川崎市富士見公園・工事から猫達を守った記録1.2.3. 「市民がどうやって猫を守ったか」 | CAPIN(キャピン)公式活動報告

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認定NPO法人「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク CAPIN」
公式ブログ

犬猫救済の輪さんから連載記事三本を転載させて頂きます。


公共工事や開発により、そこで市民が守ってきた飼い主のいない猫たちの居場所が突如奪われることになりました。


そのとき、市民はどう動いて、猫の命を助けたか。


どの法律を武器にしたか。


どのように粘り強く交渉したか。


これは、犬猫救済の輪さんとそのお仲間の皆様が、川崎市を舞台に闘って、猫の生存権を守り通した記録です。


あらゆる地域で起こりうる問題です。


私たちに、交渉の記録に残してくださることに感謝申し上げます。


全国の動物たちを護るためのよすがとなる記録です。


最後は、地域猫と集団で括られても、猫は猫、私たち人間と心通わせる愛護動物であり、色形も様々で1匹ごとに名前を持ち、個性を有する、かけがえのない命であるという事実を認めさせ、その認識を共有できたことが、生かす道を切り拓いたのではないかと思いました。


粘り強く諦めない気持ち。


犬猫救済の輪の結さん、さすがです。


福島の猫も最後までやり遂げた、ひとりでも。


ありがとうございます。

勇気をもらって、全国の私たちも続きましょう。


ダウンダウンダウンダウンダウンダウンダウンダウンダウン




川崎市川崎区の富士見公園はJR川崎駅から徒歩10分に位置し170,488平方メートル、東京ドーム3.6個にあたる広さがあります。

ここには36匹の猫が市民に世話をされて暮らしていました。ところが令和5年4月から公園全面に大整備工事が行われることになりました。そして、川崎市役所から、17年前、整備工事に際して設置したシェルターの取り壊しを求められました。シェルターがなくなったら、どこへ猫を保護したらよいのか、ボランティアが全頭保護しなければならないのか、危険な工事で怪我をしたり、失踪して行方がわからなくなるのではないか・・

私達は川崎市や事業者と約2年にわたって交渉を重ねました。交渉は難航しましたが、工事開始直前に公園内に、あらたに猫保護シェルターを川崎市に設置していただき、猫を全頭保護することが出来ました。

工事は全国どこでも行われ、公有地であれ私有地であれ、そこに地域猫という形にせよ、そうでないにせよ猫達が暮らしているケースがあると思われます。

ここに工事から猫達を救った記録を残すことで、ひとつの救済モデルケースとして参考にしていただけたら幸いです。

声を上げて下さった団体様、個人の皆様に厚く御礼申し上げます。

川崎市に申し入れをして下さり、本記事の法的な部分の監修をして下さった弁護士の坂本博之先生、最期の病床からもご心配いただいた市議の故・飯塚正良先生、そして長谷川智一先生、社会問題として問題提起して下さったジャーナリストの古川琢也様に深く感謝いたします。また、市役所の矢口課長、山本課長には大変お世話になりました。

現在、富士見公園シェルター、順調に稼働中です。


1) 富士見公園のこれまで(2006年、全国初の公園内猫シェルターの設置から、2021年、旧シェルター撤去の危機まで)
富士見公園は17年前まではホームレスさんの小屋で埋め尽くされ、そこには捨てられて行き場のない犬猫が150匹以上もいました(写真1,2)。
2006年、公園全面改修工事に伴いホームレスさんの小屋がすべて撤去され、犬猫150匹、周辺もあわせると300匹が取り残されて、殺処分の危機に見舞われました。
2006年6月、交渉の末、川崎市環境局局長・環境局緑政部部長・健康福祉局地域福祉部部長・健康福祉局地域福祉部地域福祉課主幹と当会、犬猫救済の輪 結、ねこの代理人たち 中村、動物たちの会 杉本が面談、猫を保護する公園内シェルターの設置が決定しました。この面談には公園の猫7匹も参加しました。
川崎市が公園内に用地を提供し、ボランティアが自費で建てたシェルターは簡素なものでしたが、これが全国でも初めてと言われる公園内猫保護シェルターです(写真3、4)。このシェルターのおかげで、目のあかない子猫から老猫まで150匹以上の猫が里親に引き取られました。その後は市民ボランティアによる不妊去勢手術がシェルターを基点として絶えることなく続けられTNRも順調に進捗してきました。
その結果、近隣からの苦情や不安の声が多かった公園内が、適正な状態に保たれました。この数年はシェルターの使用頻度は減りました。見事に役割を果たしてくれたのです。ところが、2021年、突然、市役所から「2023年に整備工事が始まるので、シェルターを撤去してもらえないか」という話がありました。再度、大規模な工事が始まるならば猫達を保護しなければならないので、シェルターを撤去するわけにはいきません。どうしても撤去するなら、それに替わるもの用意していただきたいと要望しました。




































それぞれ、説明していきます。

1.「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)の第35条1項2~3項

都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「中核市」という。)その他政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)をいう。以下同じ。)は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
2 前項本文の規定により都道府県等が犬又は猫を引き取る場合には、都道府県知事等(都道府県等の長をいう。以下同じ。)は、その犬又は猫を引き取るべき場所を指定することができる。
3 前二項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。この場合において、第一項ただし書中「犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして」とあるのは、「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合その他の」と読み替えるものとする。

(解説)
川崎市は(飼い猫同様)所有者の判明しない猫の引取りを求められた場合、引き取らなければならないという規定です。富士見公園の猫達は飼い主の判明しない猫達であり、工事によって公園から追われて近隣へ逃げてしまえば3項の「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずる」ことになります。これは公有地に限らず日本全土に適用されます。保護のための引取りです。川崎市動物愛護センターに保護する、あるいは別の保護場所を用意するなど選択肢は多くあります。
引取りは殺処分目的ではなくあくまで保護のためです。それは次にあげる告示で動物の健康と安全保持のためという場合も記載されていることからも明白です。


2.環境省の平成18年告示第26号(最終改正:令和4年告示第54号)

都道府県知事等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがあると認められる場合又は動物の健康や安全を保持するために必要と認められる場合は、引取りを行うこと

(解説)
猫達の保護を川崎市役所に求めた直接の根拠となったものです。前掲の動物愛護法35条の規定からさらに踏み込んで、猫の健康や安全が脅かされる場所からは猫の引取りを行うこととしています。工事から猫達を保護してほしいとボランティア市民が求めていること、工事によって猫が公園外に逃げ出してしまうと周辺環境が損なわれるので近隣住民からも猫の保護の要望があること、なによりも重機や大騒音、粉じんで猫達が命を落としたり健康被害を受けるに違いないことが、全て、この告示と一致しています。これを根拠に、私達は川崎市役所に猫の保護を要望しました。ちなみに今回は富士見公園という公有地でしたが、この告示の対象は動物愛護法同様、公有地だけではなく全ての土地が対象です。

3.「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)の第44条1項及び2項

愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(解説)
弁護士の坂本博之先生が川崎市長には管理者として、工事請負事業者には実施者として申し入れをされた時の重要な条文です。先の動物愛護法改正ではこの44条について罰則が引き上げられ、より重い罪になりました。飼い主のいない猫も法の下では「愛護動物」ですので、この条文が適用されます。条文に照らし、工事によって給餌給水されない状態にしたり、健康と安全が脅かされる状態にすることは虐待罪にあたるとの貴重なご指摘です。動物愛護法の中でも特に重要な条文の遵守を厳しく求めてくださいました。

2023年3月9日 川崎市長あて坂本博之弁護士の質問状(抜粋)
ところで富士見公園内には、所謂地域猫として、民間団体がお世話をしている猫が31匹おります。一方、現在計画されている工事は、上記猫達が生活している、且つ世話を受けている場所を柵で囲ってしまうようであり、その様な工事が実施されると、猫達は世話を受けることが出来ず、餌や水を得ることが出来なくなって、餓死する、あるいは工事に巻き込まれて死亡することが予想されます。(中略)貴市が富士見公園の管理者として、多数の猫たちが公園で暮らしていることに何の留意もすることなく、工事が実施されることを漫然と見過ごされることは管理責任者には動物愛護法だ44条1項ないし2項所定の動物虐待罪が成立するものと考えますが、貴職はどの様にお考えですか。(抜粋終)

同日、坂本弁護士は工事請負事業者である川崎フロンターレ、松尾工務店、山根工務店にも同様の文書をそれぞれ送付されました。
2023年3月9日 川崎フロンターレ、松尾工務店山根工務店あて坂本弁護士の質問状(抜粋)
貴社が富士見公園再編整備事業に係る工事の実施者として、多数の猫たちが公園で暮らしていることに何の留意もすることなく、工事を実施してしまうことは、貴社の代表者や現場責任者には動物愛護法44条1項ないし2項所定の動物虐待罪が成立するものと考えますが、貴社は、どのようにお考えですか。(抜粋終)








5.「川崎市福祉のまちづくり条例」

第1条 この条例は、すべての市民が住み慣れた地域社会において安心して快適な生活を営み、積極的に社会参加を行い、及び心豊かな生活を送ることができるよう行われる福祉のまちづくりに関し、市、事業者及び市民の責務を明らかにし、並びに市の基本方針に基づく施策について定めるとともに、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できる施設の整備について必要な事項を定めることにより、福祉のまちづくりの総合的推進を図り、もって市民の福祉の増進に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例で使用する用語の意義は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。以下「法」という。)及び高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令(平成18年政令第379号。以下「令」という。)で使用する用語の例による。
2 この条例において「公共的施設」とは、官公庁の施設、社会福祉施設、医療施設、教育文化施設、公共交通機関の施設、宿泊施設、商業施設、共同住宅、事務所、道路、公園その他の不特定かつ多数の者の利用に供する施設で規則で定めるものをいう。
(市の責任)
第3条 市は、この条例の目的を達成するため、福祉のまちづくりに関する施策を総合的に実施する責務を有する。
2 市は、自ら設置し、又は管理する施設について、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるようその整備に努めるものとする。
(事業者の責務)
第4条 事業者は、福祉のまちづくりの重要性及び自らの事業活動が地域社会と密接な関係にあることを認識し、自ら設置し、又は管理する施設について、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるようその整備に努めるとともに、他の事業者と協力して福祉のまちづくりの推進に努めなければならない。
2 事業者は、市が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。


(解説)
では、実際にどのようなシェルターが提供されるべきなのかについてです。
私達は収容される猫の健康を第一に考えて、市役所にエアコンの設置を要望していましたが、矢口課長は「猫のための施設にエアコンというのは贅沢で(人々に)理解してもらえない」と懸念されていました。それに対して、高温が予想される密閉した場所では虐待飼育になってしまい動物愛護法に抵触する可能性があると、重ねて、エアコン設置を要望しました。
一方で、川崎市にはほかの自治体同様「まちづくり条例」があります。
市役所が提供する施設はことごとく、この「まちづくり条例」に合致したものでなければなりません。高齢者も障害者もすべての市民が安全安心に利用できるものでなければならないのです。
川崎市のホームページにはこの条例の制定について次のように記述されています。
「川崎市福祉のまちづくり条例は、すべての市民が住み慣れた地域社会において、安心して快適な生活を営み、積極的に社会参加を行い、及び心豊かな生活を送ることを目的に、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できる施設の整備について、必要な事項を定めています」

シェルターに収容されるのは動物(猫)ですが、大事なことは、それを利用するのは市民(人間)であるということです。そして市の責任も事業者の責務も条例には明確にうたわれています。
そこで、あらためてシェルターは「川崎市福祉のまちづくり条例施行細則」で定められた通りの仕様にしていただきたいと要望しました。
具体的には移動円滑化のためにシェルター入口に至るスロープを設置することや、スロープの勾配や幅、手すりなどについて申し入れをしました。結果、まちづくり条例に準拠したシェルターが完成しました。


6.「障害者差別解消法」

第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。


(解説)
富士見公園には、車椅子で毎日猫達の世話に通っているボランティアさんがいます。
新たに設置されるシェルターの造作が、車椅子のボランティアさんも活動できるようなものでなければなりません。この法律は当然川崎市内にも適用されます。

この法律については川崎市もホームページで分かりやすく説明しています。
「この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること)を求めています。」

まさに、車椅子のボランテイアさんから対応していただきたいとの希望があり、この法によるとその様な場合は市役所も事業者も対応に努めなければなりません(合理的配慮)。
合理的配慮についても川崎市がホームページで説明をしています。

合理的配慮の提供に関する基本方針とは(川崎市ホームページ)
「直営施設、指定管理施設問わず市民が利用する全ての施設の職員(正規職員のほか、会計年度任用職員、指定管理者等も含む)が、「合理的配慮の提供等に関する基本方針」と「障害のある方へのサポートブック」に基づき、合理的配慮の提供を行います。」
障害のある方がボランティアの中にいてもいなくても、前出の「川崎福祉のまちづくり条例」によって、バリアフリーな造作にしなければなりませんが、今回はさらに「障害者差別解消法」を守っていただくことを要請しました。
シェルターは市民が利用する施設であるということを再確認する結果となりました。「猫シェルター」つまり「猫のための活動をする市民(人間)が使用する施設」であるということです。











川崎の猫たちを守る犬猫救済の輪のバースデードネーションに応援よろしくお願い致します🤲
















by鶴田真子美(おかめ)