赤楚君の演じる天堂海斗から、悪役について考えてみた | Capricious Bookshelf

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 赤楚衛二君主演の『Reリベンジ -欲望の果てにー』もいよいよ佳境。

 主役の闇堕ちというまさかの展開に最初こそ戸惑いましたが、7話までの感想を書いた前回のブログに書いた通り、今は堕ちて行く海斗を演じる赤楚君のお芝居を堪能しています。

 毎話毎話、「うわっ、こんな悪い表情が出来るんだ!」とドキッとさせられています。

 

 そんなタイミングで、秋の上川隆也さんの『罠』と冬の浦井健治さんの『天保十二年のシェイクスピア』での主演が発表になりました。

 『罠』は前回の2017年にサンシャイン劇場で上演されたバージョンを見ていまして、そのときに筒井道隆さんが演じたカンタン警部役を上川さんが演じます。カンタン警部は悪役ではありませんが、非常に怪しい人。

 そして『天保十二年のシェイクスピア』で浦井くんが演じる佐渡の三世次は根っからの悪党で、過去に上川さんも演じたことのある役。

 それぞれ過去に上演されているものを観ている作品なので、もうゾクゾク感しかありません。

 赤楚君の海斗から始まってのこの2つの発表で、ふと〈悪役〉について思いを巡らせ始めてしまったので、自分なりに整理するためにも文章に残そうと思います。

 

 〈悪者〉や〈犯罪者〉というものは本来、憎まれたり、嫌われたり、恐れられるもの。

 フィクションの中でも〈悪役〉は基本的に、主人公を引き立てるための存在です。

 ですが。中には、人を惹きつける存在となる〈悪役〉が多数存在するのも確か。

 私自身、ある程度の年齢までは〈悪役〉や〈破滅型〉の登場人物が苦手でした。

 そこに最初の変化を与えてくれたのが、上川隆也さんだと思います。

 忘れもしない1993年のクリスマスイブ。演劇集団キャラメルボックスが上演した『キャンドルは燃えているか』と言う作品です。私が観た初のキャラメルボックス作品であり、劇団のことも上川さんのこともまったく知らない状態での観劇でした。

 この作品で上川さんが演じた竜野は上川さん自身が「客席の一番後ろに座る人にまで憎まれるような悪役をやりたい」と座付作家である成井豊さんに希望して書かれた役。

 登場した瞬間に全身から放たれていた威圧感に「この人、何?」となったことを今でもはっきりと思い出せます。見るからに敵役でヒールなんです。なのに、目が離せなくなっていたんですね。

 結果的に自滅していく竜野を演じる上川さんのお芝居に圧倒されて、そこから私の観劇人生がスタートしたわけなのですが、それと同時に〈悪役〉が苦手な存在ではなくなり始めたのだと思います。

 とはいえ。この後に上川さんが演じた1999年『TRUTH』の鏡吾と2002年に『天保十二年のシェイクスピア』での佐渡の三世次のときは、まだ完全に免疫が出来ていなかったのか、胃もたれのような状態になりはしましたが😅

 

 悪役について書くとなると外せないのが、2009年に劇団⭐︎新感線で上演された『蛮幽鬼』で暗殺者サジを演じた堺雅人さんです。

 爽やかな笑顔で人を殺していくというサジですが、彼にはそれしか生きる意味がなかったという悲しい役でもあり、その悲哀を演じ切った堺さんの演技が圧巻でした。

 

 そして、私にとって悪役という概念を完全に引っくり返してくれたのは、浦井健治という俳優さんとの出会いです。

 作品ごとに作品ごとに全く違う顔を見せてくれる浦井君でしたが、2015年の『デスノート The Musical』で歪んだ正義のために闇堕ちしていく夜神月を好演、悪にならざるを得なかった人間の悲しさを見せつけられたんです。

 その後も『あわれ彼女は娼婦』や『ペール・ギュント』という問題作でのお芝居、劇団⭐︎新感染『メタルマクベス』などで、悪いお芝居の浦井君にハマるように(あ、おバカな役やいい人のお芝居も好きですよ)。

 

 だからと言って、全ての〈悪役〉に惹かれるというわけではありません。

 私が惹かれる〈悪役〉とういうのは、そうならざるを得なかった背景だったり、自滅していく悲哀がきちんと表現されているものなのだと思います。

 ここで赤楚君の天堂海斗に戻ります。

 9話時点での海斗は 明らかに自分を見失っています。その一番の理由が自分を排除しようとしている大友に対する怒りと対抗心が原因だと思われますが、その怒りに惑わされて自分が軽蔑してたはずの市子と同じ道を歩んでいることに気付けずにいます。

 悪魔に取り憑かれたような冷たさが妖しく美しくもあってハッとさせられるのですが、その“美”が憎しみで歪んだり、取り繕うとして狼狽える様がちゃんと醜く見えるので、そういう部分にも私は魅せられていますし、評価されるべき部分だと思っています。

 もちろん、最終話まで視聴してからでないと最終的なジャッジは下せませんが、9話では理事長室で岡田先生を従えて若林先生を迎えるシーンでの貫禄と、紗耶が敵に回ったと知って怒りを抑えきれなくなった海斗の豹変するシーン。この2つのシーンでの海斗に美と恐怖を感じました。

 赤楚くん自身がこの役に賭けている思いを感じつつ、残り2話でのお芝居もじっくりと堪能したいと思いますし、この海斗を終えた後に赤楚君にオファーされる役がどんな役になっていくのかも楽しみです。