誰も知らない

誰にも言えない


失ったはずの諦めていたはずのものが再び目の前に現れたとき

失ったままに諦めたままにできる人がこの世にどれくらいいるだろう


間違ってると分かってる

二度ともどれないとは分かってる


それでも

手を伸ばさずにはいられない この想い

あなたのいない夜。

かかってくるはずのない電話を待ちながら、機械的に読みかけの本のページをめくる。

話し相手を求めてネットを繋ぐ。

静けさが気に障ってにぎやかな音楽を流す。



ベランダに出ると冷たい秋の風。

肌から熱を奪って吹き抜けていく。



逢いたい、逢いたい、逢いたい……。


あなたに言えない言葉。

心の中で想いはジンチョウゲのように結ばれて、ほどけなくなっていく。


部屋の中で携帯が鳴る。

あなたからの着信……待ちこがれていたのに、すぐに手を伸ばせない。


「もしもし」


あなただけに使う、声。

熱を帯びた甘い、声。


「なにしてた?」


携帯の向こうから聞こえてきたあなたの声に、身体中の力が抜けていく。

嘘を付いた。

それをあなたが私に求めたから。

それをあなたが必要としたから。


自分の口にした言葉に吐き気がする。

なんて偽善。

なぜ?なぜ?なぜ?

心の奥で声がする。

なぜ私はこんな言葉を口にしてるの?


嘘が私を壊していく。