7月の末。
「猫の多頭飼育で、近隣住民とトラブルになっている家がある。
ぜんぶで20匹。
警察も市役所も、県の動物指導センターも苦情処理のため、指導に入っている。
猫は、いまのところ、庭の囲いの中で生活しており、外にはいかないので、糞尿被害の問題はない。
ただ、隣家は、猫の姿が見えること自体がいやなのだという。
猫が見えないよう、小屋と近所の家の間に仕切りの壁を作ることになった。
あとは、猫の頭数削減と健康管理。
どうしたらよいか。」
と、相談を受けました。
県の動物指導センターと住民、双方からの相談でした。
お世話をしている方は、野良猫が哀れで、ごはんをあげていたそうです。
子猫が生まれて苦情が出たので、7月に自宅の庭をつぶして猫の小屋をつくり、
周りは鳥小屋用ネットで覆って、広い猫の運動場を作ったといいます。
そこに、隣家からの苦情。
急いでネットをとって、狭いスペースに猫を押し込み、隣家から見えないようにしたそうですが、
それなのに、まだ見える、と再度警察が呼ばれた、といいます。
ネットをとったその晩に、まだ壁を作らないと、苦情がきたそうで、警察も困り顔。
人と動物の共生は、国も自治体も民間もともに目指す時代です。
この地球は、人間だけのものではありません。
あらゆる生命体のものです。
人間様だけが偉いなんてありえるはずもなく、犬も猫も、鳥も虫も、等しい命です。
ただ、見えるのが嫌だと。
存在をみとめない、そこにいる命でも。
ああ人間はどこまで偉くなったのか。
カーテンをひけばよいですし、今は、ガラス窓に貼るインテリアシールもある。
もう私有地に入ったのです。迷惑はかかりません。
どこまでもどこまでもおごり高ぶる人間。
今に、大きな仕返しが来るような気がします。自然から。動物界から。
* * *
もう、淡々と行動をするしかありません。
猫は、毎日ごはんを食べ、排泄をし、交配し、世話を必要とします。
ここから逃げず、この現実と向き合い、人と対決し、これをどう変えていくか、なのです。
この繰り返しで、どうすれば解決していくのかが、体でわかります。
きれいなところで妄想しているだけでは、現実は変えられないから。
頭数を確認し、動物病院に避妊去勢手術の予約をとりました。
病院搬送は、キキさんに行ってもらいました。
フットワーク軽く、まず現場に駆けつけ解決を図ろうとしてくれます。
早朝7時出発で、おとなの猫13匹を連れて、高速に乗っていってくれました。
子猫は時期が来れば手術、と話していましたが、キキさんからよく聞くと、
子猫は(おとな猫も)みな風邪をひき、じっとうずくまっているだけだそう。
眼もつぶれて、ひどい状態だといいます。
病院から、電話がかかってきました。
「これまで手術をしてきた野良猫たちより、今回の13匹は健康状態が悪い。
飢餓が長く続いた猫だろう。
また、ウイルスも持っているだろう。
風邪の症状がある。
そこらへんの野良猫のほうがまだ元気。
弱って黄疸が出ているのがあり、これは入院させる。
このまま戻しても死んでしまうから。
避妊手術後に退院させた痩せたミケの体調も心配だ。
えさを食べているかどうかよく見てほしい。
おとなの猫さんたちのほかに、そこにいる子猫たちが心配だ」
まだお若いのに、捨て身の覚悟で、野良猫の避妊去勢手術を格安で引き受けてくださっている
越谷の稲垣先生です。
猫思いの獣医さん、私たちにはありがたい存在です。
急いで現場を見に行きました。
やせたミケは、元気そうで、ごはんを食べていましたので一安心。
(左)退院したミケ。ほっ!
チュールとビブラマイシンを箱で持っていき、薬を与えるようお伝えしました。
「チュールに細かくした薬をまぶして、
1匹ごとになめさせてください。
風邪はだんだんよくなっていくから。
水を飲ませるように。」
目薬もたくさん持っていきました。
みんな、とんさんからのカンパのお薬です。
ここの猫たちに、役立てさせて頂きました。
ありがとうございます。
そして、とんさんは、昨日の映画上映会でも、薬の追加カンパを持って、
シェルターまで駆けつけてくださった!
また、次の子に使わせてもらえます。
手術したあとは、食欲も戻って、なんとか元気になった大人猫たちです。
ともちゃんも、前日に、薬と猫フードをシェルターから運んでくれていました。
若い人たちも、みんなで心配していたんです。
ここの猫さんたちを。
ほとんどがエイズ陽性で、譲渡も難しく、また、自由にして地域猫にするにも、
近所の理解がまるでないため、虐待にあいかねないケースで、フリーにすることはできません。
子猫は、全部で8匹。
全頭、即、近くの病院に入院させました。
でも、2匹は、1週間後に相次いで病院で亡くなりました。
600gくらいに育っていたのに!
こんなに悔しいことがあろうかな!
2匹はうずくまって、じっとしているばかりだったそうです。
残り、6匹のうち、5匹はエイズ陽性でした。
これも悔しいです。
でも、母猫からの移行抗体かもしれず、もしかしたら陰転するかもしれません。
半年間は、成猫の鳥小屋ネットには入れずに、依頼者さんの家の縁側に2段ケージを置いて、
そのなかでお世話をしてもらい、もしも再検査でマイナスに転じていたら、譲渡をすることにしました。
2段ケージは3つ、ドラメイさんに通販で注文してもらって、ここのお宅に届けてもらいました。
子猫は2ケージに分かれて入ります。
残りの1ケージには、黄疸の退院猫さんが入るためです。
黄疸のガリガリ猫さんは、流動食をしばらくは継続しなければならないのです。
みんな、頭としっぽが黒の、同じような柄の白黒です。
見分けがつくように、耳にマジックで番号が書かれていたのには笑えました。
最後の8匹目の子猫ですが、この子だけ、運よくFELVもFIVもマイナスでした。
だから、譲渡対象として、連れ帰りました。
* * *
世話人のおばさんは、やさしい人です。
このあたりの野良猫のお世話をしてこられたそう。
前に、お墓を通りかかったとき、子猫の鳴き声を聞いたそうです。
それが、2日、3日と経つうちに、だんだんと鳴き声が小さくなって。。。
あれ?どうしたかな?と心配になって、よくよく探してみたら、お墓の塀の隙間の。。。
猫よけの網に、子猫がからまっていたそうです。
ミルクを与えたら元気に育ち、いまでは成猫の群れのなかの1匹になっています。
連れ帰った、唯一の子猫。
こんなに大きいのにミルクをあげねばなりませんでした。
入院先で亡くなった2匹の兄妹も、同じくらいの大きさだったから、
気をゆるめられずに、温めと授乳で、大変な夏となりました。
眼もひどく、白い膜がかかっています。
子猫のときに、すでに片目はいつもくっついていたそうです。
こじあけて目薬を差さないと、眼球がだめになるのですよね。
でも、つかまらなかったから、どうしようもなかった、と。
ほんとうに、捕獲器さえあれば、たくさんの猫が助けられるのに。
名前は、このは君。
やっと自力で食べられるようになりました。
ミルクを卒業し、8月10日に、ちゃまめさんのお宅に移動しました。
だっこはできるが、まだちょっと飛行機耳です。
慣らしのためにお預かりをお引き受けくださったちゃまめさん、ありがとうございます。
里親デビューも間近です。
8匹のうちの、ラッキーボーイ、可愛がってくださる方を大募集しています。
byおかめ