「マッサージして」


お風呂上がり、濡れた髪のままベッドに転がって、私に向かって手を伸ばす。

ベッドの端に腰をかけ、彼の手を取る。


暫く私の手の動きを見つめていた彼が、やがて目を閉じる。

時折傷むのか眉根を蹙める。

そのうち、反応が鈍くなり、かすかな寝息が聞こえだす。


手を放し、タオルケットをそっとかけ直す。

額にかかった髪をそっと払う。

気付かずに眠り続ける、彼。


疲れの陰はあるけれど、安心しきった様子に胸が締め付けられる。


「……ここが一番落ち着く」


以前、彼が多分何気なく口にした言葉が耳に甦る。

それは他の誰よりも私を信頼する言葉。


彼が安心して穏やかに眠れる場所で、私はありたい。

このままずっと一緒だと信じてた

あなたのいない左側なんて想像できなかった

あの頃


なのにどうして私たちは……


中島みゆきの「わかれうた」

あなたが昔気まぐれに教えてくれた一番簡単なコードの曲


……恋の終わりはいつもいつも
立ち去るものだけが美しい
残されてとまどうものたちは
追いかけてこがれて泣きくるう……


うそだ

立ち去るものは美しく見せているだけ

遊びで愛したわけじゃない

嫌になって離れたわけじゃない



「迷っている」

そう言いながらあなたがほんとうは迷ってなんかいないことを私は知ってる

あなたはほんとうに迷っていると思っているのかもしれなくても



あなたの答えを知っているのに

やっぱりどうしても

「会いたい」


二度と

私のものにならないことを知っていても

「会いたい」