定まっていない感がありましたが、そこがまたレオボルドの真面目さと不器用さと熱情に重なって見えて、とても熱い人物になっていました。

 

 宮澤佐江さんはナマではお初になりますね。

 以前、『王家の紋章』でのゲネプロ動画を拝見したとの『キングアーサー』をアーカイブ配信で視聴したのとで、宮澤さんは怒鳴るお芝居があまり得意ではない方なのだというのが私の中での評価でした。

 実際『キングアーサー』では前半のお芝居も歌もとても良くて、浦井君とのデュエット部分でも声がとても合っていると思ったんです。ですが、後半のあるシーンでの泣き叫ぶシーンはやはり苦手でした。ただ怒鳴っているだけに聴こえてしまっていたんですね。

 今回のジャンヌでは、売るための絵を描くことを拒否するモディリアーニを叱るように説得するシーンと、彼の死に絶望するシーンがあったのですが、とても丁寧に繊細にお芝居をされていたように思いました。

 少なくとも私は怒鳴っているだけとは感じなかったですし、ジャンヌの持つツンデレな部分が宮澤さんにとても似合っていて、モディリアーニだけでなく、見ているこちらもデレてしまうような雰囲気がよく出ていました。

 

 デカーヴェ警部の俵さん以外の方は初見で、たった8名の舞台を重厚に盛り上げてくださっていました。

 その中で特に印象に残ったのがアンナの福田えりさん。モディリアーニがヌードを描きたくなるという母性愛的なエロスと可愛らしさが滲み出ていて、とっても魅力的でした。また彼女の困った顔というのがとてもチャーミング。気になる女優さん発見です。

 

 最後は秋本奈緒美さん。

 子供の頃からずっとテレビで拝見してきた、それこそ“THE女優さん”です。

 今回のルニアは女優の役で、もう、そこにいるだけで圧倒的な存在感。

 立っていても座っていても、とにかく美しい。

 その上、私、秋本さんの低音ボイス大好きなんですよね。

 秋本さんの歌う『故郷を持たぬ鳥』とても素敵でした。

 

 たった11公演しかないというのが勿体無いほどの重厚で素敵な作品です。

 本日23日の15時から30日の22時まで、有料チケットでのアーカイブ配信が行われます。

 お値段的に3900円が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のこのブログを読んで、少しでも興味を持たれた方は、ぜひご覧になっていただきたいと思います。