民間がレスキューに動くしかない日本 | CAPIN(キャピン)公式活動報告

CAPIN(キャピン)公式活動報告

認定NPO法人「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク CAPIN」
公式ブログ

当会にまた相談がありました。


茨城県在住の60代男性が、脳梗塞で運ばれ意識不明となって10日。退院の見込みはない。親族も見つからない。自宅には保護猫含めた複数の猫たちが飼育されているはず。餌も水もなく、閉じ込められた猫たちが心配。茨城県動物指導センター、市役所に相談しても、何もできないと言われた、どうしたら良いでしょうか?


と会社の同僚という方から連絡がありました。

その方と待ち合わせ、窓から投げ入れるフードなどの用意をし、現地に向かいました。


いざというときのため、弁護士からの委任状も用意して動きます。




何とか解決に至りました。


現場にすぐに駆けつけなくては命に間に合わないことがあまりにも多く、行政や警察はまず動きません。助けなくては死んでしまう、人間が諦めたらそこで終わり、心こめて真剣に取り組まねば散り去るチャンスです。


ボランティアさんたちはみな、そうした思いで動いています。


イギリスではなぜこのような場合に行政、査察官とで家屋に入り動物の救出ができるのか。できる国があるならその法制度から学んで日本に導入すればよい。


行政がなぜ動かないのか、違法なことはできないのは理解できるけれど、状況を現場にきて確認はできないのか? 近隣の方から親族の情報も得られるかもしれない、新しい手がかりが掴めるかもわからない。


家に入るには親族の許可がいる、なら入らないで助ける工夫はないか、小窓は開いていないか、


中の猫は当会の猫ではないか、

その可能性はある、

それがトライアル中なら所有権はこちらにある。


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全国動物ネットワーク 認定NPO法人 CAPIN 代表 鶴田真子美 

◆現場で動かねば殺処分は止まらない◆

当会CAPINは茨城県で殺処分ゼロを目指して活動する認定NPO法人です。茨城県は犬の殺処分数ワーストが8年連続だった野犬王国です。2011年シェルター開設以来13年、毎日の散歩で私たち会員の胆力も脚力も鍛えられてきました。 「ストップ殺処分!2019年」以来、茨城県動物指導センターからこの5年半でCAPINが引き出したのは犬618頭となりました。週に2回センターに通い、毎週4頭以上を引き出し、様々な妨害のなかで収容犬たちを撮影。税金で何が行われているかの事実を市民に知らせることを第一に動きました。みだりな殺処分が行われようとしたときには警察を呼びました。現場にいなくては情報も集められず実態は隠されてしまいますので、殺処分は止められませんでした。特別な資金源もない私たちが殺処分を止めるために考案したのは、個々の犬に親代わりのご支援者(センターレスキューペアレントCRP)を呼びかけながら1頭ずつ引き出していくスタイルでした。2023年2月に殺処分再開の予告があり、対象犬28頭のリストが出されたとき、私たちは緊急にエマージェントレスキューペアレントERPを呼びかけ、複数のペアレントが1頭を引き出す制度で殺処分再開を阻止しました。犬最多であった県も殺処分が止まって4年になります。

◆第二種動物取扱業への規制

 今年は前回の法改正で決まった数値規制が本格化する年でもあります。部屋の広さ、ドッグラン増設、屋根がけ、スタッフ数と、この6月に向けてCAPINも必死に環境を整えて参りました。 私たちのように保護施設シェルターを持つ保護団体は、第二種動物取扱業と言われます。施設には2011年と2019年に県の査察が入り、審査を経て登録されました。その結果、指導センターからの犬猫引き出しなどが可能となっています。私たちは奉仕でこの活動をしており、非営利活動法人であり、何かあれば私財を投げ打ち、手弁当でボランティアをして参りました。殺処分される犬猫を助けるときはいつも丸投げされています。が、5年前の法改正では第1種動物取扱業、つまりブリーダーやペットショップと同様の数値規制を受けることになりました。数値規制が悪いとは思いませんが、現場では苦しくてなりません。団体によるとシェルターの猫を捨てたり保護を渋ったりする保護団体も出ていると聞きます。規制をするなら助成も必要のはず。殺処分を止めてきたのは民間ボランティアたちです。もし第二種動物取扱業がつぶれたら、殺処分される犬猫を助ける団体がなくなります。家賃や高騰する光熱費水道代、医療費への手当、我々が支払う飼い主のいない犬たちの畜犬登録料や済票手数料の免除など。ペット業者に対する規制を保護団体にも等しく課したならば、公益性の高い活動を身銭を切って行ってきた保護団体に対して同時にサポートをもすべきという意識はなかったのでしょうか。

◆これから何が起きるのか?

 これから何が起きるのか。数値規制により廃業するだろう第一種動物取扱業、つまりブリーダーやペットショップは3割にのぼるとも言われています。法改正で、その3割の繁殖犬猫たち13万頭が行き場を失い、その多くが第二種動物取扱業に流れるだろうと言われています。その受け皿であるボランティアたちを潰すわけにはいかないのではないでしょうか。小型犬や純血種に人々は群がり、第2種動物取扱業の私たちが抱える中型犬や雑種犬たちの譲渡は鈍るでしょう。こうした状況が予測される今、国や議連がやるべきは、第二種動物取扱業を支援・育成し、この苦難の数年を乗り切れるだけの胆力、体力を授けることではないでしょうか。

 殺処分ゼロをめざして、と法改正をした国。殺処分ゼロをめざす条例を作った県。その結果、殺処分を免れた犬猫はどこに行くのでしょうか。飼い主のもとに留まるか動物保護団体に押し付けられ、当然多頭飼育となります。本来ならここに手当てすべきです。法改正により私たち保護ボランティアにも、ペットショップやブリーダーたちと同様の規制がかけられることとなりました。もちろん動物取扱業において、お世話に必要な人手と飼育スペースが数値化され、明記されたのは動物福祉の観点から一歩前進であり、必要なことです。ただ、動物取扱業も第1種(ペットショップ、ブリーダー)と第2種(シェルターを持つボランティア)があり、それを分けて考えねばなりません。動物を商品として繁殖し、売買する第1種には厳しく数値規制をかけて、劣悪なパピーミルを減らし、優良なブリーダーしか営業できないように法規制することが求められているのは世界の潮流です。(フランス、カリフォルニア州、ニューヨーク州でもペットショップは禁止となりました。)しかし、ペットショップやパピーミル同様に、保護団体をも規制の対象にすることが決まったのです。

◆助けない行政・警察に代わって保護する民間団体

 行政に代わって、犬猫を押し付けられ、保護や譲渡を行う個人、団体ボランティアには、ある一定の条件を満たしている場合、支援があってよいのではないでしょうか。数値が明確にされたいま、保護頭数に見合ったボランティアの確保、スタッフの雇用、改築工事は保護施設にも必要となります。行政は議員は、殺処分ゼロを達成しました、と誇らしげにTVで語りますが、毎日その子らを世話している全国の民間ボランティアは、光が当たらないどころか犯罪者扱いをされます。寄付金詐欺だとか。ホーダーだとか。現場で助ける個人、団体ボランティアたちは、汗にまみれ、土だらけになって朝から晩までお世話をし、週末は里親会に犬猫を引き連れて、人生の大切な時間を費やしています。なぜなら、行政や警察が動かないからです。仕方なく引き取るしかないからです。ところが国や自治体はボランティア団体を育成、助成するどころか、ペットショップと同様の規制をかけて保護活動を困難にし、団体を追い詰めています。好きで多頭飼育者になったわけでない。みんなが押し付け、覚悟をして引き受けたのです。昔から、犬猫問題は政策課題にあがりませんでした。保守系の高齢男性議員たちから、犬猫問題は「女こどものやること」として蔑まれてきました。だから各自治体には生かすための施設がなかなかできません。出来たとしても数十頭しか入らない、など。一頭ごとに向き合って助けるよりも、やってます、の世間体。日本の保健所やセンターの犬には常に殺処分の公示期間がくっついています。死と隣り合わせです。ボランティアが引き出さねば殺処分となるのだと。プレッシャーと脅しが背景にあってのセンター引き出し。ボランティアは犬猫を押し付けられて、補助はなく、自己責任。2011年福島の原発事故の周辺で環境省と保護活動をしたときも、レスキューした犬猫は自己責任、として念書を書かされました。みんなが助けたいと言う。が、誰も手を貸さないのです。ボランティアは見捨てずに保護する。そこになぜ、支援がないのでしょうか。保護団体の活動に足枷をはめるようなことばかりなのでしょうか。数値規制の意義はもちろんあります。でも、規制をするなら助成とセットにすべきです。市民活動やボランティアを育成する姿勢が見られないのはおかしいと声をあげさせて頂きます。

◆児童養護施設を参考に、持続可能な保護施設を!

参考に、児童養護施設について考えます。

 たとえば人の場合。養う大人がついていない、だから行政が養う子ども。親のいない、あるいは捨てられた、事情があって親と暮らせない子どもたちが暮らすのは児童養護施設です。日本の児童養護施設に国からあるいは地方自治体から助成金が支払われている一人当たりの額は年間で300万円前後です。国、都道府県、市町村がそれぞれ5割、2割5分、2割5分ずつを負担しているのです。児童養護施設と同様に、第二種動物取扱業の保護シェルターの運営を、国と自治体で支えることができないでしょうか。ペット保険会社が算出した1年間にかかるペット飼養費は23万円です。犬20頭を抱える第二種動物取扱業には、23万円×20=460万円の助成を行うとします。財源は国と地方自治体。460万円あれば、300万円を人件費として月給14万円で働く方を2人採用でき、数値規制も確保できます。残りで医療費や飼養費を賄い、家賃、水道光熱費の一部にも充てられます。

 こうした助成金を受けることにより、さらなる規制がかかるのは覚悟の上です。公金を注ぎ込むからには最低限法人格がないと、厳しくなるだろうと思われます。児童養護施設や障がい者施設であれば社会福祉法人。動物保護施設であれば、NPO法人、認定NPO法人、一般社団法人。そのような法人格を持つ動物保護団体を対象にするという条件を付けて、助成するのです。運営を継続するには必要な措置であると考えます。動物愛護法のなかに盛り込むこともできるし新たな法律を作ることも考えられます。日本には、その第一歩が必要だと強く訴えます。

 






院内集会で設営や受付のボランティアスタッフを毎年されていた方が、おそらくシェルターでの過労も要因となり、5月に急逝されました。


私たち第二種動物取扱業はシェルターを持って毎日を犬猫のお世話のために過ごしています。


早朝や真冬、真夏はボランティアだけで乗り切るのは困難です。人を雇用するにはどうしたって資金が必要です。


私たちが命削りレスキューしなくてもよいよう、この国にも、公的シェルターを整えて頂きたいです。



by鶴田真子美(おかめ)