一人シュワ祭りは前回で最後にすると言ったな?
あれはウソだ。
どうも、キャンです。
めっきり寒くなって参りましたが、皆様お風邪など召されておられないでしょうか?
さて、のっけから、「そうか、それは悲劇だな。ところでタバコ持ってないか?」と、カート・ラッセルのような冷ややかな反応が返ってきそうな宣言をかましてしまい、恐縮です。
いやね、先日紹介した『コラテラル・ダメージ』のシュワちゃんといったら、難しい問題に苦悩し通しで、それがいけないわけではないんだけど、祭りの締めくくりとしてはどうなのよ?と。
というようなわけで今回は、俺が直近では最後に劇場で見た作品、『大脱出』を紹介したいと思います。
『大脱出』が最後とかマジか!?
この『大脱出』に関しては割りと思い出があってね~。
シュワちゃんとスタローンががっつりダブル主演すると聞いて、新着情報を楽しみに待っていたと思いねぇ。
まずは初期に出てきたポスター画像がこちら。
これは今までと何か違うぞと。
これまでの二人なら、シュワちゃんドーン!スタローンドーン!みたいなポスターになっていただろうが、このクールさはどうだ!
年老いたアクションスターの二大巨頭がタッグを組み、とんでもない新境地を開拓してしまったのではないか、そんな期待に心踊らせ、続報を待った。
そして、しばらくして公開された日本版のポスターがこちら。
シュワちゃんドーン!
スタローンドーン!
いつもの二人じゃねーか!!
しかもこちらのポスター、ちょっとどうかと思うほど盛大なネタバレをやらかしており、当時はかなり非難ごうごうだったように記憶している。
しかしやがて俺は、ネタバレなど些末な問題であったと知ることになる!
というわけでストーリー!
まずは冒頭、のっけからいきなり華麗な脱獄を決め、おまけに刑務所の所長に丁寧なネタバレまで披露する我らがスタローン。
今回のスタローンは、実際に脱獄して見せることで刑務所の問題点を指摘するという、法的にちょっとどうかと思う仕事に従事する、セキュリティ会社の社員。
そんなスタローンに早速次の依頼が飛び込んでくる。
依頼主はCIAを名乗る女性。
テロリストやらスパイやら、国家的にヤバめな犯罪者をぶちこんでおく非公式かつ非合法な民間の秘密刑務所をテスト運営中ということで、セキュリティの検証に協力してほしいという話だ。
明らかに胡散臭くリスキーな依頼に渋い顔をする同僚たちだが、我らがスタローンは三秒ほど考えてから即決。
案の定、当初の手はずなどガン無視して拉致られるスタローンなのでした。
こうしてスタローンがぶち込まれた先は、『キャビン』でモンスターたちが閉じ込められていたような、ガラス張りの奇妙な監獄。
そんなただごとでない刑務所で出会った謎めいた囚人が、そう、シュワちゃんだ。
で、このシュワちゃんがまた、初対面のスタローンに対してストーカーばりにガンガン距離を詰めてくる。
そうして、誰も聞いていないのに、「マンハイム」という男の話を始める。
なんでもマンハイムは、金持ちから金を奪い貧乏人にばらまくという、ネズミ小僧的な義賊らしく、この刑務所の所長及び出資者たちはマンハイムの居場所を知るため、マンハイムと繋がりのあるシュワちゃんを投獄しているのだとか。
マンハイムの話はともかくとして、スタローンとしてもこんなわけの分からん所はとっとと脱獄したいところ。
これまでの経験から懲罰房に穴がありがちと踏んで、「懲罰房に入りてぇ」とシュワちゃんに頼んでみるスタローン。
二つ返事でいきなり殴りかかってくるシュワ。
こうして二人は、乱闘のかどで無事懲罰房入りとなるのでした。
しかしこの懲罰房も普通ではなく、すげぇ強いライトでひたすら照らされるという仕様。
脱水症状になりながらもスタローンは、ここから脱獄の糸口を発見する。
そこで、あの手この手を駆使して(主にシュワちゃんが痛い目にあって)準備を整え再び懲罰房へ。
シュワちゃんに時間を稼いでもらっている間に懲罰房を抜け出し、縦穴をひたすら上へと登るスタローン。
そうして辿り着いた先は!
なんと!
洋上に浮かぶ巨大タンカーの甲板だった!!
知ってたけどな!
我々観客とは違い、そんなこととはついぞ思っていなかったスタローンはすごすごと懲罰房に戻り、プランを練り直すはめに。
まずはあれやこれやと材料を集め、お手製の六分儀を作成。
敵対的だったイスラム教徒のアラブ人を抱き込み、神に祈りを捧げるついでに経度を測定。
大まかな現在地を予測すると、次に、良心の呵責に耐えながらこの刑務所で働くお医者さんの協力を取り付け、マンハイムの協力者に連絡をとってもらう。
そうしたらあとはもう…、暴動よ。
一体何度目かも知れない乱闘騒ぎを起こした隙に、スタローン、シュワ、そしてアラブ人の三人で甲板を目指す。
しかし、主人公オーラをまとうスタローンとシュワと違い、アラブ人はただのアラブ人だ。
守衛たちに追われながら逃げる中であえなく被弾!
最早これまでと悟ったアラブ人は、二人を逃がすため、二丁拳銃でたった一人守衛たちに立ち向かい壮絶な討ち死に!
アラブ人ーーー!!!
アラブ人の犠牲を無駄にしないために、スタローンは機関室で電源を操作し、甲板へ抜けるハッチを開錠。
控えていたシュワちゃんが甲板に出てみれば、そこではヘリで救出にやって来たマンハイムの仲間が、守衛たちと激しい銃撃戦の真っ最中!
飛び交う銃弾の嵐の中を、一発もかすりもせずにヘリまで辿り着くシュワ!
ヘリの台座から機関銃をもぎ取るシュワ!
どうかと思うほどのスローモーションで振り返るシュワ!
機関銃を乱射するシュワ!!
一方、所長らに追われ船底に追い詰められたスタローンは、タンカーの排水口から排水されて脱出!
シュワちゃんがヘリでピックアップするも、しつこく追いすがる所長が甲板から銃撃!
縄梯子に掴まったまま拳銃を受けとるスタローン!
甲板にあるオイル缶を撃ち抜くスタローン!
「ドカン」と呟いてとどめの一発を放つスタローン!
盛大に爆発して火だるまになる所長!
そしてエピローグ!
ヘリで陸地まで辿り着いたシュワちゃんを迎えに来たのは、スタローンに依頼してきたCIAの女。
彼女はシュワちゃんの娘であり、実はシュワちゃんこそがマンハイムだったという、最早どっちでもいい事実が明らかになる。
真相はこうだ。
シュワ娘はシュワちゃんを助けるためにスタローンに依頼したが、金欲まみれのセキュリティ会社社長がCIAを飛び越して刑務所所長と直接取り引きをし、スタローンを生け贄にして脱獄不可能を証明しようとしたのだ。
結果としては、シュワちゃんの娘もきっちりスタローンをハメたわけだが、男の中の男スタローンはそんなことは気にせず、「おかげで親友になれた」と笑顔で別れ、一方で社長にはきっちり意趣返しを果たしてエンドだ!
さて、当時俺は、同じく映画好きの友人(♂)と二人きりで映画館に見に行ったわけだが、観賞後開口一番口にした感想を今でも覚えている。
「最近のシュワちゃんとスタローンを見てると、なんだかポカポカする」
「なによそれ、好きってことじゃない!」と、俺の中の某弐号機パイロットがツッコミを入れそうなコメントだが、まったくもって真実の気持ちだ。
確かに前述のポスターの件、今見てもかなりどうかと思う。
本編開始から一時間近くたって満を持して明らかになる衝撃の事実を、宣伝ポスターで明示してしまうなど、制作者の意図をガン無視する蛮行でありその罪は万死に値するというのが、俺の忌憚のない意見だ。
しかし、にも関わらず、鑑賞後の俺のポカポカ感はいささかも損なわれないというこの事実はどうだ!
シュワちゃんとスタローンは、たかだか日本の宣伝会社の愚かさなど及びもつかない次元に達していると言わざるを得ない!
本作ではシュワちゃんもスタローンもかなりのインテリ設定のはずなのだが、懲罰房に入りてぇ→乱闘、もっぺん懲罰房に入りてぇ→乱闘という、30年前の本宮ひろしの世界観から一歩も出ないノリ…、ポカポカする。
あるいは、スタローンが脱獄のプロらしく、尋常でない観察力を発揮し、仮面で顔を隠した看守たちの見回りパターンやクセを、えらく細かく分析するのだが、いざ脱獄に際してはそれらの情報は一切活用せず、乱闘の隙に逃げるという、これまた本宮ひろしのノリ…、ポカポカする。
また、看守たちに追われて脱獄している最中でも、監視カメラに向かってポーズを決めるという遊び心を忘れないオジサンたちの姿勢…、ポカポカする。
銃弾の嵐の中を一直線に走っても無傷で、最後の方でようやく思い出したかのようにかすり傷を負うシュワ、全長300メートルの巨大タンカーの船底から射出されながら、当然のように生還するスタローン…、ポカポカする。
バキバキに血管の浮き出たぶっとい指で細々とした工作に励むスタローン…、ポカポカする。
最後のシーンでシュワ=マンハイムという事実が明らかになり、「お前がマンハイムか!そう来るとは!!」と驚いてみせるスタローンだが、事ここに至りては、「逆にシュワ以外に誰がいるんだよ!」と猛烈にツッコミたくなる所…、ポカポカする。
そもそも、「マンハイム」という存在自体が、金持ちから金を奪うという大雑把な設定しかなく、銀行のシステムを破壊するプログラムを持っているとか言われてたけど、そのへんの細かいところを明らかにするつもりなど微塵も感じられず…、ポカポカする。
ていうかもう、シュワちゃんとスタローンが面突き合わせてあーだこーだと思案してる様を見るだけで、それだけでもうポカポカする!
唯一ポカポカを通り越してアツアツになったシーンと言えば、アラブ人が見事な漢死にを魅せるところだ。
どうしようもない安心感に包まれたシュワとスタローンの間で、まばゆい輝きを放った彼の勇姿は俺の心に深く刻まれた!
浄土真宗の俺もイスラム教に改宗しそうになったと言えば、どれほどしびれたか分かってもらえるだろうか?
彼の名はジャ…ジャベ…とにかくアラブ人だ!
というわけで、改めて見ても終始ポカポカし通しだった『大脱出』
このブログを読んでいる数少ない同志たちにもポカポカして欲しい…。
季節はまさに冬、寒い夜には是非、気心の知れた仲間たちと鍋でもつつきながら、『大脱出』を見るしかない!
さあ、早く!