薬剤耐性対策に関する全国的な普及啓発活動を推進するため、政府は、毎年11月を「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」と定めています。今回は、食品安全委員会が関係府省と連携して取り組んできた薬剤耐性対策について、ご紹介します。

 

【食品安全委員会による評価とリスク管理措置との関わり】

 

食品安全委員会は、食品中に薬剤耐性菌が存在する結果として生じる人の健康への悪影響が起きる可能性と影響の程度を評価しています。人だけではなく家畜などに対しても、抗菌性物質が使われていることは第1回でも御説明しました。抗菌性物質は、家畜の病気の治療(=動物用抗菌性物質製剤)や、飼料中の栄養成分の有効利用により、家畜の健全な発育を促すため、飼料に混ぜて使われています(=抗菌性飼料添加物)。農林水産省は、抗菌性物質を家畜に使うことによる薬剤耐性菌のリスクについて、食品安全委員会に評価を依頼します。

 

食品安全委員会において、第2回で詳細をご紹介した評価が完了した後、評価結果は農林水産省に通知されます。農林水産省は、評価結果を踏まえて、家畜などにおける問題となる薬剤耐性菌の発生を最小限に留める対策を、検討・実行しています。これまでに、食品安全委員会は薬剤耐性菌に関して36本の評価書を作成し、評価結果を農林水産省に通知してきました。抗菌性飼料添加物については、国内の家畜に使われている全ての成分の評価を2021年までに完了しました。このうち、食品安全委員会が、薬剤耐性菌による人の健康への影響を無視できないと評価した5成分について、農林水産省は、飼料添加物としての使用を中止しました。また、いくつかの動物用医薬品として使われる抗菌性物質についても、その使用を他の抗菌性物質を投与しても効果が見られない場合に限定する等の制限を課しています。

 

このように、食品安全委員会が実施した評価の結果を踏まえ、農林水産省では抗菌性物質が適切に使われるように、必要に応じて規制や監視を強化しています。食品安全委員会による評価と農林水産省による抗菌性物質の管理が車の両輪のように機能することで薬剤耐性菌による人の健康への食品を介した影響を未然に防止する取組が実践され、畜水産物の安全性の確保につながっています。

 

今後も食品健康影響評価を通じて、関係府省と連携しながら薬剤耐性問題に取り組んでいきたいと思います。また、食品安全委員会が取り組んできた薬剤耐性対策の詳細については、以下のリンクでもご紹介していますので是非ご覧下さい。

 

〇食品安全委員会の20年を振り返る(第2回 薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む)

https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/02_amr.html

 

○薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報

http://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.html

 

○薬剤耐性(AMR)(内閣官房)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infection/activities/amr.html

 

〇第1回投稿記事

https://ameblo.jp/cao-fscj-blog/entry-12827974086.html

〇第2回投稿記事

https://ameblo.jp/cao-fscj-blog/entry-12828866191.html

 

 

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